開幕好調だった楽天はなぜ夏場に失速? “酷使”のしわ寄せデータで明らかに

Full-Count / 2020年9月27日 7時5分

楽天・宋家豪【写真:荒川祐史】

■中継ぎ疲弊? 1試合あたりの投手起用数はリーグ最多「4.67」

 大型補強を敢行して今季に臨んだ楽天は、開幕から首位争いに絡むも8月下旬から失速。ソフトバンク、ロッテの上位2チームに水を開けられ、現在は勝率5割ラインに留まっている。そんな前半戦の戦いを、得点と失点の「移動平均」から検証する。(数字、成績は9月22日現在)

「移動平均」とは、大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標。グラフでは、9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移を折れ線で示し、「得点>失点」の期間はレッドゾーン、「失点>得点」の期間はブルーゾーンで表している。


楽天の得失点推移【図表:鳥越規央】

 開幕直後の無観客開催だった20試合の大きなレッドゾーンがとにかく目を引く。主砲の浅村栄斗に加え、新加入の鈴木大地、ロメロが攻撃の核となり、打率.300、OPS.839、平均6.44得点。打線が活発なことに加え、防御率も3.06であることが大きな要因になっている。

 特に救援防御率が1.23と鉄壁。新加入の牧田和久、JT・シャギワ、酒居知史、津留崎大成、さらにはブセニッツ、辛島航、安樂智大の救援陣がすべて防御率1点台を記録。今季からクローザーに指名された森原康平は6試合で防御率0.00とパーフェクトなリリーフ陣を締める存在となった。

 また先発投手陣は、則本昴大、岸孝之、松井裕樹、塩見貴洋、弓削隼人に、ロッテから移籍の涌井秀章が加わり、ローテーションが充実。その涌井は開幕から8連勝を記録、9月24日現在で14試合の先発で11試合でクオリティスタート(6回以上、自責点3以下)を達成するなど安定のピッチングで先発投手陣の軸となった。

 7月20日に岸が登録抹消されると、ローテーションの谷間がなかなか埋まらず、大きな連勝はできないものの、高い得点力でカバーしながら首位争いに食らいついていた。しかし、8月に入って先発投手陣が早い回で降板する試合が増加し、それにつれて救援投手陣の稼働率も高くなっていった。楽天の1試合あたりの投手起用数は4.67でリーグ最多である。

【平均投手起用数】
楽天 4.67
西武 4.34
ソフトバンク 4.28
オリックス 4.25
日本ハム 4.24
ロッテ 3.91

 そのためか、救援陣が大事な場面で踏ん張れず試合を落とすことも目立つようになった。8月22日以降は11勝16勝と波に乗れずにいる。

■茂木栄五郎&小深田大翔、遊撃手の大きな貢献に注目

 次に、楽天の各ポジションの得点力を両リーグ平均と比較し、グラフで示した。


楽天のポジション別得失点(2019年)【図表:鳥越規央】

 グラフでは、野手はポジションごとのwRAA、投手はRSAA(失点ベース)を表しており、赤色なら平均より高く、青色なら平均より低いということになる。


楽天のポジション別得失点(2020年)【図表:鳥越規央】

 二塁・浅村、三塁・鈴木大の移籍組と、右翼とDHのツープラトン起用のロメロ、ブラッシュの外国人組の貢献が目立つグラフではあるが、遊撃の大きな貢献にも注目だ。6、7月は茂木栄五郎が遊撃のスタメンとして、打率.323、長打率.508、OPS.930と上位打線の核として活躍。8月に入ると、ルーキーの小深田大翔が台頭し、遊撃のレギュラーに。辰己涼介、田中和基とともに走力による得点貢献を狙った起用と考えられ、そのため茂木が三塁、鈴木大が一塁に入るオーダーに再編。数多くのポジションでアドバンテージを稼ぐ打線の構築でさらなる得点力の増加を目論む。


楽天の打順別攻撃力【図表:鳥越規央】

 ただ、9月以降はチーム打率.229、OPS.695、平均3.89得点と攻撃陣が沈滞。さらに則本、塩見の登録抹消の影響か、WHIP1.54、防御率4.73と投手陣も付き合うように低迷した。

 9月21日に、広島から金銭トレードでDJ・ジョンソンを獲得し、福山博之を支配下登録。どちらも即日1軍登録するなど、急造ながら投手陣の再建を図る。9月19日からの連勝が、巻き返しのきっかけとなるだろうか。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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