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データと“相反する”新庄ハム 2位躍進の裏で…気になるパ最低の「0.33」

Full-Count / 2025年1月29日 19時21分

日本ハム・新庄剛志監督【写真:小林靖】

■得点数、本塁打数、長打率、OPSの4項目がチーム成績と全く同じ順位に

 2024年シーズンのパ・リーグにおけるチーム別の打撃成績を見ていくと、非常に興味深い傾向が示されていることがわかる。今回は、各球団が記録した打撃成績ならびに各種の指標を確認し、そこから見えてくる「チーム順位に直結する要素」について見ていきたい。

 得点数、本塁打数、長打率、OPSの4項目はいずれも、チーム成績と全く同じ並びとなっている。また、安打数と打率の2項目も、2位がロッテ、3位が日本ハムとなった部分以外はチーム成績と同様の順位に収まっており、先述した4項目に近い傾向を示した。

 また、出塁率はソフトバンクがリーグ1位、ロッテが同2位とAクラス球団が上位となった一方で、同じくAクラスに入った日本ハムはリーグ4位の数字に。ただし、ソフトバンクが114本塁打、日本ハムは111本塁打と上位2チームの本塁打数は拮抗しているのに対し、3位のロッテは75本塁打と大きく水をあけられていた。

 すなわち、積極的な打撃スタイルで多くの長打を生み出した日本ハムと、長打力で上位2球団に劣る部分を出塁率で補ったロッテという構図が浮かび上がる。上位に食い込んだ2球団がそれぞれ異なるアプローチを取っていた点も、興味深い要素だ。


2024年シーズン・チーム打撃成績【画像提供:PLM】

■指標の分野においても、長打力を備えるチームの優位性が際立つ

 ここからは、セイバーメトリクスの分野で用いられる専門的な指標をもとに、パ・リーグ各球団が2024年に残した打撃成績について、より深く掘り下げていきたい。

「ISO」という指標は長打率から単打の影響を省いた、いわば“真の長打率”を示すとされる数値だ。そして、2024年のパ・リーグにおけるISOのリーグ内順位は、得点数、本塁打数、長打率、OPSといった数字と同じく、各チームのシーズン順位と全く同じ並びとなっている。

 また、ホームランを1本記録するために必要な打数を示す「AB/HR」に関しても、4位がオリックス、5位が楽天となった箇所以外はリーグ順位と同じ結果が残った。優れた長打力を備えるチームが持つ優位性の大きさは、指標の面でも示されていたといえよう。

次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す、「BABIP」という数値について見ていきたい。BABIPもOPSやISO等と同様に、2024年のパ・リーグにおけるリーグ内順位が各球団のシーズン成績と完全に一致する指標の一つとなっている。

 BABIPは一般的に.300が基準値とされているが、内野安打の多い俊足の選手や、打球速度に優れた選手はキャリア平均で.300を上回る値を記録しやすい傾向にある。そのため、選手一人ひとりに応じてBABIPの基準値は異なる、という見方もできる格好となっている。

 ソフトバンクは2024年にパ・リーグで唯一、チーム全体のBABIPが.300を超えていた。個人成績を見ても、近藤健介外野手のBABIPは規定打席到達者のなかでリーグ2位となる.345、周東佑京外野手は同3位の.333と、2人の主力選手が非常に高い数字を記録していた。

 BABIPが優れている、すなわちインプレーになった打球が安打になった割合が高い選手を多く抱えているチームが、シーズン順位でも上位に入ったことは当然の帰結と言える。投高打低の影響が強まったことによって、安打や長打に直結する数字の重要性がより高まりつつあるようだ。


2024年シーズン・チーム打撃成績【画像提供:PLM】

■選球眼に関する指標も、順位との相関性は見受けられたが……

 ただし、打率と出塁率の差を示す「IsoD」に関しては、ソフトバンクがリーグで1位、ロッテが同2位となった一方で、日本ハムがリーグ最下位となった。シーズン6位の西武がIsoDではリーグ3位となった点も含めて、リーグ順位との相関性はやや弱くなっている。

 さらに、四球を三振で割って求める、打者の選球眼を測る指標の一つである「BB/K」においても興味深い結果が示された。ロッテがリーグ1位、ソフトバンクが2位とAクラスの2球団が優れた数字を残し、楽天が3位、オリックスが4位、西武が5位とBクラス球団はリーグ順位と同じ並びになったが、日本ハムが0.33でリーグ6位となっている。

 ソフトバンクとロッテは選球眼に関する指標が優秀で、上位争いを繰り広げた楽天もそれに次ぐ数字を残した。その一方で、リーグ2位の日本ハムが選球眼に関する指標で最下位となった点を鑑みると、選球眼に関する指標が高ければ有利であることは間違いないものの、長打に関する指標と比べると順位との相関性はやや低いと考えられる。

 投高打低の傾向が強まっている現在のNPBでは、優秀な打撃成績を収めることがこれまで以上に難しくなりつつある。そういった環境だからこそ、打撃指標と各チームのシーズン順位の相関性が格段に高まっていることを示す2024年の結果は、逆境のなかでも長打を記録できるチームの優位性の大きさを端的に示すものでもあるだろう。

 2025年のシーズンでも同様の傾向が示され、主要な打撃指標が優秀なチームがそのまま上位に入るのか。それとも、日々変化を続けるプロ野球の舞台においては、また新たな傾向が示されることになるのか。来たる新シーズンにおいては、各種の指標に示される各チームの特徴や戦いぶりといった要素も、大いに注目する価値のあるものになりそうだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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