廃墟に集まった22人のダンサーが“ドラッグ”に飲まれていく狂気……映画『CLIMAX クライマックス』ギャスパー監督インタビュー
ガジェット通信 / 2019年11月1日 21時30分
第71回カンヌ国際映画祭「監督週間」で初上映され、賛否両論真っ二つに分かれた中で受賞を果たした、ギャスパー・ノエ監督作『CLIMAX クライマックス』が本日11月1日より公開中です。
『カノン』『アレックス』『エンター・ザ・ボイド』『LOVE3D』など作品数は多くはないものの、新作のたびにその実験的な試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた鬼才ギャスパー・ノエが3年ぶりに放つ最新作。演技経験のないプロダンサーによる度胆をぬくパフォーマンスとダフト・パンクらが手がけたエレクトロミュージック、そして、全編を通して多用される長まわし撮影でドラッグにより次第に充満していく”地獄絵図”を鮮烈に映し出しています。
今回ガジェット通信では、映画のPRの為に来日していたギャスパー・ノエ監督にインタビューを敢行。作品について色々とお話を伺ってきました。
――本作拝見しまして、監督にしか作ることが出来ないだろうという壮絶な世界観が魅力的でした。まず本作のアイデアはどんな所から得たのでしょうか?
ギャスパー監督:本作のアイデアはいきなり来た。ある日ヴォーギングダンスを見に行ったらすごく圧倒されて、数人のダンサーと知り合ったんだ。それで、ダンスを軸として映画を作りたいと思ったのだけど、昔ダンサーたちが山奥の廃墟で閉じ込められた事件があって、それを基にしたドキュメンタリーフィクションにしようと思ったんだ。それで、プロデューサーなどに相談して、「低予算なら良いよ」とOKをもらったので、ものすごいスピードで作ったんだ。1月に撮り始めて5月に完成したんだよ。
――そんな、実在の事件があったのですね!
ギャスパー監督:昔に、テレビで見た記憶があったんだ。すごく小さいニュースだったんだけどね。それをそのまま映画化すると、許諾も大変だし、制約もあるのであくまでベースにした。この映画では「”グループ”というのは一緒に何かを作ることが出来る。でも、壊すことも出来る」という事を伝えたかったんだ。
――なるほど。その「一緒に何かを作ることが出来る。でも、壊すことも出来る」というのは、監督ご自身が常々感じていたのですか?
ギャスパー監督:作っていた時は意識していなかったんだけど、カンヌでジャーナリストの取材を受けた時、「この映画はバベルの塔の様ですね。作るよりも壊すほうがうんと簡単だから」と言われ、そうだなと思いました。人間は極限状態になった時にどんな行動をとるのか。映画『タイタニック』もそうだけど、映画としては観ていて楽しい部分もあるけど、実際にはとても恐ろしい。
――本作の登場人物たちは、2人の女優をのぞき、皆ダンサーですね。演技の経験は無いと思うのですが、強烈な表現力を感じました。
ギャスパー監督:演技の経験の無い彼らにセリフを与えて覚えてもらっても、自分が撮りたいものは撮れないと思ったんだ。だから、ダンサーそれぞれの特徴を役に活かした。ざっくりとした指示をして、それに対する反応や動きを撮っていったんだ。脚本は2、3ページでほぼ無い様なものだったよ。
この映画に出演してくれたダンサーの多くはパリの郊外に住んでいて、あまり豊かじゃない生活を送っているんだ。この映画を成功の足掛かりにしたいと思っているから、とてもとても真剣だ。いつもの映画の現場と違ってアルコールを飲んだり、気を緩めたりしない。皆の競争心が映画の緊張感にもつながったんじゃないかな。
――オープニングのシーンで、モニターの横に『サスペリア』など映画のVHSが飾られていますね。
ギャスパー監督:映画の舞台が1995年だから、テレビのサイズが現代と違うんだよね。映画モニターの横のスペースが空いているのが気になったんだ。どうしようかと思って、自宅から私物を持ってきたよ。このタイトルが映画の内容に何かの伏線を与えているわけではないのだけど、好きな作品なので少なからず影響を受けている作品だよ。
――監督の好きな作品というのは、映画ファンにとっても気になるポイントだと思います。監督が映画を撮り続けるモチベーションはどこにありますか?
ギャスパー監督:とにかく楽しいんだよね。撮影も好きだし、利益が出れば次の映画も撮れるし。『エンター・ザ・ボイド』は6年かけて作った映画なのだけど、短期間でも長期間でもどんな映画であっても一番時間がかかるのはプロモーションで、一番大変なのは資金集め。そういった苦労を乗り越えて映画がまた撮れる瞬間というのが、何よりも楽しいんだ。
――今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
『CLIMAX クライマックス』
11月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
R-18
【ストーリー】理性を失った人間たちの狂った饗宴、その行く末とは――
1996年のある夜、有名な振付家の呼びかけで選ばれた22人のダンサーたちが人里離れた廃墟に集まり、アメリカ公演のための最後のリハーサルをしている。彼らの集まる建物には電話がない。山奥のために携帯も通じない。そして、外では雪が降っている。公演前の最後の仕上げともいうべき激しいリハーサルを終え、打ち上げパーティを始めたダンサーたちは、爆音ミュージックに体を揺らしながら、大きなボールになみなみと注がれたサングリアを浴びるように飲んでいた。
しかし、そのサングリアにはLSD(ドラッグ)が混入しており、ダンサーたちは、次第に我を忘れトランス状態へと堕ちていく。エクスタシーを感じる者、暴力的になる者、発狂する者・・・・一部の者にとっては楽園だがほとんどの者にとっては地獄の世界と化していくダンスフロア。
一体誰が何の目的でサングリアにドラッグを入れたのか?
そして、理性をなくした人間たちの狂った饗宴はどんな結末を迎えるのか・・・?
(C)2018 RECTANGLE PRODUCTIONS-WILD BUNCH-LES CINEMAS DE LA ZONE-ESKWAD-KNM-ARTE FRANCE CINEMA-ARTEMIS PRODUCTIONS
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