あだち充『MIX』スタートで電子書籍の未来を考えてみた
ガジェット通信 / 2012年6月18日 16時30分
あだち充の名作漫画『タッチ』の、なんと26年後が舞台の続編『MIX』がスタートするということで先日話題になったが、気がついたらあっという間に掲載誌『ゲッサン』6月号が売り切れてしまっていた。
筆者はあだち充といえば『タッチ』よりも『みゆき』派であり、なので話題の新連載を読み逃したところで別に決して強がりじゃなくこれっぽっちも悔しくなんてないのだが、世間的には地団太を踏んでいた方が相当多かったらしく、現在発売中の『ゲッサン』7月号及び『週刊少年サンデー』28号に『MIX』第1話がまるごと再掲載されている。
漫画雑誌は基本的に最新号しか店頭に並ばない。しかしその中身の大半は連載作品であり、たまたま目にしたのが面白そうだからと単行本に手を伸ばしても、その時点での最新号掲載回と、その時点での単行本最新巻との間に、たいていは何話分かのブランクが生じている。つまり、漫画喫茶へ足を運んだり古本屋を探したり、あるいはネットで違法にデータを入手したり(もしかしたらそれが原因でお縄になったり)、といった手間やリスクをかけないと、ブランク分をすぐには読むことができないわけである。
そういう意味で今回の『MIX』第1話の再掲載は、前号を買いそびれてしまった者にとって大変ありがたく、できれば他の作品でも常時同様の措置を行うべきといいたいところだが、そんなことをしていたら雑誌が分厚くなるばかり。まったく現実的ではない。
そこで、こういうときにこそ電子書籍の出番なのではないか。バックナンバー全号を電子書籍化する必要はまったくない。未単行本化分が掲載されているバックナンバーだけ電子書籍販売してくれればいい。これなら物理的な場所はとらないで済むし、最新巻と最新号の間を埋められるし、売れれば儲かるし、きっと紙媒体の最新号より安くなるし、いいことづくめではないか。また、掲載作品がひととおり単行本に収録されたバックナンバーは順次絶版。これにより以後単行本が売れる。我ながら実に素晴らしいアイデアだ。
というか、『みゆき』派を自負しながらも『タッチ』の続編という魅力に抗えず、しかし入手し損ねて地団太踏んでいたところに出た『ゲッサン』7月号を喜び勇んで発売日に買ったら、単行本で読んでいる島本和彦『アオイホノオ』の第50話が掲載されているのだが、しかし先日刊行されたばかりの最新巻に収録されているのは第48話までなのである。あだち充を一方的にライバル視する漫画家志望の主人公の身に第49話で何が起こったのか、中途半端に先を見ちゃったら気になって気になって仕方ないのである。『アオイホノオ』の単行本は各巻6話収録なので、ということは少なくともあと4カ月待たないと次の単行本は出ない=第49話を読めないってことなのである。なんだよもう!
そんなわけで、電子書籍(特に漫画)普及の道は、単行本より掲載誌の直近のバックナンバーにある、と思います。
(田中 元)
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