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同僚との不仲、襲撃計画…イチロー氏が味わった孤独 “わだかまりが溶けた”肩車

Full-Count / 2025年1月28日 19時10分

マリナーズ時代のイチロー氏【写真:Getty Images】

■2008年9月にイチロー氏への襲撃計画が報じられた

 米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏は、かつて“孤独”だった時がある。2008年9月、地元紙「シアトル・タイムズ」のジェフ・ベイカー記者が「一部の選手がイチローを実際に殴ろうなどと計画」という衝撃の内容を報じた。実際には決行されなかったようだが、チーム内でイチロー氏が孤立していた時期があった。しかし、その事件には続きがあったようだ。

 米スポーツ局「ESPN」のオールデン・ゴンザレス記者とジェシー・ロジャース記者は21日(日本時間22日)に「イチローが殿堂入りする理由」と題し、チームメートや対戦相手による証言を取り上げた記事を公開。2009年からマリナーズに加入したマイク・スウィーニー氏は、孤独だったイチローがチームに溶け込んだその時を、今でも鮮明に覚えているようだ。

 マリナーズ1年目の春季キャンプで、スウィーニー氏のロッカールームは隣がケン・グリフィーJr.氏、その隣が同い年のイチロー氏だった。同氏は「イチローがチームメートから疎外されているという話は耳にしていた。チームメートの中には彼に嫉妬する人もいたし、彼をチームの一員として、うまく受け入れていない人もいた。僕はショックを受けたよ。『この男は史上最高の打者だぞ。どうしてこんな素晴らしい選手を喜んで受け入れられないんだ?』って思ったんだ」。なぜイチロー氏が孤立していたのか、理解できなかったようだ。

 マリナーズはイチロー氏がメジャーデビューした2001年に地区優勝、プレーオフに進出したが、以降は秋の舞台に進出できず。イチロー氏が262安打のメジャー記録を作った2004年は63勝99敗と悲惨なシーズンだった。チームが影を落とす中、孤軍奮闘していたのはイチロー氏だった。しかし一方で「個人記録のためにプレーしている」と、同僚からはやっかみが寄せられていたという。

■開幕戦でベンチに飾られたイチロー氏のユニホーム

 スウィーニー氏はスプリングトレーニング中、チームを一つにまとめようと腐心。食事会を開くなど「色々やった」と語り、チームの調和を図ろうとした。その後、イチロー氏が第2回WBCに出場するために離脱。見事に優勝してチームに合流したものの、まさかの胃潰瘍が発覚した。イチロー氏はメジャー19年間で唯一となる故障者リスト入りするほどの事態だった。しかも、医師から最悪の事態になれば命の危険に及ぶと警告されたという。それでもイチロー氏は、開幕戦出場へ断固たる決意を見せていたとしている。

 そんなイチロー氏の“覚悟”を知った同氏は、グリフィーJr.氏ら主力とともにナインを集め、「みんな聞いてくれ。過去に、脇に追いやってきたチームメートが、君たちのためにどれだけのことをやろうとしていたかを見てほしい。彼は今夜の試合に出るために、自分の命をかけようとしていた」と訴えた。そして「今はイチローを称える時だ。今こそ彼を歓迎し、チームに心から迎え入れるべき時だ」と続けた。

 迎えた開幕戦、ベンチにはイチロー氏のユニホームが飾られていた。病院のベッドで試合を見届けるしかなかったイチロー氏について「何かが違うと気づいた」と話したという。「ルーキーイヤー以来初めて、自分を愛してくれるチームメートがいると彼は感じたんだ」とスウィーニー氏は語った。

 2009年のマリナーズはプレーオフにわずかに届かなかった。それでも晴れやかだった。シーズン最終戦の試合後、グリフィーJr.氏とイチロー氏をナインが肩車してグラウンドを一周。イチロー氏との不和が報じられていたカルロス・シルバ氏が自ら担ぎだした。「イチローは、それがルーキーイヤー以来、メジャーリーグで最も楽しい瞬間だったと私に話してくれた。チームメートが彼を愛し、祝ってくれたことで、ルーキーイヤー以来初めて野球への喜びを再び感じることができた、と」。問題を乗り越え、チームが“ワンチーム”になった瞬間だった。(Full-Count編集部)

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