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口約束の3年契約→30日で宣告された“クビ” 壮絶だった中南米生活、給与は「命に直結」

Full-Count / 2025年1月19日 7時10分

メキシコ時代の元DeNA・乙坂智氏【写真:本人提供】

■元DeNAの乙坂智は2022年はメキシコ、ベネズエラでプレーした

 2021年まで10年間、DeNAでプレーした乙坂智外野手は同年オフに戦力外通告を受けると、2022年にメキシカンリーグのディアブロス・ロホス・デル・メヒコ(メキシコシティ・レッドデビルズ)と契約した。しかし、約1か月で自由契約。直後に入団したチームでもトレードを経験するなど、激動のシーズンを送った。さらに「命の安全に直結する」などと現地での給与事情も明かした。

「ベイスターズを戦力外になって、必要としてもらうところにいこうと。最初に声をかけてくれたところです。それが社会人なのか、独立リーグなのか、海外なのか。とにかく1発目のところに行こうと思っていました。それがメキシコのチームでした」

 2017年オフにウインターリーグで参加したヤキス・デ・オブレゴンの監督がレッドデビルズの監督だった縁でオファーが届いた。「3年間はディアブロスのセンターをやってもらう」。期待されて入団し、オープン戦で打率3割程度をマークしていたが「外国人枠の関係で天秤にかけられて落とされた。入団1か月でクビです。『はや!』って。口約束の3年契約は、実際には30日でした。紙の契約書なんてないですから」と笑った。

 突然の“解雇”となった2日後、ブラボス・デ・レオンから練習生として声がかかった。やはり2017年にプレーしたオブレゴンのチームメートだったアレドンドがブラボスの監督となっており「すぐに来い。絶対に獲る」と熱く誘われた。

 すぐに選手契約に至り、試合にも出始めたが「成績不振でアレドンドが2週間くらいでクビになりました。結局、6月まで監督が3人代わりました」。指揮官交代に伴い、6月に乙坂は自身を含む3対1のトレードでサラペロス・デ・サルティージョに移籍した。

「ブラボスのファンはめちゃくちゃ熱くて、選手に近い。これから上を目指そうという若手も多くて、とてもいいチームでした。人生初のトレードはすごく寂しかったです」。ディアブロスで出場機会はなかったが、ブラボスとサルティージョでは「1番・中堅」として活躍。計78試合に出場し、打率.367、3本塁打、25打点、26盗塁、79得点の結果を残した。

■プレーオフ出場で「収入は100万円くらい違う」

 夏の活躍が認められ、その年のウインターリーグではベネズエラの「ブラボス・デ・マルガリータ」が獲得を発表。乙坂は50試合に出場しリーグトップの15盗塁、同4位タイの打率.333(192打数64安打)の成績を残した。

 メキシコとベネズエラでは「環境が全然違う」という。ベネズエラの方がメジャー経験の選手も多く「いろいろと整っています。球場も綺麗ですし、ホテルもちゃんとして警備もついている」と明かした。

 現地での報酬は2週間ごとに支払われるという。国内選手は月に6000~8000ドル(約95万~126万円)。ただし、レギュラーシーズンの4月~8月のみ。プレーオフ(PO)に出場して勝ち続ければプラス1か月受給期間が伸びる。ウインターリーグも同じシステムで10、11月~12月が通常のシーズンで、PO出場で1月までプレーできる。

「みんなプレーオフに行きたがります。出場したら収入は100万円くらい違うので。それでいい食事、いい家に住むことができる。治安のこともあり、安い家だと危険も増えます。収入は命に直結するんです。だから1試合1試合必死に戦っています。試合に対する思いは、日本との差は絶対にあると思います」

 NPBを離れた翌年に異国で戦力外、トレードを経験。さらには“命”をかけて戦う仲間の姿を目の当たりにした。大きな刺激を受けた1年となった。(湯浅大 / Dai Yuasa)

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