二極化する中学部活改革「非常に難しい」 家庭負担に“空洞化”…過疎地に現れる課題
Full-Count / 2025年2月2日 7時50分
■公立中学部活の地域移行の現状は? モデルケースある埼玉も「できないところもある」
2023年度から国が推し進めている、公立中学校の部活動を地域のクラブチームなどに委ねる「地域移行」については、各地から様々な声が聞こえてくる。今年4月からは、3年間の「改革推進期間」の最終年に突入。各県、各市町村によって推進の度合いに違いが見られる中、モデルケースとなり得るクラブチームがある県ですら、多くの課題を感じている。埼玉県中体連野球専門部の委員長を務める中田大輔氏に、同県の中学軟式野球の現状について話を聞いた。
埼玉県川口市。東京都と隣接するベッドタウンには約60万人が住み、多くの働き場が点在し、県内でも商業や流通などが活発な地域の1つである。その都市部にある「川口クラブ」は、元々同市内の中学軟式の選抜チームとして活動していたが、地域移行推進に伴い「野球がやりたい」地域の中学生の“受け皿”となった。指導者は現役の教員たち。選手も任意での参加で、「教えたい人」「野球をやりたい人」が自由に集う。地域の企業などからの協力も取りつけ、いわゆるスポンサーを募って運営の財源を確保しチームを運営している。
川口クラブは地域移行の“理想型”の1つとして、注目を浴びている。しかし、同市立鳩ケ谷中野球部の顧問も務める中田氏は、県内全てで共通するものではないと語る。
「川口クラブは、県のモデルケースにもなっています。ただ、どの地域でも、そういったチームを作れるわけではありません。県内でも『できるところ』と『できないところ』など相違があるのが実情です」
働き方改革や少子化が進む中、教員の負担軽減も目的に推進されている地域移行だが、置かれた環境はそれぞれだ。「都市部とそれ以外を一緒にはできないですし、全国で統一するのは非常に難しい問題だと思います」と中田氏は言う。
クラブチームを立ち上げるには、「人材」や「財源」、そして「場所」の確保が必要である。全国を見ても、地元の有志が指導役となり、限られた財源と工夫をこらした練習環境でチームを創設している地域もあるが、運営継続には多くの障害があるのが実情だ。
たとえば、運営資金にしても「確保」が困難な地域はある。人口減少にともなう町の空洞化。特に、過疎化が進むエリアではスポンサーとなってくれる地元企業や団体が少ない。地元の商店街の賛同を得たとしても限界はあるし、スポンサーが得られないからと言って、すべての資金を選手たちの家庭に委ねることも難しい。都市部と過疎化が進む地域では、どうしても環境面で“大きな差”が生じるのは当然だろう。
埼玉県中体連野球専門部委員長の中田大輔氏【写真:佐々木亨】
■“人作り”でもある中学部活の役目…「野球未経験だった子が成就感を味わえる」
すでに埼玉県では、中学校の「土日の部活動」を近々に廃止する方針を打ち出している市があるという。中学部活動、そして地域移行の将来について深く考える中田氏は、正解が見えない“現場”に視線を送りながら「子どもたちの『やりたい気持ち』と『場所』だけは奪いたくない」と語る。
中田氏が顧問の鳩ケ谷中は、1、2年生を合わせて部員11人。県全体でも小・中学校の軟式野球の競技人口は減少の一途を辿るが、同中学校でも部員減少は1つの課題となっている。時間制限がある平日は30分ほどしか練習ができないこともある。それでも、羽入田啓史(はにゅうだ・ひろし)監督の熱のこもった指導の下、日々の反復練習を通して技術を磨き、昨秋の県大会ではベスト8となった。中田氏は言う。
「県内にある多くの他校も、部員は15人前後。鳩ケ谷中も少ないですし、中学から野球を始めた部員も4人。でも、ひたすら外野フライの練習をしながら、野球を覚えていくんですよね。昨年の秋は、子どもたちが本当に喜んで……」
さらに「これまで学校生活における部活動の位置づけは大きかった。『人作り』の場でもあります」と語り、言葉をつなぐ。
「野球をやったことがない子どもが『できた』ことで達成感や成就感を味わう。そういうものも部活動の原点なんでしょうね」
中学校の部活動としての役目は消えてしまうのか――。教員の働き方改革、地域移行が進む一方で、山積する課題への取り組みは、これからも続いていく。(佐々木亨 / Toru Sasaki)
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