日本ではなぜドローンが普及しないのか

FUTURUS / 2014年10月23日 11時15分

昨今話題のマルチコプター、ドローン。

アメリカでは Amazonが配達をドローンで行うことを発表して物議を醸したり、マルチコプターによる盗撮がトラブルになり飛行禁止、撮影が許可制になるのではないかという動きがあったりなど非常にめまぐるしい界隈。一方日本は出遅れた感が強く、ようやく普及しはじめたという印象。

ドローンがなぜ日本で普及しないのか、そして今後どのように展開していくのか、考えてみたい。

■ ドローン、UAV、マルチコプターとは?

まず整理したいのが用語。ドローン、UAV、マルチコプター、クワッドコプターなどさまざまな呼称があり、混乱、混同して使っていることが日本での問題を複雑にしているようだ。

まずUAV、Unmanned Aerial Vehicleは無人航空機。これは通常の有人航空機に対するもので、人が乗っていない航空機をさす。

ドローンはロボットを意味する言葉で、遠隔で人が操縦するUAVと異なり、予め決められたコースに沿って飛行したり、プログラムにより自律制御される意味合いが強い。

クワッドコプターはローターの数を意味し、クワッドは4つ、ヘキサコプターなら6つ、オクタコプターは8つとなり、それらを総称してマルチコプターと呼ぶ(参考:クワッドコプターの飛行に制限はあるの、許可・申請はいるの? 【ワンダードライビング】)。

■ 無人航空機と模型航空機の違い

無人航空機、UAVは軍用に開発されたものを想像すると分かりやすいが、カメラが装備されており遠隔でパイロットが操縦できるものだ。このカメラをFPV、First Person Viewと呼ぶが、FPVを装備することで無人航空機は数キロ先の遠隔であっても操縦可能となる。

日本でも一般に普及しはじめているマルチコプターはそのほとんどがラジコン、模型航空機である。FPVは備えず、通常のラジコンと同様に操縦者がコントローラを使い、有視界で飛行させる(参考:無人航空機と模型航空機。アメリカでの利用状況と法整備【ワンダードライビング】)。

■ アメリカで社会問題へ

アメリカで問題となって規制が求められているのは無人航空機、FPVを備えたものだ。航空機とUAVのニアミスが頻発、衝突が危惧されている。

Amazonはドローン配達実験をアメリカ連邦航空局(FAA)に許可申請をし来年には商用利用を開始する予定であるが、上記の背景からFAAは認可に慎重であると言われている(参考:米旅客機が3月に小型無人機とあわやのニアミス=FAA – WSJ)。

■ 日本でも大事故直前

日本でも人気クワッドコプター、DJI Phantom2を使った空撮中に繁華街に墜落、一歩間違えると惨事となっていた可能性のある事故があった。この件はその後、航空法違反で書類送検されている。

航空法は基本的に一般の航空機を安全に守るために作られた法律のため、通常の場所であれば高度250m以下、空港近くの飛行区域であっても高度150m以下であれば許可は不要。今回の書類送検はこの高度を超えて飛行したことによるもので、墜落の責任や人や施設に危害を加える恐れがあったためではない。

そのため高度150m以下の飛行は比較的野放し状態となり、花火大会に突入して空撮し苦情が寄せられるなど、日本でも問題が顕在化してきている。

航空法は改定される予定であるが、これは自衛隊が東日本大震災で活躍したUAVをアメリカから導入するためのものと言われており、模型航空機についてはまだ議論にのっていない。

■ グレーゾーン、倫理、事故

それでは日本で模型航空機を自由に飛ばすことができるのであろうか。

航空法的に飛ばすことに許可、申請は不要であったとしても狭い国土、他人の敷地への墜落、人へ危害を加えたり器物破損した場合の責任は免れない。さらに空撮時はプライバシーの問題も発生する。模型航空機が売れているが、人の上を飛ばした撮影動画を公開すると批判が殺到するなど、人口密集地ではなかなか飛ばすことができないのが実情だ。そのため空撮のプロが商用利用するケースや一部のマニアが楽しむものといった域を脱しきれていない(参考:人気の「ラジコンヘリ」一歩間違えると違法行為に?危険な3つのケースとは | シェアしたくなる法律相談所)。

■ 技術の発展

普及しているドローンのほとんどが海外製であることに対して、産業界では危機感を抱いている。というのも Amazonのようなドローンによる宅配が現実のものとなった場合、物流システムが一変しその経済への影響は計り知れないからだ。そのため純国産でドローン開発、商用利用しようという動きがある(参考:News & Trend – IT農業などから国内活用始まる、純国産商用ドローンが量産化へ:ITpro)。

宅配、物流に対してだけではなく人が行きにくい場所、発電所施設や高架橋の点検など極限環境下での応用も可能だ。また人手不足で悩む農業分野での活用や、人命救助で浮輪を投下するという新たな利用方法も考えられる(参考:AV Air Films – Drone Salva Vidas)。

ドローンはGPS、コンパスといったセンサー技術、姿勢制御技術、そして自律行動可能とするプログラム技術とハードウェアとソフトウェア、さらにはサービスを含めて複合的なプロダクトである。出遅れた感があるとはいえ、まだこれから始めても十分間に合う可能性が高い。

■ 日本でドローンを普及させるキーとは

アメリカや中国といったドローン技術先進国は大陸であり、飛ばす場所には事欠かない。しかし日本は海に囲まれた島国、狭い国土のほとんどは山岳地帯、森林であり、平野部は人口過多でドローン、UAV、模型航空機を問わず自由に飛ばせる場所がない。飛ばしたとしても危険と隣り合わせ、人がいない場所を選ぶとそこは山か海、川。墜落した場合に行方不明、水没と機体回収不能になるケースが多く非常にリスクが高いお国柄だ。

しかし逆にここがチャンスとなりうる。

従来のドローン、UAV、模型航空機は墜落しないことを前提に開発されており、墜落した場合のことをほとんど想定していない。またGPSを利用した空中静止の精度も今一歩であり、誤差が数メーターだと日本の密集地帯で考えると大雑把である。

まず墜落しないことが大前提ではあるが、墜落したときのフェールセーフ機能、これがキーフィーチャーとなりうる。例えば緊急用パラシュートや、エアバッグ展開で墜落しても機体が壊れない、人にあたっても怪我をさせないという工夫だ。

また機体の回収性を高める努力も必要だ。iPhoneを探す機能と同じく、森林や海に落ちても位置を知らせ、回収可能としたい。特に水没しないよう機体の密閉性を高め、浮くことも重要である。

さらに空中静止の精度向上はぜひ取り組みたい課題だ。GPS利用だけではなく、日本の自動車メーカーが得意とした自動ブレーキ技術のように超音波センサー、ミリ波レーダーセンサー、ステレオカメラなどを使い数センチからミリ単位まで制御可能としたとき、革命が起きるだろう。三脚やクレーンカメラが不要となる新時代の到来だ。

人工知能の搭載も応用可能である。なにもロボットが人間のように地上に直立している必要はない、空中で浮遊していたっていいのである。

狭くて危険、飛ばせる場所がない日本だからこそ出来ること、技術で解決できることがある。そこに期待したい。

FUTURUS

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