野球センス養成には「鬼ごっこ」が最適? 遊びの王様も…現代っ子に見られる“変化”
Full-Count / 2025年1月22日 7時5分
■「野球センスがある子」に育てる方法とは…専門家推奨、低学年にもお勧めの練習法
「あの子はセンスがある」。グラウンドの片隅でよく聞かれるこの言葉は、少年野球に携わる親たちの心に強く響く。では、子どもの野球の“センス”を伸ばすためには、具体的にどのような方法があるのか。スポーツ科学・発達科学を専門とし、小学生からプロ野球選手まで幅広い年代をサポートする東京農業大学教授の勝亦陽一先生に、“トレーニング方法”や保護者・指導者に必要な心構えを聞いた。
野球における“センス”とは「目や耳などの五感で知覚・認知した情報を脳で処理し、状況や目的に応じて適切な行動を選択・実行できる能力」と勝亦先生は定義する。そして何より重要なのは、身長などの遺伝子情報に大きく影響されるものと違い、センスは「誰でも伸ばすことができる」という点だ。
「子どもたちがセンスを伸ばすには、主体的に考え、行動することが重要です」と勝亦先生。その格好の“トレーニング”として推奨するのが「鬼ごっこ」だ。相手の動きを読む力、状況判断能力、瞬発力、俊敏性、さらには切り返しや曲線走といった動きまで、すべてが自然と身に付いていくという。昔ながらの“遊び”に、野球に必要な要素が凝縮されているというわけだ。
「小学校低学年の選手に『塁間を全力で走る練習』をさせるよりも、鬼ごっこの方がセンスを伸ばすことに加えて体力向上にも効果的です。子どもたちは楽しみながら、体も頭も使って、自発的にたくさん動くことができますから」
ただし、最近の子の様子を見て、ある変化を感じている。かつては全員が夢中で走り回っていたが、今では鬼と数人の子どもしか動いていない様子をよく目にするそうだ。「遊びの王様だった鬼ごっこすら、消えていくのではないかと心配になります」と、子どもたちの体を動かす機会の減少を危惧している。勝亦先生は低学年の子も皆で体を動かし楽しめるよう、ボールを使うなどの野球要素を加えた鬼ごっこのやり方も、いくつか提唱している。
野球特有の小さなボールを扱う技術の向上には、ボールハンドリングが効果的だという。他競技の練習を参考に考案したボールハンドリングのトレーニングは、球を自在に操る身体操作力を養い、軌道予測能力も向上させる。楽しみながらどこでも練習できる点も、今の時代に合っている。
ボールハンドリングに取り組む様子【写真:編集部】
■スカウトの目が追う「センス」とは…将来のためにも「トライアンドエラーを重ねて」
少年野球をしている子どもたちの中には、将来的に強豪校からのスカウトを夢見る選手も少なくない。「自分もいつかはプロに」と憧れ、保護者も「もしかしたら、うちの子も……」と期待を膨らませることもあるかもしれない。
「私自身はスカウトではありませんが」と前置きしつつ、勝亦先生は評価ポイントをこう推測する。
「投手であれば、身長や球速、空振りを取れる特徴ある球質、そして試合を作れる能力が重要です。打者の場合は、バットスイングの速さによる長打力、タイミングやバットコントロールなどのミート力、状況判断を含めた走力と送球能力といった要素が評価対象になるでしょう」
確かに身長や瞬発力といった生まれ持った要素は重視される。しかし、それ以上に重要なのが、安定したパフォーマンスを発揮できる力と、試合状況を的確に判断できる能力だ。野球は複雑なルールと多様な選択肢を持つスポーツだけに、状況判断力に長けた選手に「伸びしろ」を感じるのではないかと勝亦先生はいう。
そのためにも、小学生の子どもや親たちには、目先の結果や優劣にとらわれすぎず、将来を見据えて、今の時期にやるべきことを大事にしてほしいと強調する。
「この時期に大切なのは、トライアンドエラーを重ねること。小さな成功と失敗を繰り返しながら、自分で考える力やセンスを養っていくことです。強豪校やプロ野球選手を目指すこと、野球を楽しむ・探求することなど、目的はそれぞれ違うと思いますが、その過程で身に付けた主体的に考えて行動する力、深い考察力、瞬時の判断力こそが、子どもたちの人生における本当の財産になるのです」
そのために保護者にできることは、「考えるための材料を提供する」こと。低学年の子にいきなり「自分で考えよう」と言っても難しい。そこで、様々な選択肢や情報を示し、「どうしたらいいと思う?」などと問いかけることで、子どもは自然と考え始めるという。
大人が答えを押し付けない。子ども自身の判断を待ち、試行錯誤を見守る姿勢が大切だ。その過程で、センスだけでなく、人間としての成長も促される。野球は、技術向上だけでなく、考える力、判断する力、そして主体的に行動する力を養える素晴らしいスポーツ。目の前の結果にとらわれすぎず、子どもの可能性を信じて見守ることが、親として最も大切な役割なのかもしれない。(大橋礼 / Rei Ohashi)
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