秋葉原の老舗カレー店「ベンガル」がビル建替のため一時閉店 店主・浅見氏が語る想い
ガジェット通信 / 2017年8月22日 20時0分
「秋葉原でオススメのカレー屋は?」
その質問に対して、必ずと言っていいほど名前が上がる人気店「ベンガル」。1973年創業、秋葉原の地でずっと愛され続けてきた老舗だ。そんな人気店が、ビル建替のため2017年8月22日(火)15時の営業をもって閉店した。現在、秋葉原で移転先を探しているが、まだ詳しい場所などは決まっていない。
44年の歴史を振り返る
筆者がお店に到着したは最終営業日である8月22日(火)の14時55分。まもなく閉店となるが、店員さんたちは暖かく迎えてくれた。お昼時は食べ納めをしようと多くのお客さんが集まっていたようだが、この時間帯になると平日ということもあり、店内は空いていた。こんな時間に来てしまったこともあり、大変恐縮だが筆者が閉店前の最後の客となった。
注文したのは看板メニューである『ビーフ角切りカレー』。店オリジナルのスパイスを配合し、サラッとしながらも深いコクのあるルー。そして、とろとろに煮込まれた角切りの牛肉が特徴的で、多くのお客さんから愛されている。
店頭の看板に「純インド風カレー」とあるが、これは昔ベンガルのサラサラしたソースが珍しかった時代の名残。実はベンガルのカレーは、インドカレーでも欧風カレーでもないオリジナルの味である。
いつもそこにある。そう思っていただけに、一時的とはいえ閉店してしまうのは非常に感慨深い。色々なことを思いながら味を噛み締めていると、店主の浅見文隆さんが近くに来てくれた。
浅見さん(62)はベンガルの2代目店主。ベンガルはもともと、末広町にあった香辛料の輸入・精造会社「小林貿易」の方が開いたお店。「僕はもともと小林貿易の子会社である東西通商という会社で、香辛料の輸入などをしていました。(秋葉原にある)芳林小学校近くのタバコ屋さんが入っているビルに会社があってね。当時は26歳だったかな」と浅見さん。つまり、初代オーナーは浅見さんの親会社に務める先輩だったわけだ。
当時の頃を思い出すように、浅見さんはこう続ける。「僕が新人サラリーマンだった頃、小林貿易さんから電話がかかってくると昼の12時からネクタイをとって、この店で接客していたんです(笑)。週数回ぐらいだったけど、そういう形でお手伝いをしていました。その頃は、まさか僕が店を継ぐとは思ってもみなかったですけどね」
その後、先代オーナーから「歳を取って辛くなってきたから店を継いほしい」と依頼をうけ、今日まで約13年間、店主として奮闘してきた浅見さん。今でもお店の運営とともにスパイス関連の仕事を続けているが、「気持ちの上ではカレー屋さんがメインになっているね」と笑いながら話してくれた。
秋葉原の地で再びお店を開きたい
お店が告知した情報では、2017年9月、10月には移転オープン予定とあった。そのことについて詳しく聞いてみたところ、今はまだ場所がまったく決まっていないので、9月中は難しいという。しかし、今年の秋までには決めたいと答えてくれた。
地価が上がり続ける秋葉原で、飲食店が移転するのは非常に難しい。それゆえに、秋までに決まらなければ希望する場所以外も視野に入れるという。だが、可能な限り最後まで希望は捨てずに秋葉原で物件を探されるようだ。
差し出がましい話だが、「ベンガルさんは昭和通り方面でもなく、明神下方面でもなく、この辺りにいてほしいです」と伝えた。そう言うと、浅見さんは「私もね、できれば今いる外神田にいたいと思っています。神田や上野の雰囲気ではなく、“秋葉原の街の中”でありたい。秋葉原は何かと忙しい街じゃないですか。そんな中にこういう落ち着いた雰囲気の店があってもいいんじゃないかなってね」と笑顔で話してくれた。
最後に、改めて浅見さんから見た秋葉原の街について尋ねてみた。
浅見さん:僕は若い頃からずっとこの街にいたけど、本当に時代と共にどんどん変化していくね。安易に“昔”と“今”には分けられないけど、最近は自分で堂々とオタクと名乗れるようになり、かえってそういった人の方が能力があるなと思うよ。自分で考えたことをやりながら、仕事も私生活もがんばってる。昔は会社頼りで仕事を無理して、飲めない酒を飲んで、その先で体壊して。私たちはそういう時代だったけど、今は本当に素晴らしいと思う。秋葉原から巣立っていく柔軟な人や会社が世の中で認められていくんだろうね。あわよくば、そういう人たちが偉くなって「ベンガルによく行きましたよ!」と言って、またお店に来てくれたら本望だよ。店はこれで一時閉店になるけど、また0からやり直す気持ちで帰ってくるよ。お店に来てくれた皆さん、本当にありがとう。
まだ移転先は決まっていないが、浅見さんは「欲を言えば今より広くて、バリアフリーで。もっと言えばちょっと子どもが遊べるくらいの末ペースがあってね。これは夢物語だけど、お店にサンドバックを置いて、落ち込んでいる人や憂さ晴らししたい人を呼びたいね(笑)」と語ってくれた。話を聞いていると、ベンガルがなぜ愛されるか分かった気がした。
移転先が早く見つかることを切に願うばかりだ。
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(執筆者: sasuke_in) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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