「何度も足を運んで、とにかく全部観てほしい」 新作『キンプリ』菱田正和監督インタビュー
ガジェット通信 / 2017年6月7日 8時0分
2016年、“応援上映”という大ブームを巻き起こした『KING OF PRISM by PrettyRhythm』。2017年、6月10日より新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』が上映されます。前作は公開から3週間で動員が伸びずあわや上映打ち切りかと思われた所口コミで評判が広まり異例のロングラン上映を記録することになりました。
今回は、前作『KING OF PRISM by PrettyRhythm』ならびに新作『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』、スピンオフ元であるTVアニメ『プリティーリズム』シリーズの監督である菱田正和監督に新作の制作に対する思いやファンへのメッセージを聞いてきました。
――新作はいつから構想されていたのですか?
菱田:前回が前後編の構想だったので、2〜3年前から考えていたことになります。当時は、後半が制作出来るかどうかも全く見えない状態で作っていたので前半で終わっても仕方ないなと思いながら作っていました。
――前作では最後に予告編的な部分がありましたが。
菱田:あのエピローグからみんな後半を想像してね、という思いは半分ありました。
――前作は“エリート”と呼ばれるみなさんが応援してくれて、記録的なヒットになりました。新作公開に至った今のお気持ちはいかがですか?
菱田:新作は作れないかも、という気持ちで前作を作っているので、今回観てもらうことができてよかったです。前作では「ふざけんな!」と言われかねない終わり方でしたが、今回の新作は文句を言われない出来になっていると思います。
前作の時点では後半が作れるかわからないので一緒に喜んでいられなかったんですよね。みんなの観たいものというのが作れたと思うので、今回は楽しめると思います。
――Over The Rainbow3人の成長が描かれていますが、どういう思いが?
菱田:やっぱり、僕は3人の成長物語を作りたかったんです。だからこそシンたちが出てきたと思います。Over The Rainbowの3人で60分の物語を作ろうと思えば出来たと思いますが、ドラマチックではないものになった可能性が高いと思います。前作では、応援上映を前提としたライブを何曲か入れて、多少の新作部分を作れば応援上映が出来る作品として成立しました。でも僕たちはこの3人の物語が作りたかったので、前回では我慢して、今作に力を注いだという感じです。
――アフレコの空気感は変わりましたか?
菱田:前回は本当にキャストの人数が少ないんですよね。みんな忙しい人達ばかりでほとんど別録りだったんですけど、今回はうまくまとめて人数が集まる形でアフレコができたので、前回よりは楽しそうにやってました。 あと、前回はなんだかよくわからないものの声を録らされているという感じだったのですが、新作ではエーデルローズ7人も、みんなが「プリズムショーとはなんたるか」を知った上で収録しているので和やかで楽しそうにやってくれていましたね。
――その“プリズムショー”とは何かを改めて教えて頂きたく……。
菱田:定義だけ言っておくと“ファッション、ダンス、ミュージックとフィギュアスケートを融合した新しいエンターテインメントショー”です。原作がゲームなので、僕達はそのフォーマットに則って作っています。
簡単に言えばフィギュアスケートの大会が終わった後に行われるエキシビションのような感じです。規定のジャンプやスパイラルをするのではなく、お客さんをとにかく楽しませるというモデルがあり、そこに“プリズムジャンプ”という新しい技があって、その素晴らしさで優劣を競う事になっている感じです。
――お客さんが楽しんだらOKという感じですか?
菱田:そうそう、心を動かされたら得点が高いという感じです。
――新作はいろんな伏線がぎゅっと凝縮されていてスピード感がある印象を受けました。その中でも注目のポイントはありますか?
菱田:シーンやカットをとにかく切りたくなかったので、あらゆる手を駆使して凝縮させて入れたんですよ。なので、みなさんにとっては一瞬で通り過ぎていくと思います。これは何回も劇場に通っていただくとか、DVDを止めて観る、とかしていただいて、とにかく全部観てほしいですね。
――組み込めなかった物語はありますか?
菱田:最初は「60分で作ってくれ」と言われたんですが、コンテを書き終わったら77分ぐらいになっていて、20分近くオーバーしてたんです。なんとか70分までは交渉してくると言ってもらって、そこから切って詰めて。だから無駄なところがなくてすべて凝縮されています。
――今回は海外でも配信されますが、今のお気持ちはいかがですか?
菱田:韓国では『プリティーリズム・レインボーライブ』が放送されていたので、凄くファンが多いのも知っていますし、前作の『キンプリ』が韓国で上映され、楽しんでくれていたのも知っているので、同じ日に公開されてすごく嬉しく思っています。
それ以外の方々はどう思うんだろうな、というのが率直な感想というか疑問です。それこそ“プリズムショーが何か”というのがわからないところから始まるので大変だろうなあと思います。台湾など、ある程度ゲームが普及していた場所はいいんですけど、それ以外の場所では「ジャパニーズはクレイジーだな」「なんなんだこれは」とみんな思うんじゃないかと思います。
――日本では初見からリピーターになっていく現象が見られましたが。
菱田:他の国でもあんまり変わらないんですかね? あまり海外の人に向けてという気持ちでは作っていなかったので、僕としては戸惑いのほうが大きかったりしますが、もちろん嬉しいですよ。
――お気に入りのプリズムショーはありますか?
