次世代環境車の本命!? プリウスPHVの底力

FUTURUS / 2014年11月11日 7時31分

プリウスPHVは、充電プリウスとも呼ばれ、ハイブリッドカー・プリウスの進化版だ。電池を高容量化、プラグインで充電することにより、カタログ値26.4km(JC08モード)のEV走行を可能にした。

ガソリン車が抱える環境負荷などの問題を少しでも解消していこうと自動車メーカー各社が技術革新のしのぎを削る次世代自動車カテゴリにおいて、さきがけとなったのがトヨタの「プリウス」ブランドを冠しつつ、PHVという次世代の技術をひっさげて2012年より販売が開始されたプリウスPHVだ。

しかし、私たち一般の認識としては、プリウスは知っているけれどもその「PHV」となると、一体何なのか正しく説明できる人はまだ少ないのではないか。

今回は、プリウスPHVについて、過去にFUTURUSで行った開発責任者へのインタビューから気になる要点をまとめつつ、このクルマの底力と、未来に対してどんな可能性を秘めているのか、考えてみよう。


■ プリウス・プリウスPHV 開発責任者:豊島浩二氏

・肩書:プリウス・プリウスPHV開発責任者

・所属:製品企画本部 ZF チーフエンジニア(CE)

・略歴:大阪府出身。1985年トヨタ自動車に入社し、ボデー設計部に配属。カローラの設計室をはじめ、17年間ボデー設計に携わる。2001年にレクサスLSの製品企画室に異動し、LS460とLS600hを担当。その後、チーフエンジニアとして欧州向け商用車を担当し、2010年にはBREV開発室でEVの企画を開始。2011年11月、次世代環境車全般を取りまとめる部署「ZF」において、(3代目)プリウス、プリウスPHVのチーフエンジニアに就任、現在に至る。

■ なぜPHVに注力するのか

最近、ヨーロッパメーカーはEVに力を入れてきていますが、トヨタでEVはやらないのでしょうか。

「元々EVも研究していましたが、EVに搭載する電池はここ5年から10年くらいのタイムスパンで考えた時に大きな技術革新は難しいと思います。そうなると航続距離の問題が解決できず、EVは近距離のコミューターとして限定的に使うものと考えています。」

「また、燃料電池自動車(FCV)は今後力をいれていく分野です。将来の究極のエコカーとして進めていきますが、当面は、インフラ整備、水素ステーションの設置が課題で、(グローバルで見た場合、)それぞれの地域での状況に合わせると、インフラ整備は難しい側面があります。FCVはすぐに普及させる、というよりもPHVの先の将来のものとして位置づけています。」

–なるほど、PHVから段階的にFCVへ意向していくという考え方のようだ。同社は2014年6月25日にFCVの14年度内発売を発表した。「本命はPHVなんですね」というインタビュアーの問いかけに対しては、「そうです、ここ5年から10年を見据えた時、トヨタはハイブリッド(HV)を中心としてプラグインハイブリッド(PHV)に力をいれていきます」と答えている。

その他、東日本大震災など災害との関係性やEVとの比較について、開発責任者ならではのリアルな話を聞かせてくれた(参考:プリウスPHV開発責任者に聞いた「なぜPHVに注力するのか」)。

■ PHVらしさとは何か?

豊島氏は、「PHVらしさって何?」という、ずいぶん根本的な問いをなんと豊田社長にも投げかけられたそうだ。その答えを詳しく語ってくれた。

「PHVは、電池の積載量が少ないので、EVほど大きくならず、コンパクトに小さく、低く作れます。車体設計の自由度が高いから、EVにはない、EVではできないボディを選びたいです。そう考えた時に、ハッチバックは先進的なイメージを与えられますから、やっぱりハッチバックの中に電池を詰め込んでいくのは、PHVらしいんではないでしょうか。」

また、PHVをプリウスベースにした理由として、「プリウスというのは環境車のブランドだと考えている」と答えていた。

エコカーの本命として環境車を牽引してきたプリウスブランドを活用し、次世代環境車の本命としてプリウスPHVを位置づける狙いが伺えるようだった。その他、競合となる他社製品の印象などについても聞き出すことができた(参考:「社長にも言われる」トヨタの人にPHVらしさとは何か聞いてみたVol.2)。

■ 直面した意外な落とし穴とは?

