戦力外→テロ遭遇の緊急事態「映画の撮影かと」 残された選択肢、米国での壮絶体験
Full-Count / 2025年1月31日 7時25分
■マイナー契約を勝ち取るのは厳しい状況…選択肢は独立リーグだけだった
2000年オフに近鉄から戦力外通告を受けた品田操士氏は2001年春、米国でカブスのキャンプに参加することになった。同キャンプには、かつてのチームメートだった佐野慈紀氏や谷口功一氏も参加していた。しかし、マイナーで発給できるビザの枚数は限られており、チームを離れざるを得なかった。
その後、タイガースのキャンプにも参加することが可能だったが、マイナー契約は難しいということで辞退。マイナーリーグでプレーできないとなると、米国内で野球をするには独立リーグしかない。当時はまだ日本国内の独立リーグ誕生前。自ずと選択肢は限られていた。品田氏は佐野氏とともに、米独立・ノーザンリーグのエルマイラ・パイオニアーズと契約することが決まった。
現地での選手生活は意外にも楽しめたという。「野球も生活も楽しかったよ。やっぱり、成績がついてきたから楽しめたんだろうね」。3か月のシーズンで2桁勝利。当時監督を務めていたジョン・デーバス氏はのちにオリックスで打撃コーチを務めた。「その後日本に来て驚いた。日本での評判は今一つだったかもしれないけど、エルマイラでは良い監督、熱い監督だったよ。リーグ戦は優勝したしね」。
品田氏は近鉄でプロ2年目のシーズン、同リーグでカナダに位置するサンダーベイというチームに派遣されたことがある。その経験から、リーグのレベルや北米での生活は理解していたが、「立場が全然違うよね。近鉄に在籍したまま留学みたいな形で行くのとは、全く違う。ハングリー精神というかね」と振り返る。「エルマイラでは、成績を残さなければクビになって当たり前だし、チーム内での信頼関係も生まれない」。リーグ戦の開幕前と最終戦では顔ぶれも大きく変わっていた。
米国の野球環境に馴染めない日本人選手も少なくないが、品田氏自身は苦にしなかった。ロジンにはなれなかったものの、中4日、異なるボールや、マウンドの硬さも問題なかった。米独立リーグでも細事にこだわらない性格で好成績を残した。ただ、同年、ニューヨーク州では、世界を揺るがす大事件が発生。9.11の同時多発テロだった。その日、品田氏はプレーオフの試合でニューヨーク州のそばにあるニュージャージー州に向かう最中だった。
■プレーオフ中で自宅待機…9月末の帰国では空港の荷物チェックで「何時間も待たされた」
乗っていたチームバスが突然停まった。「どうしたんだろうと思っていた」。普段は映画が流れている、車内モニターがテレビに切り替わり、映像が流れた。「衝撃的だったなぁ。最初は本気で、映画の撮影か何かだと思っていたんだよね。さすがアメリカ、やっぱりスケールが違うなぁと。プレーオフに出ていなかったらあそこにはいなかったね。敗退してすぐ帰国していたはずだから」。
ただでさえ言葉もよくわからない環境で遭遇した大事件。ニュージャージーには行けずに引き返し、自宅待機となった。部屋に戻ると、テレビ番組はテロのニュース一色だった。「地上波は4つくらいしかチャンネルがなかったけど、全局すべてがテロのニュース。現場はマンハッタンで、エルマイラから車で5時間くらいかかる距離だから、何も見えないし直接的な影響はなかったけど、この後どうなるのかわからないまま」。翌日から練習は再開した。
3日間、全米のすべての旅客機はストップした。その後、MLBなどのプロスポーツと歩調を合わせて再開したリーグでは、プレーオフ第2ラウンドで敗退。帰国の際には「テロ直後だから空港の荷物チェックがめちゃくちゃ厳しくて。今みたいなスキャン装置がなかったから、すべて人力でチェックするんだよね。それで何時間も待たされた」。当時は9月末、事件から3週間ほどしか経っていなかった。
エルマイラは当時、人口3万人ほどの歴史ある小さな町だった。米国内で唯一怖かったのがこの町だった。住んでいた家は古く「築100年くらい経っていたんじゃないかな」。2階建の一軒家の2階部分に住んでいたが、階段の途中に置き時計があった。「まるでお化け屋敷のような」と苦笑いする。
慣れない異国の地でテロも経験し、お化け屋敷のような家に住みながら、野球ではしっかりと結果を出した。当時はハングリー精神もあり無我夢中だったが、改めて振り返ると「よくやったよな、あんなところで。でもあれがあったから、翌年イタリアにも行けたんだよな」。次に選んだ活躍の場はイタリアだった。(伊村弘真 / Hiromasa Imura)
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