西武・外崎の複雑な胸中 「できればやりたくない」…勃発した“後輩”との定位置争い

キャンプで守備練習を行う外崎修汰（左）と佐藤龍世【写真：宮脇広久】

■西武・外崎の三塁コンバートで…大学の後輩・佐藤龍と定位置争い

　西武・外崎修汰内野手は今年、守備の負担を軽減するためゴールデングラブ賞2度の実績を誇る二塁から、三塁にコンバートされる。これにより、昨年三塁手としてチーム最多の59試合に先発出場した佐藤龍世内野手との定位置争いが勃発。同じ富士大出身の後輩とあって、胸の内は非常に複雑だ。

　外崎は宮崎・南郷キャンプ6日目の7日、右太もも裏に違和感を訴え、別メニュー調整となった。前日6日に佐藤龍と組み、サブグラウンドで特守に取り組んだばかりだった。「痛みとかはないですし、打撃は全く気にならないですが、ダッシュなどに少し怖さがある。大事にならないために、というところです」と軽症を強調。室内練習場でマシン打撃、ティー打撃、ウエートトレーニングなどはこなした。

　このキャンプに新しい三塁手用のグラブを5種類持ち込み試行錯誤するなど、コンバートには前向きに取り組んでいる。「もちろん簡単ではないですが、（二塁に比べると）長い距離を走ることはない。速い打球が来るので、反応が大事かな」と感じている。

　昨年は打撃が振るわず、パ・リーグで規定打席に達した23選手中ワーストの打率.227に終わった。守備の負担軽減を理由にコンバートされた以上、打撃で求められる数字は上がる。「昨年は調子の悪い時期が長かった。いい時には自信を持って打席に入れたのですが、調子の上げ方で苦戦しました。自分の打撃で芯になるものをつくっていかないといけないと思っています」と自己分析。「悪くても（打率）.270くらいは打ちたいですね」と目標を掲げる。

「一からレギュラーを獲りにいく気持ちです」と思いを新たにしているが、佐藤龍との争いには「難しいところですね。プロ野球選手としては戦っていかなくてはならない関係ですが、人間としてはと言うか、先輩・後輩としては、できればやりたくない」と本音を吐露する。

■佐藤龍は外野を視野も…「却下されました」

　佐藤龍の思いは、さらに熱い。昨年12月に1200万円増の今季年俸3400万円（金額は推定）で契約更改した時点で、「僕の中では、トノさんとの争いは絶対にしたくない。トノさんと争うくらいなら、ライトに行きたい。外野用のグラブも、もう頼んでいます」と、プロ入り後1軍公式戦では1度も守ったことがない外野への転向も、辞さない構えを見せていたのだ。

「トノさんか、僕のどちらかがベンチというのは、チームにとってどうなのか」という思いもある。確かに、昨年チーム打率が12球団ワーストの.212だった西武にあって、チーム2位の99安打を放ったのが外崎で、同3位の72安打が佐藤龍だった。

　佐藤龍は4番も、山村崇嘉内野手と並びチーム最多の32試合で務めた。それでも、「（外野転向は）却下されました。やる前に“クビ”になりました。一応、外野用グラブは持ってきているのですが……」と苦笑した。

　4歳上の外崎とは、富士大ではちょうど入れ替えで一緒にはプレーしていないが、「プロでとてもお世話になっていますし、先輩の中でも好きな先輩です」と明かす。そして「シーズンが始まったら、どこかのポジションで2人で出ているかもしれない。2人とも結果を出して、2人で試合に出られるように。サードだけではありませんから」と気持ちを切り替えるように笑った。

　かくも複雑で、胸が痛くなるようなレギュラー争いが、これまでにあっただろうか……。（宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki）