GREEはかつて“ウェブ屋台”だった

ガジェット通信 / 2012年3月10日 14時0分

ゴムホース大学
今回はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』からご寄稿いただきました。
■GREEはかつて“ウェブ屋台”だった
先週、従兄弟の友人から「“起業”したい」と相談を受けた。餃子の王将で3時間ほど従兄弟も交えて話したのだが内容は覚えておらず。ただ彼が連呼する「スタートアップ」「MBA」「ベンチャーキャピタル」「グリーの田中さん」「BOPビジネス」「ザッカーバーグ」という単語だけが私の脳の底に残っていた。
帰ってから「あいつは何者なんだ」と従兄弟に聞くと「MBA=M→マヌケ、B→バカ、A→アホ」と即答して笑わせてくれた。とにかく性格的には良い奴だが、痛い感じの意識高い同級生だそうだ。ある種の一部の最近よくいる愛嬌あるタイプなのかもしれない。彼の話した内容を一・二行で要約すると、
「自分は世界を変えたくて、でかい起業がしたい。莫大な金がいる。でもお金がない。エンジェルを探している、米国でMBAも欲しい」
みたいな感じになるのだと思う。こんな要約でなんとなく彼の雰囲気が伝わるのではないか。
自分は大きな野心を持つ挑戦に対して、「お前は無理だ」「身の程を知れ」などと頭から否定するつもりはないが、ただ“この種”の学生の話を聞いていると、疑問に思うことが多い。それは“無謀”だからではなく、彼らが思い描く巨大な設備投資から始まる“大起業”のイメージが、少し間違っているのではないかと感じるからだ。
私は、近年のIT系“大起業”は従来の起業とは違う、独特の派生を経ていると思う。
その点を考えるうえで、携帯ゲーム会社2大双璧の1つGREEの田中良和社長のインタビューが面白い。
「「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員」2004年07月30日『ITmediaニュース』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/30/news006.html
田中氏は楽天勤務時代、自身でサーバーを用意し、サラリーマンと兼業して、まさに屋台的な半趣味でGREEを運営していたようだ。大きな“社会を変える起業”など当初は想像していなかったが、やっている途中で自己増殖的に爆発して巨大プラットフォームにまで成長した。
田中氏以外にも、こういう例は多い。『Facebook』も最初はザッカーバーグが作った出会い系SNSのような趣味サイトだったろうし。2ちゃんねる管理人の某氏のケースも同様だ。
現在は経営者として多忙な日々であろうが、初期に起きた爆発的拡張は、管理人も意図していなかったははすである。これら類似点はなんなのだろうか。
これを彼らがラッキーだったからと解釈するのも、血の滲む努力をしたからと解釈するのも間違っている気がする。
彼らのサービスがハイパーインフレーション的な増殖を見せたのは、当然彼らのサービスが魅力的であったからで、ウェブ媒体で希少な資源(ソース)である“人の関心”を奪ったからだ。
そして最も重要なのことは、現代はITインフラの拡張で情報伝達が加速化して“人の関心”の集積が指数関数的に伝達・集積される部分が深く関係しているのだろう。特にSNSでは人⇔人というダイレクトな繋がりで伝達されるので、“良い”と思ったサービスはネズミ算式に拡張する。
ただこれは“量”(人数)のネズミ算ではなく“質”(ムード)の部分も大きい。はじめは誰かが面白そうだと思い興味本位で参加して。サービスに関心を持つある一定のユーザーが集まり、それでますます面白い雰囲気ができてきて、という繰り返しで偶発的なインフレーションが、次第に強まり、独自の有機的なコミュニティーが形成されるのだ。
現在のSNSを含む、ユーザー参加型サービスは、サービスごとに独自の風土が形成されているような気がする。もちろんそのSNS内のコミュニティーごとにも、集まったユーザー層ごとに島のようなクラスタで細部増殖的に分枝するのだが。結局はそのサービス、またサービス内の所属コミュニティーの雰囲気のようなものに引き付けられ、その繰り返しで自律的なフレームが構築されるのだろう。つまり1つの言語ゲーム型ネットワークなのだ。この場合、関心の集積は、ユーザー参加人数としての身もふたもない量を超えて、参加者コミュニティーの感性価値が重要視される。
このような参加型サービスの爆発的拡張の契機となるのは、戦略的なマーケティングの集客よりも、多数派工作に至るまでの“有機的な関心の増加”である(もちろん初期の“火付け”としての宣伝は必要だが)。
王将で私が相談を受けた学生は、世界を見ているようだ。それは良いが、どうやら世界ははじめから戦略的意図で狙えるものではないのではないか?
とりあえず何がしたいか考え抜いた後で、設備投資を抑え、安価に使用できるサービスを横断的に組み合わせて低リスクなポーフォリオを組み“屋台的な試み”をトライ&エラーで続けるのがベターだと私は彼にアドバイスした。彼は世界起業のイメージと正反対だったためか、唖然としていたが、それが近道だろう。
個人にできることは考え抜いた末に、不確実性の海にサイコロを投げ続けるだと私は思う。
“投げ続けること”が重要なのだ。
【追記1】ウェブメディア企画の調査も兼ねて調べてみると、月100万PVを集める言論プラットフォーム『アゴラ』も月数百円のブログサービスに、無料のリンクウィズイン、『Facebook』などのプラグインを組み合わせたウェブ屋台である。こういう屋台的なメディアがダイナミックに運営されている事例も面白い。今後、起業の概念がIT分野に至っては変わってくるのではないか。
【追記2】適当に書いた記事だが、『Twitter』上で「そのとおり。現代のスタートアップは屋台的です」とシリコンバレーで働かれている日本人、日系人の方からほめていただけた。素朴にうれしい。
執筆: この記事はラカンさんのブログ『ゴムホース大學』からご寄稿いただきました。


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