官邸が「1校限定」や「加計限定」を求めた事実は全くない――当事者からみた加計問題の真実(政策工房 代表 原英史)
ガジェット通信 / 2017年8月15日 7時45分
官邸が「1校限定」や「加計限定」を求めた事実は全くない――当事者からみた加計問題の真実(政策工房 代表 原英史)
加計問題について、私は当事者だ。
国家戦略特区ワーキンググループ(以下「特区WG」)の委員を務め、一連の政策決定プロセスには直接関わってきた。当事者として知る限り、総理の友人関係など、政策決定には全く関係がない。利益誘導がなされていたかのように繰り返し報じられ、“疑惑”が未だ晴れないことは、本当に残念でならない。
事実を明らかにするため、これまで、関係者とともに記者会見を行い(6月13日:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/briefing.html , https://www.youtube.com/watch?v=jtZyqqNpaOw 、6月26日:https://www.youtube.com/watch?v=NoboDFj6FmY )、国会での参考人招致にも応じてきた(7月10日、24・25日)。残念ながら、マスコミではなかなか報じてもらえていない。
そこで、改めて事実関係を申し上げておきたい。本筋は、以下の2点に尽きる。
1、獣医学部の新設については、認可申請を一切認めないという岩盤規制があった。このため、新設は52年間なされてこなかった。その間、現場では獣医師の偏在・不足が問題となってきた。そこで、強力な反対はあったが、なんとか規制緩和を実現した。
2、今治市・加計学園は10年前から国への提案なども行っており、準備が最も進んでいた。そこで、1校目として先行した。
「官邸主導で加計だけが認められるように細工したのでないか」との疑いがもたれているが、そんな事実はない。特区WGも内閣府も、少なくとも特区ならどこでも申請を認めることを求めてきた。しかし、獣医師会が「1校限定」を求め、特区WG・内閣府側は、何も実現できないより一歩でも前進するため、当面これを受け入れた。官邸が「1校限定」や「加計限定」を求めた事実は全くない。
詳しくは別の記事(https://jinf.jp/feedback/archives/21162 )でも書いたので、そちらも参照いただきたい。また、「1校限定」を求めたのが官邸や内閣府でないことは、動画の対談(https://www.youtube.com/watch?v=swRHoHN0L4k )で、役所が開示している文書に基づき、詳細に解説した。こうしたことは、公開情報で明らかになっていることだが、マスコミ報道は“疑惑”に沿ったものばかりだ。
追加的に2点だけ補足しておきたい。
補足1、根拠不明な規制はあってはならない。
そもそも、規制とは国民の権利を制限することだ。憲法で保障された営業の自由や職業選択の自由を制限するには、明確な根拠が必要だ。
前川喜平・前文部科学次官は5月25日の会見で、獣医師の将来需要の見通しを農水省が示さなかったことに触れ、「薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。行政のあり方が歪められた」と述べられた。これは、憲法に照らして明らかに間違いだ。薄弱・不明確な根拠で国民の権利を制限してはならない。国会で「規制の立証責任」などと呼んで議論しているのはこのことだ(7月25日参議院予算委員会での浅田均議員の質疑など参照。http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?ssp=31144&type=recorded )
なお、前川氏は、その後主張を変えられたようだ。7月の国会閉会中審査では、規制緩和をすべきかどうかと加計の新設を認めるかは別問題であり、行政が歪められたと自分がいっているのは後者、との答弁を繰り返されている。
補足2、「4条件を満たしておらず問題でないか」との指摘もある。これは、「4条件」と呼ばれる閣議決定の読み間違いだ。
「4条件の設定で、学部新設の可能性はほぼゼロになった」などという読み方をしていた向きもあったようだ(http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06809/a2.pdf )。しかし、文面(以下の最後の項目。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai14/shiryou2-2.pdf )をふつうに読む限り、そんなことはどこにも書いていない。特区WGでのこれまでの議論で、閣議決定は当然クリアされている。詳細は、7月10日衆議院内閣・文科委員会での吉田宣弘議員の質疑での私の答弁をご覧いただければと思う(http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&media_type=&deli_id=47396&time=9330.6 )。
事実は以上のとおりで、総理の友人関係や「ご意向」など、政策決定プロセスに何の影響も与えていない。だが、いったん疑いがもたれると、すべてが疑わしくみえるらしい。「特区WGの議事要旨で、加計学園幹部の発言が記載されていなかった」(8月6日朝日新聞など)との報道もなされた。隠し事をしていたのがやはり怪しい、というわけだ。
これについては、特区WGの八田達夫座長がコメントを出し(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/gijiyoushi.pdf )、翌7日に私も同席して記者会見も行った。要するに、通常どおりの取り扱いをしただけのことだ。
・特区WGで自治体から提案を受ける際、自治体が関係事業者などを連れてこられることはよくある。こうした同席者は正式な参加者ではないから、議事録には記載されない。これは、特区WGに限らず、多くの会議で一般的な取り扱いだ。
・このケースでは、今治市が加計学園関係者を連れてきていたが、正式な参加者ではなかった。そこで、加計問題がマスコミ・国会で問題にされる以前のことだったので当然だが、特別な考慮は何らせず、通常どおりの取り扱いをしただけだ。
事実に反する指摘や憶測の流布が続いている。これ以上の混乱が続かないよう、今後も、何かあれば常に事実を明らかにしていくつもりだ。
(政策工房 代表 原英史)
※2017/08/16一部修正いたしました(編集部)
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