プレミアムUltrabookで振り返る HPデザインPCの系譜
ガジェット通信 / 2012年4月27日 18時45分
液晶モニター面のみならず、天板やパームレストにまでふんだんにガラスを用い、またキーひとつひとつに仕込まれたLEDによる繊細なイルミネーションパターンや、ダイヤル式のボリュームなど、随所にちりばめられたアナログ的な質感と高いデザイン性が異彩を放っているHPのプレミアムUltrabook『ENVY 14-3000 SPECTRE(以下SPECTRE)」。
現在ノートパソコン市場では、薄型軽量でなるべくハイスペックなお手頃モデルが主流のところを、あえてずっしりとした重みのあるハイスペック高級モデルを投入した狙いは何か? 日本ヒューレットパッカード株式会社のパーソナルシステムズ事業統括コンシューマービジネス本部モバイルビジネス部プロダクトマネージャーの室裕朗氏にうかがった。
「もともと弊社は2006年頃からデザイン性の高いパソコンに取り組んできました。と言いますのも、ちょうどその当時から、お客さんがCPUやHDD、メモリをお好みで選んで注文する『BTO』が流行りまして、パソコンがコストパフォーマンス優先の日用品になってきたという状況がありました。それも良いのですが、パソコンはその名前の通りもっとパーソナル(個人的)なものですし、よりインテリアやファッションにあったものが存在しても良いんじゃないかと考えたんです」
そこで生まれたのがノート天板にデザインパターン“ZEN-design”をあしらった『HP Pavilion Notebook』。
「アメリカ本社のデザインチームが世界中を旅して得たインスピレーションを元に決定したデザインコンセプト、それが京都の禅寺石庭の砂紋(Samon)でした。ただ、このデザインを塗装やフィルムコートで施しても、すぐに傷ついたり剥げたりしますし、天板の縁やコーナーにまで装飾しきれません。そこで採用したのが『HP Imprint』テクノロジーです。これはインモールド工法、日本語で成形同時加飾転写システムというのですが、よくわかりませんよね(笑)。説明が難しいのですが、天板パーツの型枠に樹脂を流し込むのと同時にデザインフィルムも挟んで成型してしまうという技術です」
これまでにないデザインと質感が世界中で好評を博し、以降『Shizuku(雫)』『Sekkei(雪景)』とシリーズ化していった。
「そういったグラフィックパターンに注目が集まる一方、さまざまなプロダクトの分野で『メタルの質感がカッコいい』というトレンドが起こりちょっとしたブームになりました。そこで弊社も『プラスチックなんだけれどもメタルっぽい質感』と前出の『HP Imprint』で取り組んだのが、『Hibiki(響き)』『Mebae(芽生え)』『Ibuki(息吹き)』などのシリーズです」
このZEN-designモデルの成功で「どんなものでもデザインできる」と確信を得たという同社。この素地の上にファッションブランド“ヴィヴィアン・タム”とのコラボモデルが誕生する。
「その後、2008年頃からネットブックが流行りまして、よりパソコンのコモディティ化(日用品化)が進みました。弊社もコスパに優れた『HP mini 1000』というネットブックを市場に投入したのですが、そんな中でもデザイン性の高いモデルが求められているだろうと、2009年に『Vivienne Tam Edition』を発売しました。通常コラボモデルといっても、天板デザインを変更する程度なのですが、このモデルではヴィヴィアン・タムからの要望もあり本体を開いた中のモニターやキーボード面まで同じカラーで統一したり、キートップも『HP Imprint』でデザインしたり、付属品やパッケージまでブランドの世界観を貫くなど、細部に至るまでこだわっています」
従来のデザインパソコンとは一線を画す造り込みに注文が殺到し、販売期間終了まで値崩れしなかったという『Vivienne Tam Edition』。以降もHP Miniシリーズでインテリアデザイナー“トード・ボーンチェ”とのコラボモデルや、再びの“ヴィヴィアン・タム”エディションなど話題作を連発。
「『HP Mini 110 by Studio Tord Boontje』では新しい『HP Imprint 3D』テクノロジーを使って、二層のフィルムでいくつものレイヤーがあるように見える奥行きのある天板デザインになりました。またこのモデルから次の『HP Mini 210 Vivienne Tam Edition』含め本体やパッケージ、付属品だけではなく、壁紙やアイコンといったソフトウエア内部にまでデザイナーの世界観を取り入れています」
こうして器だけのデザインから、中身まで含めたトータルデザインにまでこだわりはじめたHPのデザインパソコンシリーズ。
「これまではいわば『見た目のデザイン』を追求してきたわけですが、2009年秋のHP Pavilionではトップカバーやパームレストなど手で触れるところ全てにメタルを使うなど、質感を含めたデザインパソコンのあり方を模索するようになったんです。また、『HP ENVY 17 Special Edition』では、サウンドにもこだわろうと、有名ミュージシャンDr.ドレーが手がけるオーディオブランド『beats audio』とコラボしました」
つまり見た目や質感、サウンドなど、情感に訴えるすべてをデザインするようになった、その一番新しい流れが今回の『HP ENVY 14-3000 SPECTRE』というわけなのか。
「そうですね。特にSPECTREではプレミアムデザインを追求しました。デザインチームは素材についてもガラスの他に、さまざまな自然素材も検討したようですね。結果的に、すっきりとしたミニマムなデザインに、アナログとデジタルの融合というテーマで、高級カメラや高級オーディオにも通じる2トーンカラーが採用されました。ハイスペックなことはもちろんですが、そのスペックに現れない触り心地、サウンドの上質さや、自然な照明パターンなど、多くの人が心地よいと感じてもらえる作品に仕上がったと思います」
事実、現在店頭では約8万円と言われるノートブックの平均購入価格から、ほぼ2倍のプライスにもかかわらず大好評を得ているSPECTRE。確かに昨今デフレで安物志向の世の中ではありながら、一方でカメラやクルマ、腕時計、家具などの高級品が売れているとも聞く。普段自分が毎日触れるものだからこそ、こだわりの本物を手に入れたい。SPECTREはそんな消費者の気分にマッチしているのかもしれない。
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