陥った負の流れ「どんどん打たれていく」 膨れ上がる借金も…オフに告げられた“昇格”
Full-Count / 2025年1月22日 6時50分
■元阪神・川尻哲郎氏は亜大の同期、燕・高津との投げ合い制し完封勝利
元阪神サイドスロー右腕の川尻哲郎氏にとって、プロ3年目の1997年は苦しいシーズンだった。1年目に8勝、2年目に13勝と白星を積み重ねたのが一転して、5勝14敗と散々な数字に終わった。「投げても投げても、なかなか勝てなかった年でしたね」。そんな中、思い出の1勝をマークしたのもこの年だ。亜大時代の同期、ヤクルト・高津臣吾投手(現ヤクルト監督)との先発対決に投げ勝った。
1985年に阪神を日本一に導いた名将・吉田義男氏が3度目の監督に就任した1997年、川尻氏は開幕投手を務めた。「湯舟(敏郎)さんが開幕だったんですけど、雨で流れたんですよ。それで(スライドせずに)僕が開幕になっただけなんですけどね」。4月5日の広島戦(広島)、結果は6回2/3を3失点で敗戦投手になった。試合は1-3だった。そこから3試合連続で黒星。それが悪い流れの始まりだった。
シーズン初白星は4月30日の巨人戦(東京ドーム)、6回1/3を2失点でトンネルを脱出した。思い出の勝ち星は、その次の2勝目だ。5月18日のヤクルト戦(甲子園)で8安打完封勝利。初回に3番・新庄剛志外野手が4号ソロを放ち、その1点を守り切っての1-0だった。いつも以上に気合も入っていた。相手先発が亜大同級生の右腕・高津だったからだ。「高津は別に僕のことを何とも思っていないだろうけど、こっちとしては絶対に負けられない気持ちだった」。
亜大では1年時こそ川尻氏がリードしていたが、2年以降は小池秀郎投手(元近鉄、中日、楽天)と高津に抜かれた。大学4年時の1990年は小池、高津に次ぐ3番手投手。高津がドラフト3位でヤクルトに入団した中、川尻氏はプロから声がかかることなく、社会人野球の日産自動車入り。くしくも、そこで高津と同じサイドスローに投球フォームを変えて、プロ入りの道をつかんだ。「大学の時はサイドで投げるなんて思ってもいないことでしたからね」。
■3年目は5勝14敗2セーブ、防御率3.92…背番号「41」から「19」に
大学同期のサイドスロー対決。高津は6回1失点で降板して敗戦投手、川尻氏は完封勝利で投げ合いを制した。意地の投球でもあっただろう。「マスコミも含めて、いろいろ言われていましたからね。その試合はよく覚えていますよ」と笑顔で振り返った。しかし、この年はそれで勢いに乗ることはできなかった。その後は2軍落ちも経験。7月に復帰後はリリーフで6連投もあった。先発に戻ってからも思うようには勝てなかった。
32登板、5勝14敗2セーブ、防御率3.92で3年目は終わった。「打たれた試合もあったけど、まぁまぁ抑えた試合もあったと思うんですよ。7回3失点とかね。それがことごとく勝てなかったというかねぇ……。あの年の僕は借金9してますよね。それが逆だったら、僕の通算成績(60勝72敗)も勝ち越していますよね。やっぱり勝てないとすごいプレッシャーもかかる。今日も勝てないんじゃないかって悲壮的な感じで入っちゃうこともあるからね」。
とにかく、流れが悪すぎた。川尻氏は「去年(2024年)、阪神の村上(頌樹)君が(7勝11敗で)勝てなかったけど、野球ってそういうのがあるんですよ。いいピッチングをしていても流れが悪くて点が取れない。そうなるとストライクを欲しくなって、投球の幅が狭くなっていって、どんどん打たれていくというようなね。そういうのは流れがあるから。やっぱり勝ち星を気にしたらねぇ……」とも口にした。
そんな1997年オフに川尻氏の背番号は「41」から「19」に変更となった。「契約更改の時に『川尻、背番号だけど、(数字が)若いのに変えるか。これとこれとかが空いているよ』って言われたんです。で、19が空いていたんです。(おいちょかぶの特殊役である)“シッピン”のあとが“クッピン”なわけですよ。これいけるなと思って『じゃあ19で』って話になった。19番は僕の前が中西(清起)さん、その前が小林繁さん。阪神のエース番号ですから、うれしかったですね」。
5勝14敗のオフに背番号が“昇格”。「来年、頑張ってくれという期待だと思いました。まぁ、給料が落ちる年でしたから、もしかしたら気分よくハンコを押してもらうために背番号を若くした可能性もあったのかな」というが、背番号19になって、川尻氏はまた盛り返す。プロ4年目の1998年はノーヒットノーランを達成するなど、大活躍のシーズンとなる(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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