父が勝手に“プロ行き拒否”「息子は進学します」 引退視野も、突然決まった中大行き
Full-Count / 2025年2月3日 6時50分
■熊野輝光氏が選抜大会で度肝抜かれた右腕「すごい投手がおるんやなって」
知らないうちに大学進学希望になっていた。現役では新人王に輝き、スカウトとして多くの選手を発掘した熊野輝光氏(四国IL・香川オリーブガイナーズ監督)は1975年の志度商3年に選抜大会出場を果たしたが、1回戦で敗退。夏は北四国大会準決勝で敗れた。プロ注目の左のスラッガーだったが、野球から離れて就職するつもりだった。それが一転して中大へ。「周りから固められた」という。
1974年秋の四国大会準優勝で評価され、志度商は1975年に34年ぶり2度目の選抜出場を果たした。目標の甲子園出場に強打の遊撃手・熊野氏も気合が入ったが、本番ではいつものプレーができなかった。1回戦で広島工に1-8で完敗。相手エース・小林誠二投手(元広島、西武)に5安打1点に封じ込まれた。「初めて見ましたね。シュートでプッと浮き上がってくるのを。すごいピッチャーがおるんやなって思いました」。
甲子園の独特なムードにも圧倒された。「緊張して何かボールが手に付かなかった感じでした。上の空でやっていたみたいな。ショートゴロをファーストへ大暴投してしまったし……。打席も何かようわからないうちに終わっていましたね」。志度商・鎌倉孝一監督からは「土なんか持って帰るな! 夏に来ればいいんだ!」と言われた。「帰ってからはスパイクについた土を取ったりしましたけどね。まあ香川県では夏も絶対勝てるっていう自信はありましたけどね」。
3年夏。香川大会はきっちり突破した。だが、北四国大会準決勝で1学年下の続木敏之捕手(元阪神)がいた新居浜商に3-4で惜敗した。志度商は初回に3点先制したが、6回に2点、7回に1点を失って追いつかれ、9回に勝ち越されての負けだった。熊野氏は無念そうに「僕が打ったヤツはホームランだったのにツーベースになったんですよ」と振り返った。
「高松球場の(外野フェンスに)ラインが引いてあってそれより上だったらホームランで、僕のは越えていたんですけど、当たりがよすぎて跳ね返ってきて……。2打席目だったかなぁ。あれがホームランなら点数が違っていたんでねぇ」。もっとも、その瞬間は打った熊野氏も「打球が速すぎてどこに行ったかわからなかった」という。「あとで映像などを見てわかった。もちろん、もうどうすることもできなかったですけどね」。
■進路に悩むも…担当教諭から「大学に行くことになっているよ」
甲子園春夏連続出場の夢が断たれ、高校でのラストゲームを終えた熊野氏は「野球はもういいなって思っていた。社会人野球とかじゃなくて普通に就職しようと考えていた」と話す。俊足強肩強打の内野手としてプロからも注目される存在だったが、そう決めていた。だが、知らないうちに状況が変化していたという。「進路指導の先生に『就職したいんですけど、どうしたらいいですか』と聞いたら『君は大学に行くことになっているよ』って言われたんですよ」。
父・良治さんと志度商・鎌倉監督が大学進学のレールを敷き、学校側に伝えていた。「プロのスカウトもロッテとか何人か来られていたけど、僕は一切会わせてもらえなかったし、その時点でもオヤジは『息子は進学しますから』と言っていたみたい。周りを固められていた。僕はプロに行く気は全くなかったけど大学にも行きたくなかった。勉強もしたくなかったしね。それでオヤジとはよう喧嘩しました。最後はしょうがないかのかなぁってはなりましたけどね」。
プロ同様に大学からの誘いも多かった。「駒沢大(監督)の太田(誠)さんや亜細亜大(監督)の矢野(祐弘)さんはわざわざ家まで来てくれました。オヤジは太田さんにすごい熱心に言われたみたいです。矢野さんはグラブを持ってきてくれた。『好きなものを持ってきた』と言われたので、何やろなあと思ったらグラブ。それはあまり好きじゃないんだけどなぁなんて思いましたけどね」。そんななか、進路として決めたのは中大だった。
恩師である志度商・鎌倉監督が中大OBということが大きかった。「鎌倉さんに(中大監督の)宮井(勝成)さんが“セレクションによこせ、練習に来させい”みたいに言って、連れていってもらって(中大の)練習に出て、柵越えをガーンと打ったら『オー!』とか言われて、何かそれで決まりました。駒沢や亜細亜とかはオヤジが断ってくれた。のちのちですけど、オヤジは野球だけなら太田さんのところにやったんだけどなぁなんて言っていましたけどね」。
中大進学後も太田監督にはよく声をかけられたという。「駒沢と試合した時もそうだし、僕が社会人やプロに入ってからも『オヤジ元気かぁ』とか言ってくれました」。決めるまでにはいろいろあったが、結果的には中大を選択したことが、熊野氏の“その後”にもつながった。大学への道がなければ野球人生もそこで終わっていた可能性も十分にあっただけに「オヤジと鎌倉さんが道筋をつけてくれた。そういう意味では感謝しています」と話した。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)
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