新人の“自己満足”で先輩が大目玉 春季キャンプで折られた鼻…後の1億円選手が忘れぬ恩
Full-Count / 2025年2月10日 7時10分
■元近鉄の佐野慈紀氏の近鉄時代
近鉄などでセットアッパーとして活躍した佐野慈紀氏は、松山商高卒業後、近大工学部へ進学した。先輩や指導者が怖く、目立たぬように取り組んでいたが、甲子園の決勝戦に出場できなかったことで意識が一変。広島六大学リーグで無双状態で1990年ドラフト3位で近鉄入りを果たした。
自信を持って入ったプロの世界。しかし春季キャンプで早くも鼻をへし折られる。「予想外に1軍キャンプに連れて行ってもらって、周りのピッチャーを見た時に驚愕したんです。主力級のピッチャーは名前も知っているし、すごいのは当たり前ですが、背番号の大きい名前も知らないような投手たちもとんでもなかった」。
中でも赤堀元之氏(現くふうハヤテ監督)は別格だった。「高卒で僕の2年前のドラフト4位。こんなすごいボールを投げて4位かよ、って」。赤堀氏はこの翌年の1992年に大活躍。11勝22セーブ、防御率1.80で最優秀防御率に輝いた。
「隙間でも良いから、首脳陣の目に留まって投げさせてもらおう」と意識を変えた。当時のエースである憧れの阿波野秀幸氏からアドバイスももらった。「春先はインコースに投げておいたらみんな打たへんよ。手が痛いから」。大学時代からインコースに投げるのが得意だったので、半信半疑でもやってみた。
ところがフリー打撃で対戦した村上隆行氏(現ソフトバンク打撃コーチ)は「結構ムキになってくれるタイプ」なので内角球も打ちに来たという。「話が違うと思ったけど、春先だからやっぱり詰まる。それを仰木監督がたまたま見てくれていたみたい」。紅白戦、オープン戦とチャンスをもらえるようになった。
■1年目から1軍生活…西武・秋山氏相手に掴んだ手応え
1年目は開幕から最終戦まで1軍で活躍し続けたが、定着のきっかけになったのは当時の常勝軍団、西武戦だった。「それまで数試合、無難に制球重視で投げていたけど、西武には全く通用しなかった。ピンチで秋山幸二さんを迎えて開き直ったんです」。サインに首を振り直球で挑んだ。140キロ台半ばの真っすぐで2つ空振りを奪うも、最後は左翼線に打ち返された。
「完璧にノックアウトだったけど、僕の中ではこれくらい投げられるんやと再確認になった」。しかし捕手の光山英和氏は仰木監督に叱られていた。自己満足だったことを恥じて光山氏に謝りに行くと「ええ真っすぐ投げるやないか。これからもあれくらい投げろ」と逆に激励されたという。「そこから、もっとできるんだと自信がついた。調子が良いときは全力で行こうと」。内角の制球力に加え、力で押す投球も武器になり幅が広がった。
2年目にひじ痛で1か月ほどの離脱はあったが、そこから7年目まではフル回転。中継ぎへのこだわりは強くなっていった。「試合の流れは中継ぎ次第で変わってしまう。先発は試合を作る、抑えは試合を締める、中継ぎは試合を支配する、って考えるようになった。先発もやったけど前日は外出できないとか、面白くないなぁと。毎日試合に投げる方が楽しいと思っていました」。
当時の中継ぎは1イニング限定ではなく、連投への配慮もほとんどない。「4連投したり、3連投して合計9イニングとかもあった」。1994年に93回1/3、1996年はキャリアハイとなる97回2/3に登板。いずれも先発はゼロである。96年の57試合登板はリーグ最多だった。
年俸の面でも中継ぎの頂点を目指した。「4年目くらいにふと気づいたんです。中継ぎ投手の年俸は高くても4000万円くらいだった。これならオレも一番になれるかもって」。結果として1996年オフの契約更改で1億円を突破。中継ぎとしてはNPB史上初めてのことだった。
中継ぎの魅力に取りつかれ頂点を極めた。しかし、その右ひじは、明らかに限界に近づいていた。(伊村弘真 / Hiromasa Imura)
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