火山と氷山が共存するマンハッタン(宋文洲のメルマガの読者広場)

ガジェット通信 / 2018年7月24日 15時0分

今回は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。

火山と氷山が共存するマンハッタン(宋文洲のメルマガの読者広場)

ニューヨークには昔から若者を組織し貧困層の人々を支援してきたYSOPというボランティア組織があります。昨年、娘の学校が団体でこの組織を通じてボランティア活動に参加しました。その後の娘の経験と感想を聞いた私は、ぜひ息子にも参加してほしいと思いましたが、あいにく息子の学校はそういう活動を組織していませんでした。YSOPは未成年の個人を受け付けていないため、仕方なく私と妻と息子の三人で「Song Family」という小さな団体として参加を申し込みました。

この仕組みを簡単に説明すると、仲介者のYSOPに費用を払って一週間の奉仕労働プログラムを提供してもらうのです。プログラムはだいたい5日間の日程で構成され、朝から教会や老人ホームに行き、食品の加工と配布、厨房の手伝い、食事のサービスなどの無償労働を提供し、夕方にYSOPのオフィスに戻り総括やデスカッションを行います。

一度ホームレスと共に夕食をする機会も作っていただきました。もちろん私達がホスト役として料理を作り、ホームレスを招待し、テーブルサービスを行い、ともに会話とゲームを楽しみ、最後にお客を送り出して後片付けと掃除もやって帰路に着きます。

家族単位でしかも遠いアジアからの参加者は宋ファミリーだけだったため、私達はオハイオ州から来た農家の子供の参加者たちに組み入れられ、彼らと共に活動するようになりました。ニューヨークに滅多に来ない純朴な子供やその親達と共に働くのはとても楽しかったです。

何よりも、息子にボランティアさせるために仕方なく参加した私でしたが、思いもよらない良い体験ができ勉強になりました。

一番印象的だったのは出会った多くのホームレスは働かない人やお風呂に入らない人達ではなく、普通にユーモアがあり感受性豊かな人々です。彼らが普通と違うのは単に家を持てないだけです。夕食に来てくれた同じ年(55歳)の男性と身上話を交換してみました。彼はハリケーンで5年前に家と家具を無くした上、2年前に奥さんも癌で亡くしました。彼自身も病気で稼ぎのよい仕事ができないため、家を持つことを諦めました。

政府や教会が提供している寝るだけの場所はホームレスシェルターというのですが、大きなホールにベッドだけが並ぶ文字通りの寝るだけの場所です。プライベートな空間はゼロです。長くこのような生活を続けると健康な人間でも健康を失います。それに彼らは米国の現在の医療システムの中ではとても病気を治す余力はないと思います。

一番ビックリしたのは好景気と言われる中、ここ数年ニューヨークのホームレスは増え続け、1930年代の大恐慌以来の数に膨らみました。正確な統計は取れていないのですが、最低6万人以上のホームレスがニューヨークにいます。その中になんと2万人以上の未成年ホームレスがいます。家族単位でホームレス生活している人数は1万5千人もいます。

統計には氷山モデルが多いのです。ホームレスが史上最多であれば、家があるものの、生活に苦しんでいる人達も史上最多になっているはずです。案の定、国連の調査によると米国の貧困者は4000万人に達しているのです。その中には一日の生活費が1.5ドル未満の極貧層1850万人が含まれています。

しかし、私達がボランティアしている現場のすぐ近くにはニューヨーク証券取引所があります。あの中の掲示板は史上最高の数字を弾き出しています。失業率が低く、労働価格が上昇し、企業収益も好調だというのです。この狭いマンハッタンにまさに火山と氷山が同時に存在し、どちらが米国経済の本流なのか、私には分かりません。しかし、ますます増大した矛盾の背後に何らかの危機が潜んでいるに違いないと思いました。

昨夜はタイムズスクエアを散策しました。あの手この手で観光客を騙す手口は相変わらずですが、路上に並んでいる偽物カバン屋の多さにびっくりしました。警察が物々しい顔をしながら偽物カバン屋の横を素通りする風景もまさに火山と氷山が共存する風景でした。

執筆: この記事は宋文洲さんのブログ『宋文洲のメルマガの読者広場』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2017年07月24日時点のものです。

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