『サバイバルファミリー』矢口史靖監督インタビュー「“水族館=魚介類バイキング”という長年の夢が叶いました」
ガジェット通信 / 2017年11月6日 18時0分
原因不明の電気消滅によって廃墟寸前となった東京から脱出した鈴木家。便利さに甘やかされてきた彼らは無事にこの状況を生き抜くことが出来るのか?! 『ウォーターボーイズ』『ハッピーフライト』の矢口史靖監督最新作『サバイバルファミリー』。DVD-Blu-rayが現在発売&レンタル中です。
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【ストーリー】
東京に暮らす平凡な一家、鈴木家。さえないお父さん(小日向文世)、天然なお母さん(深津絵里)、無口な息子(泉澤祐希)、スマホがすべての娘(葵わかな)。一緒にいるのになんだかバラバラな、ありふれた家族…。そんな鈴木家に、ある朝突然、緊急事態発生! テレビや冷蔵庫、スマホにパソコンといった電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池にいたるまで電気を必要とするすべてのものが完全にストップ!ただの停電かと思っていたけれど、どうもそうじゃない。次の日も、その次の日も、1週間たっても電気は戻らない…。情報も断絶された中、突然訪れた超不自由生活。そんな中、父が一世一代の大決断を下す。果たして、サバイバル能力ゼロの平凡一家は電気がなくなった世界で生き延びることができるのか!?今、鈴木家のサバイバルライフの幕があがる!!
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今回ガジェット通信は、矢口史靖監督のインタビューを入手! 映画の見所や「コメディだけど笑えないリアリズム」についてなど、金言が飛び出しました。
――王道のコメディーだと思って観始めると“笑えない”ことに気付いて背筋が凍りますね。主演の小日向さんを観ていると「やばい!」とハラハラしちゃいました。
矢口監督:そうなんですよ。一番間違っている中心人物がお父さんで、彼が家長なので、家族は付いて行くしかないんですよね。子どもたちもお父さんとは別の道を選びます、という年齢でもないので、仕方なく4人でサバイバルを始める。間違っている主人公がお父さんなので、だから行く先々でトラブルにも遭うし、おかしなこともしでかしてしまうし、もう死ななかったことが奇跡なくらい。ラッキーな目にあっているから、生き残っているだけなんですよね。まったく活躍もしないですが、その間違ったことばかりしている主人公と観客が、ほぼ同じ目線になるだろうと。サバイバル能力や知識、ツールも持っていないであろう都会の人間が、たいして目算も立てずに突然脱出だと言って家を飛び出したら、どんな目に遭うかということが、観客に体験してほしいことでした。だから、この家族が理想の生き残り方で、あのようにふるまえば生きていけるだろうって思う人はまずいないと思います。ああなっちゃいけないんだなって、映画を観終わった時に感じてもらえればなと思います。
――一週間とか10日後とか、家を出る決断も遅いんですよね。
矢口監督:遅いです。やばいです。普通この手の映画の場合、解決できそうな人が主人公なんですよね。そもそも消防士だったり警官だったり、車があるとか特殊技術で何かができるとか。だから、そういう人が主人公の場合、だんだんとヒーローに近づいていくんですよね。旅する過程でいろいろなものを蓄積して、世界を救ってくれるようになる。この人についていけば大丈夫だと思うようになる。そうじゃなくて、こいつにだけはついていっちゃいけないという主人公にしたので、それに見合った方をキャステイングしたら小日向さんになった、という感じです。
――キャストの皆さんは撮影が大変そうですね。イモムシとか本物だったみたいで。
矢口監督:虫は撮影の前に「監督これちょっと気になります」とすぐ言われて。虫がとにかく嫌いだそうで、だから芋虫を口に運ぶなんてとんでもないと。最新のCGやメカニカルな作りものでなんとかならないかものかと言われたので、「ですよねえ」くらいの感じでふわっと流しまして。当日は本物を用意してやってもらいました。リアルを追求するためなので、わざと意地悪をしている訳じゃないんです。
――リアリズムへのタッチ、ですよね。
矢口監督:それと豚ですね。訓練された豚などはいないことと、作ったところで本物には観えないので、食肉用の本物の豚に来ていただきました。犬・猫・象などはいるのですが、動物タレントとして調教している豚はいないんですね。とにかく捕まえないと撮影は終わりませんから、という撮り方です。でも豚も必死なので早い! 豚のほうもいい芝居が撮れました。
――ところで試写会などで大勢の人と一緒に観て、監督ご自身が観客に対して何か感じた瞬間はありましたか?
矢口監督:水族館のシーンで、「えっ!?」っていう空気は感じました。こんなことしていいの? って。それは本物の水族館がロケ地を貸してくれたこともあるのですが、タブーに踏み込んだ感は自分でもありました。実は『ウォーターボーイズ』(01)、頃から水族館の魚は美味そうに見える、寿司職人なら我慢できないみたいなものを、いつかちゃんとやりたかったんですよね。『ウォーターボーイズ』(01)ではヘッポコ高校生の5人が寿司屋の替え歌を歌うくらいでとどまりましたが、いつかガチで、あれは食えるんだということをやりたかった。だから今回、夢が叶ったんですよね。日本人なら誰もが一度は思う、水族館=魚介類バイキングなんです。
――そんな積年の夢が(笑)。
矢口監督:僕としては、普段は絶対に入っちゃいけない場所、しちゃいけないことだけど、世界が崩壊して社会のルールがなくなったらやってみたいなあ、そんな開放感もこの作品で描いてみたかったんです。本当は高速道路には入っちゃいけないけれど、この世界なら自転車でそっと入ってみたいよねということをいくつも夢想して。それを素直に脚本に書いていくと、とんでもないスケールになる。でも、想像以上の確率で映像化できたような気がします。
――今日はありがとうございました! 矢口作品と言えば特典映像もお楽しみですが、最後に鑑賞ポイントを教えてください。
矢口監督:「矢口史靖監督の映画の常識、それほんと?」は実は、一番のおすすめでして、CSで一度放送されているものです。映画の宣伝の枠があるので、宣伝になる面白い映像を作りましょうという話だったのですが、僕が悪ノリでつい、映画によくあるシーンは本当にあり得るのか? というリアル検証をするというアイデアを出したところ、すぐ決まっちゃって。言い出しっぺの僕も演出をすることになり、映画のスタッフ、助監督さんたちと4人で2本ずつ撮ったので、8作品あるんです。僕が提案したアイデアを元に、「映画でよく見るあのシーンって、本当にできるの? という疑問を2分間で検証しています。今回特典に入ったので、今後シリーズ化を目論もうかなと。ここにたどり着くまでにたくさんの特典映像があるのですが、最初に観てほしいほどです。
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(C)2017 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ
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