【社会人野球】「何かできることはないか」JR東日本野球部が自粛期間中にイラストを描いた理由とは?

Full-Count / 2020年11月22日 8時30分

JR東日本の柏球場【写真:編集部】

■観客席に貼られた個性的なイラストの数々

 社会人野球・JR東日本の柏球場。オープン戦の応援へ駆け付けた多くの人たちの目を引いたのは、ソーシャルディスタンスの距離をとるために観客席の座席に貼られたイラストだった。描いたのは、22日から始まる第91回都市対抗野球大会に出場するJR東日本の選手達。ユニークな絵が満載だった。

“社業”でもあるJRの駅名看板をイメージし「社会的距離」駅と書かれたもの。前と後を示す駅名には「手洗い」「うがい」とある。また「リードは大きく! コロナも野球も距離感が大事」と書かれたイラストも。権利の関係で客席には貼られることはできなかったが、ピカチュウやドラえもんを描いた選手もいたという。絵はラミネートされ、バックネットにある150席のうち、3分の2の100席に設置されている。

 この企画の意図をマネージャーの松浦健介さんに聞いた。松浦さんも名門・横浜高で4番打者として甲子園出場。法大、JR東日本で活躍したアマ界では知られた存在だ。そんな松浦さんの大事にしたい思いが絵には込められていた。

「(コロナの感染拡大による)自粛期間中、何かできることはないかと、チームの全選手にイラストを描くことを提案した。絵心選手権ではないですが、上手い、下手はここでは関係ありません」

 球場は昨年にリニューアルされ、地元や野球ファンが観戦しやすいように150席が設けられた。名前とプレーが一致するよう、電光掲示板が設置。名前が表示されるようになった。応援してもらえるチームになるため、同社が力を注いだファンと選手を結ぶ場所が、この球場だ。

 しかし、今春はこの未曾有の事態に春先からのオープン戦は、予定されていた大会も軒並み中止となった。チームもファンも野球を奪われた。

■「クラスターが発生してしまったら、せっかくの野球も楽しめなくなってしまう」

 松浦さんは、野球が再開できる日を待ちながら、「解禁されたら、真っ先にうちのチームが試合をやって、社会人野球も戻ってきた! ということを発信していこうと考えました」と準備を進めてきた。いつも多くのファンが駆けつけるこの球場に早く熱気をもたらしたい。そんな野球愛が溢れ出た。

「でも、クラスターが発生してしまったら、せっかくの野球も楽しめなくなってしまう。なので、この絵を座席に貼って、間隔をとっていただこうと考えました」

 絵には選手の名前も書いてある。甲子園で活躍した選手や、プロを目指すルーキーが一生懸命、野球をファンと一緒に楽しめる日を信じて、描いた。苦手な人もいただろう。それでも、ボールやバットと同じくらい、ペンに力を込めた。訪れたファンは思い思いに、写真に収め、SNSなどでも発信している。

 松浦さんは言う。

「ウチにはこんな絵を描く選手がいるんだ。ファンに選手のことをもっと知ってもらいたいという思いもあります。彼らの中にはプロになっていく選手もいます。そういうところから感謝だったり、ファンを意識するようにして欲しいな、と」

 今年のドラフト会議でも阪神2位で伊藤将司投手が指名され、これで10年連続でプロへ選手を送り出した。来年も上位候補と呼ばれる選手たちがいる。彼らにとっても、奪われた野球の時間を無駄にしない、野球人として新しい意識を持てたのではないだろうか。

 JR東日本は予選を勝ち抜き、都市対抗野球出場を決めた。応援してくれるファンを少しでも楽しませたい。大事にしていきたい。そんな思いが感じられた光景だった。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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