世の中に完璧などというものはなく、プリウスPHVにも当然弱点はある。あえてその点に迫ってみた。

「プリウスはエンジンとモーターのハイブリッド(HV)、モーターでも走ることができる車として世界で初めて市場投入したのは1997年です。エンジンにモーターをつけました、燃費がよくなってランニングコストが安くなりますよ、というので分かりやすかったです。

でもHVからPHVというのは違いを見せにくいんですね、価格、ランニングコストでの価格メリットが訴求しきれていません。EV走行だけしているともちろん安くなります。だから「これはEVだ、EVだ」と言っていたらEVだろうと思われて、EVとしての航続距離が26.4kmなもんだから、短すぎるとなっちゃって。

実際はピュアEVと違ってハイブリッドだから電池切れても走れるんです。それで、EVとハイブリッド(HV)のハイブリッドになっちゃったもんだからとても分かりにくいし、説明もしにくい。」

商品として分かりにくいというのを弱みとして挙げつつ、試乗すればその上質な乗り心地を感じてもらえる、とも語っていた。

その他、意外にも「ライバルは身内、HV」だという。なかなか表には出てこない開発責任者が抱えるものならではの真相は大変興味深い(参考:トヨタの人が打ち明けるプリウスPHVの「意外な落とし穴」Vol.3)。

■ 次世代環境車の未来とは?

最後に、「今後、次世代環境車はどのようになっていくでしょうか」と尋ねてみた。

「EVは航続距離の短さからコミューター的位置付けになると思います。バイク以上、クルマ以下といったところで、トヨタではコムスや、開発中のi-ROADがそれにあたり、そのジャンルではEVの存在感が高まります。

地方では車移動が基本ですがEVの50km~100kmという航続距離では足りませんから、HVやPHVが向いています。今のPHVのEV航続距離は26.4kmですが利便性を考えて、伸ばす方向で考えています。電池の値段は今後下がってくるでしょうから、その分販売価格を下げるというのもありますが、電池容量を上げ、航続距離を延ばして同じ価格で販売するのがユーザーにとって利便性が上がると思います。」

と、やはり、シーンごとに最適なタイプは別れていくという想定をしていた。

また、PHVが持つひとつの特徴である「外部電源機能(オプション)」を活用した、防災という観点でのプリウスPHVの底力について教えてくれた。

「男性数名で24時間、プリウスPHVの外部電源だけで避難生活を行ってみました。この時1日あたりの使用電力は15kW、ピーク時は1.8kWでガソリンを5L使用しています。つまりガソリン満タンであれば9日間の避難生活が可能なのです。自分自身で災害時に発電してそれで避難生活が出来る「自助」の考え方ですが、1週間以上も生活できるのであれば、プリウスPHVが普及することで災害に強い国になれると思っています。」

豊島氏は、「Sakuraプロジェクト」という取り組みをしており、小学校の防災訓練で扇風機や電灯などにプリウスPHVから給電を行う試みなどを紹介している。

最後に、豊島氏の描くPHVの理想像について尋ねたところ、なんと答えは「充電しないPHV」だった。その真意はぜひ、記事で確かめてもらいたい(参考:「次世代環境車の未来とは?」プリウスPHV開発責任者に聞いた 最終回)。

■ プリウスPHVの価値

インタビューを通して、プリウスPHVがどんなクルマなのか、以前よりずっと明らかになった。環境車のありかたや、社会貢献と広い視野をもって開発にあたっていることが印象的だった。プリウスPHVの購入には、国や各自治体で補助金がついており、かなりお得に買えるようになっている。

補助金については過去に「知らないと損!次世代環境車は減税&補助金を駆使して格安で購入すべき」でまとめたのでチェックしてほしい。もちろん、実際に購入する際には最新の情報を確認しておく必要はある。

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