菱田:どれも外せないですよ。新作では、僕がお題を渡して京極さん(京極尚彦さん)が考えたジャンプもあるんですが、今までにないものが出てきてすごいなあと。僕は理屈をつけてプリズムジャンプを作るんですが、京極さんは感情をストレートに出してきて面白いと思いました。つまり、プリズムショーは全部面白いということですね。
――今回のキャスティングに関してはいかがですか?
菱田:エーデルローズの7人は僕がオーディションに関わりましたが、それ以外は一切口を出していません。今回のキャスティングについて「そんなにお金があるの?」と聞いて回ったんですけど「多分大丈夫」と言われたのでそれ以上は聞かなかったんですけど(笑)。特に山寺宏一さんが出ると聞いたときは本当にびっくりしました。僕の中では最高レベルの人なので、そんな人を呼ぶのにいくらかかるんだろうとか(笑)。山寺さんは『ヤッターマン』のときに本当にお世話になっていたので、僕からお願いするなんてとてもじゃないけど出来なくて。だから、僕がお願いしたわけじゃなく、周りの人達が勝手に忖度(そんたく)してキャスティングしてくれたんです。実際に現場で山寺さんにあったときは汗が止まりませんでした。
遊佐浩二さんや堀内賢雄さんに関してもそうで、遊佐さんは『プリティーリズム・レインボーライブ』で呼びたかったけど残念ながらそれは叶わなくて今回お願いできました。賢雄さんは昔『恐竜キング』のときに出てもらっていて、何かの縁だなあと思いました。あと、賢雄さんがいると格式高い作品だなと思いますね(笑)。三宅健太さんなんて僕が新人の演出のころからずっと縁のある声優で、こういう形で出てくれて嬉しいなと思います。三宅健太さんがいると『プリティーリズム』だな、って思いますし。
――TVシリーズのファンに向けてのメッセージをいただければと思います。
菱田:『プリティーリズム・オーロラドリーム』から追っかけてくれている熱心なファンが「プリティーリズムを見てください」と言い続けてくれていました。そういう人たちの思いが痛いほどわかっているので、十分耐えうるものを作りたいというのは前作から思っていました。期待に応えてあげたいという思いも強くありました。
実際、おそらくシリーズを通して観ていなくても『キンプリ』だけ観ていれば大体の話は追えますし、『プリティーリズム・レインボーライブ』を観ていたらバックボーンがわかりながら観られます。はっきり言ってしまえば『レインボーライブ』だけ観ていれば十二分に楽しめるんですが……。一作目から『プリティーリズム』を推してきてくれたみんなに対するプレゼントです。
――新作を機に観てみようと思っている方へのメッセージをお願いします。
菱田:前作の『キンプリ』を作るにあたって言いたかったことって、シンくんのセリフ(※)の中に僕が言いたいことが詰まっているんです。今回は映像的にも内容的にも3倍どころじゃなく10倍にも100倍にもボリュームアップしているので、なんとなく追いかけているだけでも暇つぶしになりますし、興味を持ってもらって追っかけてもらえれば1年ぐらい飽きないぐらいのボリュームのある内容になってます。応援上映に行ってもらえれば、応援をしている人を見るだけでも楽しいですし、新たな非日常の世界を観たい人に観てもらえればと思います。
※シンのセリフ「毎日をなんとなくつまらないなあと思って過ごしている人に教えてあげたいんです! 世界は! 輝いているって!!!」
――ありがとうございました。
『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』は全国56館にて6月10日(土)より順次公開。
『KING OF PRISM -PRIDE the HERO-』作品情報
■スタッフ
監督:菱田正和
脚本:青葉譲
CGディレクター:乙部善弘
キャラクター原案&デザイン:松浦麻衣
プリズムショー演出:京極尚彦
音楽:石塚玲衣
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
音響監督:長崎行男
音響制作:HALF H・P STUDIO
原作:タカラトミーアーツ/シンソフィア/エイベックス・ピクチャーズ/タツノコプロ
アニメーション制作:タツノコプロ
配給:エイベックス・ピクチャーズ
製作:キングオブプリズムPH製作委員会
■キャスト
神浜コウジ:柿原徹也
速水ヒロ:前野智昭
仁科カヅキ:増田俊樹
一条シン:寺島惇太
太刀花ユキノジョウ:斉藤壮馬
香賀美タイガ:畠中祐
十王院カケル:八代拓
鷹梁ミナト:五十嵐雅
西園寺レオ:永塚拓馬
涼野ユウ:内田雄馬
法月仁:三木眞一郎
如月ルヰ:蒼井翔太
大和アレクサンダー:武内駿輔
高田馬場ジョージ:杉田智和
氷室聖:関俊彦
黒川冷:森久保祥太郎
山田リョウ:浪川大輔
Twitter @kinpri_P
(c)T-ARTS / syn Sophia / エイベックス・ピクチャーズ / タツノコプロ / キングオブプリズム PH 製作委員会
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