「ケツが痛くなって…」阪神ルーキーが断った1軍昇格 動かない体、直前に起きた“悪夢”
Full-Count / 2025年1月19日 6時50分
■元阪神・川尻哲郎氏…1年目のヤクルト戦で初登板白星
阪神などで活躍したサイドスロー右腕の川尻哲郎氏はプロ1年目の1995年4月28日のヤクルト戦(甲子園)で初登板、初勝利を飾った。オープン戦で2軍落ちしたが、そこから、きっちりフォームを修正した。もっとも、1軍デビューは本来ならもう少し早い予定だった。開幕早々に1軍から声がかかった時に、運悪く体調不良に陥るアクシデントで先送り。それも乗り越えて、いきなり好結果を出した。
社会人出の26歳ルーキーは1年目から勝負と、気合十分でキャンプに参加した。プロのレベルにもそれほど違和感なく入り込んでアピールに余念がなかったが、オープン戦の時期に今ひとつの状態となった。「やっぱりキャンプとかで疲れていたし、ちょっと思ったように流れていないというのはあった。ちょっとカーブが曲がり切れない。もっとグッといくはずなのに、ちょっと残っちゃったりしていたから、これは修正しないといけないなとは思っていた」。
オープン戦でオリックス・岡田彰布内野手にタイムリーを打たれて、2軍落ち。「まぁ、ちょっと打たれていたから、しょうがないと思った。フォームを見つめ直したりする時を逆にもらいたいなと思っていたので。それをやろうと思いました」。ただし、フォームに関しては周囲のアドバイスに、あえてあまり耳を傾けなかったという。
「何かいろいろ言われましたけど、自分が食っていく世界であって、自分から聞く分はいいけど、言われるのって違うんですよ。駄目だった時に誰のせいにもできないじゃないですか。駄目だったら自分のせいっていうのが、僕はプロのあるべき姿かなと思っていたから、あまり聞かないようにしていた。自分で、ある程度、作ってきたフォームですからね」。自分流を貫き、自身のフォームを取り戻した。そのまま2軍調整が続いたが「あの時期があったのはよかったんでしょうね」と話した。
2軍では4月2日の広島戦(由宇)で勝利投手になった。「ファームで初登板初勝利でした。リリーフで投げてね」。その後も好調をキープして1軍昇格の話も来た。だが、ここで思わぬ事態が待っていた。「ケツが痛くなったんですよ。歩くのもしんどくなって、階段も降りられなくなって、ホント、ひどくて病院に行ったら、痔ろうでした。それで『すみません、痛くて上がれません』って1回(昇格を)断ったんですよ」。
■「緊張」も古田敦也をK斬り…中継ぎで1回2/3を無安打無失点
チャンスだっただけに無念の思いだっただろう。だが、めげることなく、ここでもすぐに切り替えた。「上がりたいから医者に『何とかしてくれ』って言ったら、切って、悪いのを出して……。それでまたすぐチャンスが来たんだったかな。『もう治ったんで、上がれます』みたいな。で、ポンと(1軍に)上がった日に投げたんじゃなかったかなぁ。なんか悪いことが起こって、そこからまた始まるという。そんな感じでしたね」。
4月28日のヤクルト戦は、1-2の7回1死で先発・山崎一玄投手をリリーフ、2番手でマウンドに上がった。「(ヤクルトの)飯田(哲也外野手)がセカンドにいてね、やっぱり、あの時がプロ(生活)の中でも一番、緊張したかなぁ」。最初の相手はヤクルトの3番打者・古田敦也捕手だった。「三振ですよね。三振にとった球はスライダーじゃなかったかな。でも、ホント、緊張していて、あまり覚えていないですよ」。
そんな中、8回までの1回2/3を無失点に切り抜けた。1四球を与えただけで安打は許さなかった。8回に阪神打線が2点を取って逆転した。「グレン(・デービス内野手)がね、タイムリーヒットを打ったんですよ。それで(9回は)古溝(克之)さんが抑えたんです」。川尻氏は初登板、初勝利となった。
「めったに緊張しないのに、あの時は緊張しました。でも抑えられたんですよね。緊張しているということは基本的には、いろんなフォームとか崩れるはずなんですよ。力が入ったり、なんだかんだしてね。そうなるとボールって、必ず変なところに行くんですけど、それでもちゃんと投げられたってことは、それだけ練習してきたってことなんですよ。僕は基本的に投げるのは好きだったから、大学でも社会人でもキャンプでは3000球以上投げていましたしね」
そんな積み重ねてきたものが、大緊張のプロ初登板で好結果をもたらした。「中継ぎでの初登板初勝利は(阪神では)一昨年(4月1日のDeNA戦)に富田蓮がやりましたけど、それ、僕以来なんですよ。中継ぎでやったのはね。僕はファームでもリリーフで初登板初勝利ですから、よく考えてみたら、そういうのはあまりいないんじゃないですかねぇ。意外に僕って、持っているんですよね」と川尻氏は笑った。開幕2軍スタートも、体調不良のアクシデントも乗り越えて、つかんだ記念の白星。思い出深いプロ1勝目だった。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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