映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』母娘がウォルト・ディズニー・ワールド近辺で暮らす超効果的な“アイロニー”
ガジェット通信 / 2018年5月18日 20時30分
映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』を鑑賞しました。これが下馬評通り映画史に残りそうな傑作で、アメリカの慢性的な貧困&格差社会の問題を、少女の目線を通じてポップな映像で描いていました。本作が傑作である理由は、超予想外のラストをはじめ、さまざまな要素の積み重ねにありますが、実はロケ地があの「フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」近辺というエリア設定も見逃せないです。単にディズニーランドに近いだけじゃなく、フロリダという点がすっごくミソなのです。
映画の舞台は、フロリダ州のキシミーというところ。確かに「フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」(以下ワールドと略します)と近いですが、地図でみるとそうでもない気がします。ディズニー・ハリウッド・スタジオまで約12キロ、ディズニー・スプリングスまでは約9キロ。JR新小岩駅と東京ディズニーリゾートくらいの距離はありそうですが、そのキシミーにあるモーテル「マジック キャッスル イン アンド スイーツ」に、映画に登場する母娘が暮らしています。暮らしているというか、基本は宿泊施設のモーテルなので、日本で言うネットカフェ難民のような感じでしょうか。フロリダのワールド付近のモーテルには実際そういう人々がいるそうで、このモーテルも実際に営業しています。ホテルズドットコムで調べてみると、日本円で一泊5,000円いかない程度。なるほど、その日暮らしの、たまに延滞も許しちゃうウィレム・デフォーみたいな管理人がいれば、暮らせはしそうです。朝食も<コンチネンタル ブレックファスト>と表記が。昨年夏にアナハイムのモーテルに筆者が宿泊した際、朝食だけ盗んでいく地元のチンピラみたいな若者に遭遇したことがありましたが、ハウスキーピングもありなんとか暮らせてしまいそうです。
で、本題の<単にディズニーランドに近いだけじゃなく、フロリダという点がすっごくミソ>ということの理由について。フロリダにはモーテル暮らしの貧困層が実際にいるという事実ももちろんですが、世界中のほかのディズニーランドに比べて、フロリダのワールドは、それ単体で完結しているという特性があります。その敷地面積はJR山手線の内側の1.5倍で、そのなかに複数のパークスやディズニー直営の商業施設、ホテルなどが大集合しています。ゲストは、寝ても覚めてもディズニーの中。その没入観は、東京ディズニーシー・ ホテルミラコスタの比ではないです。どこまで行っても、ディズニー、ディズニーで、徒歩で移動する概念がないほど。すなわち、排他的と言えば排他的で、フロリダのワールドは、まるでひとつの街のように見事に完結しています。ここを目指す各国のゲストも、直営のホテルに泊まるためにお金を貯めまくって遊びに来ます。
これに対してアナハイムは、ちょっと事情が違います。アナハイムは直営のディズニーホテルよりも、ディズニーランド反対側に位置するハーバー・ブルーバード沿いのモーテルのほうが、料金が安い上に実はパークまで近い。深夜までファミレスやコンビニがあって便利ですが、ワールド近辺のモーテルに観光客がいない理由は、皆、直営に泊まるからなんですね。映画に出てきたカップルがハネムーンで、この安モーテルに泊まることになり、けんかをしていましたが、それはもう当然と言えば当然なのです。つまり、フロリダのワールドは映画の母娘にとっては近くてもっとも遠い場所として、超効果的なアイロニーを生み出す枠割を担っているというわけです。
もともとウォルト・ディズニーは、アナハイムに地球上で最初のディズニーランドを建設した際、その近所にまったく関係ない企業によってモーテルを作られてしまったことを嫌がったとされています。それを踏まえてフロリダにワールドを建設していて、最近ではミニーバンという公式の移動手段もワールド内に新たに導入。Uberよりも圧倒的に高い値段設定ではあるものの、Uberでは入りきれないエリアにも行けるようにするなど、ウォルトの遺志を継承するように没入観の確保をしているところでもあります。これはディズニーにとってみれば、すっごく重要なことです。アナハイムにおいては現状、その課題はクリアできない問題になっています。
それゆえ母娘の社会からの疎外感が、より一層際立つわけです。社会の外側にいる感が強い。別にディズニーを悪として描いているわけではないですが、アナハイムがロケ地だとしたら、効果は薄目だったでしょう。完全なる蚊帳の外ではなく、モーテル自体がゲストにちょっと役立ってる感もあるので、共存感が出てしまうわけです。アナハイムに行ったことがある人はわかると思いますが正直、直営よりも安くて便利だったりするわけで(笑)。サブプライムローン、貧困から抜け出せない人々を描くにはディズニーは映画的に対照的な存在になりやすいけれど、アナハイムではパンチが弱かったのでしょう。それと後もう一点、フロリダがロケ地で効果的だった理由がありますが、それは映画を観ればわかるかなあと思います。
それにしてもアカデミー賞では、作品賞にノミネートさえされなかったんですよね。謎。もう本当、アカデミー賞とか何の意味があるんじゃと思ってしまいますが、映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』、ワールドの存在感を今一度アタマに入れていただいてぜひご覧になってください。
※トップ画像は、「フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート」を移動する「ミニーバン」。
![](https://api.getnews.jp/thumb/ext/http://rensai.jp/wp-content/uploads/2018/05/640-1.jpg)
映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
(C)2017 Florida Project 2016, LLC.
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: ときたたかし) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
―― 会いたい人に会いに行こう、見たいものを見に行こう『ガジェット通信(GetNews)』この記事に関連するニュース
-
海外のディズニーパークを満喫したい人の強い味方「Disney PARKS PERFECTGUIDEBOOK 2024-2025」5年ぶり、7月23日に最新版が登場!
PR TIMES / 2024年7月19日 17時45分
-
「ディズニー・アニメーション・イマーシブ・エクスペリエンス」<富山>【会期】2024年7月20日(土)~10月6日(日) オリジナルグッズを一部紹介 ラッピングバス&トラムも運行!
PR TIMES / 2024年7月12日 13時15分
-
“ディズニー大好き”浅倉大介、海外ディズニー注目の新アトラクション「ティアナのバイユー・アドベンチャー」を満喫
ORICON NEWS / 2024年7月10日 8時40分
-
若き日の「ふしぎの国のアリス」ハートの女王&シンデレラ、そして娘たちの豪華4ショット! 「ディセンダント」新作、新場面写真8点
映画.com / 2024年7月5日 16時0分
-
「低所得者なのにディズニーに行こうとするなんて…」いつから夢の国は「格差社会の象徴」になったのか
オールアバウト / 2024年6月28日 21時5分
ランキング
-
1意外すぎる“一重→二重への大変身メイク”に「ええええ! アイプチせずに、、すごい」「自然。上手すぎ!」 「はるかぜに告ぐ」とんずさんのメイクテクに称賛相次ぐ
ねとらぼ / 2024年7月22日 19時30分
-
2超コンパクト&強力光搭載!耐久性とデザイン性にもこだわった懐中電灯「ZERO FLASH 1200」
IGNITE / 2024年7月22日 10時19分
-
3「画期的!」「すげえ」 テレ東が特番放送→新聞の番組表に描かれた“まさかのデザイン”に驚き
ねとらぼ / 2024年7月22日 19時26分
-
4シリーズ続編で「化けた」ゲームと言えば?
Game*Spark / 2024年7月23日 12時45分
-
5「やめて……」Amazon公式の誠実対応のせいで経済事情を全世界に公開 「悲しい気遣い」「傷口に砂糖」
ねとらぼ / 2024年7月22日 20時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)