東京で対応できない場合は台北で! “HDDの病院”『Dr.データ復旧』台湾本社に行ってみた
ガジェット通信 / 2015年10月11日 13時0分
以前、記者が取材した記事
「PCが起動しない」「思い出の写真が」「大切なデータが」データ復旧の一部始終を見た!
http://getnews.jp/archives/1089139
で、反響が大きかったとのご報告を『Dr.データ復旧』から頂いた。
記者が提供した壊れたPC(データの復旧は成功)を引き取りに行く際に、たまたま台湾から社長が来ていて、「台湾本社にも機会があればお越しください」とのオファーを受けていたが、そんなに簡単に行くわけにもいかず、社交辞令としてありがたく言葉だけ受け取っておいた。
忙しい夏が終わり、遅い夏休みというか、秋休みを取った記者は、せっかくなので台北に行くことにした。
記事の反響が大きかったということなので、実際に本社を取材するのも記者の務めというものだろうと、勝手に判断して旅行ついでに取材してきた。
旅行記は別稿で紹介するとして、本稿では『Dr.データ復旧』の台湾本社において、記者が日本で体験したサービス内容と技術、会社の考え方などの取材を行った。
トップ画像は今回の取材でモデルを務めてもらった同社事務社員の陳さん。
やってきたのは、台北のビジネス街。東京でいうと丸の内にテレビ局が立ち並んでいるような感じの場所と考えていただければよい。
そのビルの3階に同社の台湾本社があった。凌威科技有限公司というのが中国語での正式名称だ。『Dr.データ復旧』というのは同社のブランド名ということになる。
クリーンルームを設置するために特殊な工事が必要なので、3階のフロアの一部を賃貸ではなく、買い取って対応したという同社の入り口。
玄関フロアには靴のごみやほこりを吸着する粘着マットが置かれ、少しでも社内をクリーンにすることに努めていた。
受付には今回いくつかの撮影でモデルを務めてくれた陳さんが立ってくれた。
東京のオフィスと同様に、顧客が復旧されたデータを確認するためのPCが置かれているが、WindowsやMacに限らず、Linuxにも対応していて、あらゆるOSで確認ができるようになっていた。
台湾でも、顧客が復旧されたデータを確認して、必要なデータがなければキャンセルしても料金が一切かからないのは東京と同じシステム。
陳さんが指しているのは、現在では世界に数社しかないHDDメーカーのうちの一つであるウエスタンデジタル社からの認定証。
この認定証は台湾のものだが、東京のオフィスでは日本のウエスタンデジタル社の認定がされている。
通常はHDDを開封すると保証は受けられなくなるが、同社で開封した場合にはウエスタンデジタル社の保証は引き続き受けることができるという。
撮影禁止場所は社長から許可を取り、クリーンルームを外から撮影。東京のオフィスに持ち込まれたHDDが東京で対応できない場合には、より設備が整った台北で対応することもあるという。
こちらはエンジニアの通常の仕事部屋。取材した日は国慶節で休日であったが、一日でも早くデータを復旧させるためにエンジニアが数名出社していた。
東京オフィスで記者のPCをばらしてデータを復旧させた呂銘章技術主任がクリーンルームの入り口だけ案内してくれた。当然二重になっており、当日の担当エンジニアは出社するとトイレと休息以外はクリーンルームから出ることはないという。
棚には、数え切れないほどのHDDが並ぶ。
呂主任によると、持ち込まれたHDDの部品移植が必要なことがあるので、すでに廃版になったものから最新の各メーカーの製品をストックしているとのこと。
エンジニアの作業台はすべて日本製。
日本と同様に地震が多い台湾では、多少の地震では全く揺れない日本製の作業台にすべて入れ替えたという。
窓には外部からの侵入を検知するための赤外線センサーが設置されていた。
個人データが詰まったHDDを扱う場所なので当然のことだが、ブラインドのひもで反応してしまうことがあるのが難点だとか。
技術部アシスタントの女性社員はとにかく恥ずかしがり屋さんで、2枚しか撮影できなかった。
今回の取材に協力してくれた同社の江智雄(チャン・ツーション)社長と、謝海燕営業部長。
チャン社長の話では、ある日本企業の台湾支社が火災でその大半のデータが巻き込まれて現在復旧最中の事例、航空機事故で水中から引き揚げられた遺品のメモリーカードにあると思われる最後の旦那さんの写真を復旧した事例、病院においてHDDの故障で失われた患者情報を復旧させた事例など、社会性、緊急性に照らし合わせて、必要と判断したものについては最優先かつ無償で対応したとのこと。
技術力もさることながら、こうした社会性のある企業理念が信用を生むのだろう。
さて、同社に相談に来る顧客はなにも法人だけとは限らず、個人も多いという。
そこで、主に電話対応担当のチェ・ユイハンさんにインタビューした。
なお、記者は中国語がわからないので、インタビューの内容は東京オフィスの渡辺和彦さんの通訳による。
--お客さんからの第一声はどんな様子ですか?
