巨大新聞社が外資へ“身売り”……ドラマ『社長室の冬』三上博史インタビュー「情報の送り手側だけでなく受け手側のモラルが問われる」
ガジェット通信 / 2017年5月11日 9時0分
経営不振に陥る日本の大手新聞社、身売り交渉相手に選んだのは外資ECサイトだった……。この明日にでも実際のニュースとして私たちの目に飛び込んできそうなお話を描いたのが、『連続ドラマW 社長室の冬-巨大新聞社を獲る男-』。
ドラマは騙し合い、旧メディアと新メディアの戦い、フェイクニュース、など現代の時代を切り取るエッセンスが散りばめられ、スリリングなストーリーで展開。三上博史さんが買収を試みる外資を率いる主人公・青井を演じ“カリスマ性のある暴君”という難しいキャラクターを見事に作り上げています。
ご自身は「情報ダイエット」をしていて、必要最低限の情報しか得ないという三上さん。ドラマ出演を通して感じた現代のメディアを取り巻く環境など、お話を伺いました。
【ストーリー】
日本を代表する新聞社・日本新報は、発行部数の激減、広告収入の低迷から身売りは不可避と判断。
外資を率いる日本人・青井と交渉を開始する。
しかしその要求は過激で、まるで暴君のような青井に日本新報は翻弄されることになる。
果たして、戦後日本の論壇を支え、政局にも深く関与してきた「新聞社」という“既成制度”は崩壊していくのか!?
そして、青井の日本の新聞社吸収の真意とは?
―本作は、元読売新聞勤務という経歴を持つ作家・堂場瞬一先生によるリアルな描写が非常に魅力的だと思いました。脚本を読んだ時の感想を教えてください。
三上:報道ものの映画やドラマはたくさんあるし、僕自身も過去にドラマでプロデューサー役をやったりしたことがあったけど、本作は今のご時勢を上手く反映しているドラマだと思いました。報道の世界を描いているけど、結局は僕たち視聴者に問題が突きつけられるという、まるで合わせ鏡のように自分たちが照らし出されてしまう話だなと。報道の世界に全く関係の無い視聴者の皆さんも社会問題を突きつけられるというか、問題意識を感じさせられると思います。
―本当に今の時代だからこそ、という内容に、メディアに関わる身としてとてものめりこみました。
三上:メディアに関わる方だからこそ、辛くなかったですか?(笑) 身につまされる部分が僕より多かったりして。
―はっ、確かにそうですね……。メディアとしての正解は何なのか、WEBメディアだって未来は明るいのか? 等、色々考えてしまうというか。
三上:ドラマの中では新聞が衰退するもの、WEBサービスが力を持っているという世界ですけど、WEBだから大丈夫、なんてことは無いわけですよね。僕も現代のメディアの問題を色々と見ていて思うところがあって。今は必死になって取材して取ってきた記事も簡単にコピペされ、それがまた簡単に配信されてしまう。それも都合のいいところだけを切り取って、それでクリック稼ぎをされたりする。このことに対しては組織ではなく、1人1人のモラルとして考えていかないと追いついていかないですね。でも、人が集まるということはそこに需要があるということになる。僕は発信する側ではないので、拒否することしかできないのですが。
―ああっ、すごく分かります。時間をかけて取材して書いた記事とサクっとコピペして書いた記事、でもPVが高いのが後者だったりして……。
三上:「食べていくため」にそういう(コピペの記事)記事を書かないといけない人もいるのかもしれない。でも、夜心安らかに眠れるのは、絶対に自分の力で文章を書いている人だと思いますよ。
―ドラマの中でも情報が錯綜して、情報の受け取り手のモラルが試される部分もありましたね。
三上:そうですね。情報の送り手側だけでなく、受け手側の暗部をも照らされているわけで、しっかりと考え直さないと。そこはモラルを持つしかなくて、「これはちょっとどうなんだ?」と思ったら手を引く。本当にその情報が自分にとって大切なのか、見極める力をつけないといけないですよね。
皆さんが観ているTVドラマやニュース、バラエティ、民放で無料で観れるものは後ろにスポンサーがついているわけですから、そのスポンサーにとって不利益なことは放送しないわけです。そういう考えてみれば当たり前のことをもっとちゃんと考えた上で選択できないとダメですよね。
―三上さんはどの様に情報を選択しているのでしょうか?
三上:“情報ダイエット”という言葉もあるようですが、僕自身は1人の人間として多くの情報があまり入らないようにしているんです。役者さんでケータイを持っていないという方も最近多いのですが、僕もどちらかというとそっちのタイプです。
―最近では俳優の方がSNSで自分のプライベートを発信することが当たり前となりました。
三上:僕にとって「役者」って自分が大切なんじゃなくて、「役」が大切な仕事なんです。だから自分をひけらかせばひけらかすほど、演じる役の説得力がなくなっていく。ある時期、自己宣伝ツールとしてインスタグラムくらいはやろうかと思ったんです(笑)。でも、そこをなし崩しにしたら、全部決壊してしまう気がして。労力をつぎ込み、架空の“三上博史”を作る覚悟があればいいけど、そこまでの情熱はないですね
―個人的には三上さんのインスタグラム非常に見たいですが(笑)、でもおっしゃったことはすごくよく伝わりました。今日は大変貴重なお話をどうもありがとうございました!
『連続ドラマW 社長室の冬-巨大新聞社を獲る男』現在放映中!
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