開幕前に突然の”引退勧告”「諦めてくれ」 OP戦3割も…元首位打者が抱いた怒り
Full-Count / 2025年1月26日 7時10分
■西村徳文氏は1997年限りで16年間の現役生活に別れを告げた
ロッテ一筋16年間プレーした西村徳文氏は、1997年限りで現役を引退した。首位打者や4年連続盗塁王など数々の栄冠を手にした男の最後は、開幕前に近藤昭仁監督から受けた“引退勧告”という思いも寄らない幕切れだった。
37歳となった迎えたプロ16年目。「最後になるんじゃないかな」という覚悟は持ちつつ、オフの自主トレにはいつも以上に励んだ。オープン戦でも打率3割をマーク。レギュラーとはいかなくても、ある程度1軍で結果を出せる自信はあった。しかしオープン戦最終戦を終え、ロッカーに貼り出された開幕1軍入りメンバーに自分の名前はなかった。
「ショックでしたね。納得がいかない。監督のところに行こうかと思っていたところにマネジャーが『近藤監督から話があります』と呼びに来たんです。行ったら『若手を使いたいから出番も少なくなる。ファームに行って指導者の勉強をしてくれないか? 球団とも話はついているので、この1年間は選手契約のままコーチになってほしい』と言われました」
西村氏はその時点で1軍出場1432試合。目標の1500試合まであと68試合に迫っていた。思いを伝えたが「60試合は厳しい。諦めてくれ」と厳しい現実を突きつけられた。突然、プロ野球選手としての“終わり”を通告されたのである。
■2軍での若手指導に最初は戸惑い「負けないという気持ちがありました」
その場ではどうすることもできず「考えさせてください」と一度持ち帰った。家族にも相談しながら熟考するうちに「自分はロッテでしかプレーしていない。その球団から指導者の話をもらうことはありがたいという考えになったんです。違うチームを選択するより感謝の思いのほうが強かったので」と受け入れる決断をした。
とはいえ2軍で若手選手を指導することに最初は「納得いかない、まだ負けないという気持ちがありました。悲しみと怒り、両方ですね」というのが本音だ。しかし夏にコーチ留学で渡米することになり、出発前に近藤監督から「来年は1軍内野守備走塁コーチをやってもらう」と告げられた。怒りは次第になくなり、それよりも指導者として必死の日々を過ごしていった。
「未練はありました。ただ今までやったこられた人も、そういう思いをしながらも選手としてユニホームを脱がないといけなかった人が多い。次の話をもらって切り替えていけて、いい感じでコーチ業に入っていけたと思います」。通算1298安打&363盗塁をマークした西村氏はこうして選手生活を終えて、指導者としての第二の野球人生を歩み始めた。(町田利衣 / Rie Machida)
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