「まず、たいていの方が費用を心配されますので、説明しますと、続いて状況を説明されて復旧の可能性をお尋ねになります。だいたい、データを失っておられるので緊張して焦っている様子がわかります。個人の方は、ものすごく心配されていて、絶望的でダメもとで電話して来られる方が多いです。法人の方は、会社への影響やご自身の首の心配をされている方もいらっしゃいます」
国は違えども、焦る様子は日本も台湾も同じだろうが、クビの心配とは相当深刻だ。
今回モデルを務めてくれた新人のチェン・イーウェンさん(22)は、電話も取るが来社してきた人への対応もするという。
--来社するお客さんの様子はどうですか?
「やはり焦っています。私の場合は技術的なことはあまりわからないので、私が状況を聞くよりもエンジニアにそのままつないだ方が時間の短縮にもなるのでそうしています」
--電話ではなく、その場にいるお客さんを見てどう思われますか?
「お客さんも緊張しているのに、自分も緊張してしまいます。ですから一刻も早くエンジニアに来てもらうように手配します」
--ご自身でデータを失ったことはありますか?
「まだありません」
--HDDは消耗品ですので、そのうち失うことになると思うのですが、どうですか?
「私は仕事で毎日そのような状況を見ていますので、焦らないと思いますけど、実際になってみないとわかりません」
会社でも顧客の不安をよく理解しているようで、不安を取り除くことができるエンジニアに直接話を聞いてもらうようにしているようだった。そういえば、東京オフィスで記者が壊れたPCを提供した時も呂主任が横にいて話を聞いて対応の概要を説明していたのを思い出した。
記者は同社の案内で、出先機関を出しているという日本の秋葉原のような存在のビルに向かった。
ここは新旧二つの建物の中に、秋葉原の電気街を全部詰め込んだようなところ。
同社では新旧二つのビルにそれぞれ出先機関を開設していた。
オフィスには日本支社の存在もちゃんと入っていた。
ボードにはHDDの故障はないと判断されて無償でデータを取り出した事例の顧客のサイン入り写真が貼られていた。これは東京オフィスにもある。
この出先機関にはクリーンルームの設置が不可能なため、ここで検査をして開封の必要があると判断されたものについては本社で復旧作業を行うが、データの確認と納品はここでもできるようになっている。
個人客には交通の良い同ビルでの対応が好評のようだ。
ここにあるのはクリーンルームの実物大モックアップで、これまたすべて日本製。
日本の有名ブランドに店舗に挟まれて店舗を構えていて、記者は30分ほど観察していたが相談は絶えなかった。
モックアップにある金庫も日本製。顧客のHDDは金庫で厳重に保管されるが、日本製品への信頼は抜群のものがあるようだ。
このモックアップでは週末の数時間は実際にエンジニアが入ってHDD検査の模擬実演をやっている。すると、あっという間に人だかりができて、用意されたパンフレットが飛ぶようになくなっていった。
今回の取材で、台湾本社と全く同じ対応が東京でも行われていることがわかった。
技術も会社の理念も、社長の言葉を借りれば「病院のようなもの」だといえるだろう。すなわち、HDDの故障はPCがガンにかかったようなものであるという例えで、余命いくばくもない、あるいは仮死状態のPCを所有する人に対して法外な料金を請求することはできないし、大切なデータを患者(顧客)の立場から考えないといけないということだった。
HDDの健康診断そのものは無料で、約30分で終了するので診断をしてもらって、何もなければそれでよし、何かあっても早期発見は復旧料金も安く済むし、復旧にかかる時間も短時間で済む。PCやメモリーカードの挙動が変だと思ったら、『Dr.データ復旧』東京オフィスに健康診断を受けに行く価値はある。
※写真はすべて記者撮影
取材協力 凌威科技有限公司(台湾)
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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