『ペンギン・ハイウェイ』原作者・森見登美彦&石田祐康監督インタビュー「夏休みの終わりにこんな映画を見たら一生忘れないと思います」
ガジェット通信 / 2018年8月22日 19時0分
「夜は短し歩けよ乙女」「有頂天家族」などで知られる、森見登美彦先生の原作をアニメーション映画化した『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日より公開中です。本作の監督を務めたのは、『陽なたのアオシグレ』の石田祐康さん。本作は石田監督が所属し、アニメファンから大きな注目を集める「スタジオコロリド」の第1回長編作品です。
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毎日学んだことをノートに記録している勉強家の小学4年生「アオヤマ君」が、アオヤマ君と親しい「お姉さん」や友人と共に、”街に突然大量のペンギンが出現する”という不思議な出来事の謎を追う、みずみずしく冒険心たっぷりのSF作品となっています。
多くのファンが魅了されてきた”森見ワールド”を、若き才能・石田監督はいかにして映像化したのか? 今回はお2人にお話を伺いました。
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――本作大変楽しく拝見させていただきました。森見先生はご自身のブログにて「これまでにも経験のあることだが、森見登美彦氏は自作の映像化に馴染むまで時間がかかる」と書かれていましたが、最初は映像化に抵抗があったのでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/Tomio/20180615
森見:正直に言いますと、企画のお話を聞いた時は「大丈夫かな?」という気持ちが強かったです。これまでの作品も全て大切ですが、特に「ペンギン・ハイウェイ」は僕が子供の頃にこだわっていた原点の様なものなので、人様に預けて良いのか慎重になっていた部分があります。
石田:僕も原作ものが初めてだったので、企画が立ち上がった時は、こんな面白い作品を、しかもこんな大きな規模で、しかも初の長編で、自分が作れるのだろうか?と不安がありました。でも、僕自身森見先生の作品がすごく好きでしたし、「ペンギン・ハイウェイ」は他の作品とは、読んだ感じが少し違う感じがして、自分がアニメーションで表現したい事と近しいというか。こういうとおこがましいのですが、自分がアニメ化するなら向いていると思ったんです。絵にしがいのある描写が多くて、美しく、楽しく、おかしみを持って描けるだろうと感じました。
森見:最初は、原作小説の明るい面と悲しい面、楽しいだけでは無く暗さや不気味さもある要素をアニメーションとしてどのように表現されるか想像出来なかったんです。でも、石田監督が送ってくださった企画書からひしひしと熱が伝わってきたので、お願いしますと。
石田:ああ〜、本当に良かったです、ありがとうございます(監督、恐縮しきり)
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▲『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦/角川文庫)
――森見先生の作品は何度かアニメ化されていますが、石田監督が森見作品を知ったのは小説が先ですか?
石田:大学生の頃、「森見登美彦の小説が面白いよ」と勧めてくれた人が何人もいたんです。それがきっかけで「四畳半神話大系」や「夜は短し歩けよ乙女」など次々と読んでいって。僕自身が京都精華大学に通っていて、大学時代を京都で過ごしているので、京都の光景とか街並みとかすごく浮かんできて。森見さんの京都小説のおかげで自分の京都生活に彩りを添えてもらったような気がします(笑)
森見:それは良かった(笑)。そういえば、『ペンギン・ハイウェイ』の舞台は僕が育った奈良の街がベースになっているのですが、関西の都会ではない普通の住宅街というのが見事に表現されていて、それが嬉しかったです。
僕は子供の頃、この普通の住宅地のどこかに、世界の果てみたいなものがあるんじゃないかと妄想していて、主人公のアオヤマ君は、「僕が子供の頃に見ていた世界が見える人」なんです。あの時に見えていた風景や妄想を小説に描きたい気持ちがずっとあって、小説デビューする前からずっと試みていたのですが、どうやって書けばいいのかなかなか分からなかった。自分の思うような、キラキラした、ドキドキした不思議な感じにならないんです。色々考えて、「じゃあどんな主人公ならばあの風景を再現できるのか?」と発想を逆転することで、アオヤマ君の像が浮かび上がってきたんです。
石田:森見先生の原体験の様なものがつまっているからこそ、僕も他の作品とはまた違う面白みを感じたのかもしれません。先生の「僕が子供の頃に見ていた世界が見える人」というのがすごく素敵な表現だなと思います。僕はアオヤマ君の瞳を”高感度センサー”のつもりで描きました。アオヤマ君の目には、世界がクリーンに映っていて、自分が気になるものをとてつもないレンジと周波数帯でパッと感度良くキャッチする。アオヤマ君ってそういう子だろうなと思って描いてみたら、なんだか自分の中で腑に落ちました。
森見:そう感じ取っていただいて嬉しいです。実は僕の父は、僕の作品では「太陽の塔」と「ペンギン・ハイウェイ」しか好きじゃないんです(笑)。
石田:ええっ!? そうなんですか?
森見:『夜は短し歩けよ乙女』とか、全然好きじゃないみたいです(笑)。なので、父はこの映画化をすごく楽しみにしていて、絶対に映画館で観るとはりきっていました。
――お父様ももちろん、この映画を大スクリーンで観たら、絶対忘れられない夏の思い出になると思いました。
森見:きっと子供達は、夏休みの終わりにこんな映画を見たら一生忘れないと思います。「あれはなんだったんだろう?」って、ずっと心に引っかかるはず。「自分の周りに不思議なものがあるんじゃないか?」と考えている子供達に観て欲しいです。僕が見たかった風景や妄想をしっかりと映像化していただいているので、子供の頃の僕が見たらすごく衝撃を受けると思う。
石田:少年時代に観て今も心に残っている好きな映画って、楽しいだけではなくて怖いシーンがあったり、謎が多いものだったりするんです。『ペンギン・ハイウェイ』もそんな感覚があると思います。原作小説を読んで「ここがステキだな」「こういう絵が見たいな」と思ったところをシンプルに映像化して作ったつもりだったのですが、潜在的に好きなものって、子供の頃からそんなに変わっていないのだと思います。子供達はもちろん、元子供だった大人達にも楽しんでいただけたら嬉しいです。
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――ちなみに、石田監督は現在30歳ですが、森見先生が『ペンギン・ハイウェイ』を執筆されたのも30歳前後ですよね。
森見:確かにそうですね、言われてみれば!
石田:わあっ、そんな30歳でこんなに素晴らしい小説を……(監督、恐縮しきり)
森見:いやいや、監督だって素晴らしい映画を作っているじゃないですか。次の楽しい作品も期待しています。
石田:こちらこそ、これからも楽しみにしております!
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
『ペンギン・ハイウェイ』大ヒット上映中!
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https://getnews.jp/archives/712990
(C)2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
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