北原里英が映画主演で後輩に見せる“道”「AKB48が夢の通過点では無くゴールになっているからこそ」
ガジェット通信 / 2018年3月9日 9時30分
アイドルグループ「NGT48」の北原里英さんが今春の卒業発表後、映画主演を果たし、『凶悪』『彼女がその名前を知らない鳥たち』の白石和彌監督がメガホンをとった映画『サニー/32』が現在公開中です。
本作は北原さん演じる藤井赤理が、ネット上で”犯罪史上もっとも可愛い殺人者”と呼ばれ神格化された「サニー」と間違えられ誘拐されてしまう、サスペンスドラマ。雪深い極寒の新潟でピンクのドレス一枚で体当たりで演技する北原さんの姿が話題を呼んでいます。
今回ガジェット通信では、北原さんと白石監督のお2人にインタビューを敢行。白石監督が「北原さんはこれまでの僕の映画で一番体を張っている」と話す、過酷な撮影現場についてなど、お話を伺ってきました。
――映画拝見しまして、何度も驚かされる凄まじい展開でした! 北原さんは映画をご覧になって率直な感想はいかがですか?
北原:まだ客観視出来ていない部分が大きいのですが、映画が終わった後のエンドロールで、共演者の方、スタッフさんはもちろん、ロケ地やケーキ屋さんなど全部知っている名前で。思い出が蘇ってきて感動してしまいました。
――かなり過酷な撮影だったのでは無いかと想像できます。だからこそ喜びもひとしおだったのではないですか。
北原:そうですね。全てのシーンにおいて必死でした。もちろん覚悟を決めて新潟に行ったのですが、実際に撮影が始まると、2階から飛び降りるシーンなど、肉体的に過酷なシーンが思ったよりたくさんあって。撮影しながら、日々気が引き締まっていった感覚があります。白石監督はすごく演者に寄り添ってくださる方だったので、「監督にお任せすれば大丈夫だな」と思って演じていました。
白石監督:これまでの僕の映画に出てもらった人の中で、一番危険なところで芝居してくれましたよ。
――冬の新潟というロケ地の要素も大きそうですね。
白石監督:もともと雪の北国で撮影するのが、夢だったんです。若松孝二監督の助監督をやっているときに、撮影といえば大体、新潟の雪深いところに行っていた印象があって。しかも、僕が助監督になるはるか前には、ピンク映画で、雪原の中、女優さんを素っ裸にして走らせたりするシーンを撮っていたりしていて。それがね、作品としてやっぱり面白いんですよ。「自由だなあ、何とかそういう普通はできないことを僕もやりたいなあ」と思っていたところに、このお話をいただいて。実際に北原さんが一番体を張ってくれていました。その過酷な環境で生き抜くことが、重要だったんだと思います。僕がどれだけ過酷な環境を提示出来るのかというのは工夫した点でもあります。
――裸とは言わないまでも、かなり薄着で雪の中歩いたりしていましたものね。
白石監督:途中でね、(北原が)動かなくなったんですよ。
北原:そうなんです、限界を迎えました。
白石監督:「何で動かないんだろう? もー、カット!」と、とうとうカットかけましたけどそらそうだよね。動けないよね。本当に、そういう感じです。
北原:限界を迎えまして……。人生で一番死に近づいた瞬間だと思います(笑)。
白石監督:いやあ「女優って大変だなー」と思いながらやっていました(笑)。
北原:(笑)。共演のリリー・フランキーさんが、毎日の撮影の後に「お疲れさま、今日も頑張ったね」と声をかけてくださったのが何よりの癒しでした。
白石監督:そうそう、リリーさんが、北原さんがあまりにも俺の言うことを全部やってくれるので、「あいつの言うこと全部聞かなくてもいいんだよ!」って現場でも言っていました。
――そもそも、この役柄を北原さんにお願いしようと思ったきっかけはどんな事ですか?
白石監督:北原里英さん主演で映画を撮ってくれませんかとお話をいただいて。僕はいつかアイドル映画をやりたい思いがあったので、せっかくのチャンスですし、やろうと。オリジナルで映画を作れるのも、今なかなかないですし、「日本のトップアイドルを好きなようにしていいよ」みたいな話ですから。それからですね、北原里英を毎日Twitterで検索して人となりを見ていました(笑)。
「言われたことをまっとうするのがアイドルである」という思い込みもあって。あとは、アイドル映画と言うとホラーのイメージもありましたが、それとはまた違う環境を作ったら絶対この映画のオリジナルなものができるだろうな、という計算はありました。
――なるほど。確かに本作では言われたことをまっとうする、北原さんの姿勢が素晴らしく映画に出ていると思います。
白石監督:北原さんはAKB48で色々なことを経験していますよね。人から見られ慣れているというか、視線を浴び慣れているということを感じます。普段、映画やドラマしかやっていない女優さんだと、観客に見られることや、観客の前に立つことはないじゃないですか。北原さんを見ると、カメラの前に居慣れているのともちょっと違う、やっぱり人前に立ち慣れている感じがあるんですよね。ピエール瀧さんもそうですけど、俳優が本業では無いアーティストの方に出てもらうことがすごく好きなんですよね。
――監督は「いつかアイドル映画を撮ってみたかった」という事ですが、どんなアイドル映画がお好きなんですか?
白石監督:『翔んだカップル』から始まる、相米慎二監督の映画とかも観ていましたし、大林信彦監督の映画ももちろん観ていました。昔の映画は、撮影時間の使い方が今よりも余裕があったので、同じことを50回やらせたりとかしているんです。そこから出てくるものもあるんでしょうけど、今はなかなかできないですよね。
とはいえ、高橋栄樹監督のAKB48のドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズを最初に観た時の衝撃はすごかったです。これまではアイドルって偶像だったり、全然違う世界の人たちの話だったはずが、あれを観た瞬間、すごいスポ根だったので。当たり前に悩んでいて、葛藤している。テレビに出る人って”すでに完成された何か”を見せるものだったのに、AKB48は変えましたよね。
北原:過呼吸になってしまうシーンが映されていたり、すごいですよね。その頃一緒にお仕事をしていたタレントさんも、あのドキュメンタリーに興味を持ってくださって。「DVDちょうだい」と言われたり。私も、この10年間で精神的にも肉体的にも大変な経験をしてきたうえで、今回の『サニー/32』も乗り越えられように思います。
――北原さんはもうすぐNGT48の卒業を迎えますが、この『サニー/32』で後輩達にすごくかっこいい背中を見せられたのではないでしょうか。
北原:この映画の主演が決まった時に、周りにたくさん報告しました(笑)。NGT48のメンバーも観たがってくれている子が多くて。私がAKB48に入った頃よりもグループがどんどん大きくなっているので、昔の様に「AKB48が夢の通過点」というより「AKB48に入るのが夢」となっている子も多いと思います。でも私がこの映画に出た事で卒業後の道の進み方を見せられたらいいなと思いました。
――北原さんの女優魂、メンバーはもちろん、多くの映画ファンにも届くことと思います。今日は楽しいお話どうもありがとうございました!
撮影:周二郎
映画『サニー/32』公式サイト
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