どうして日本人の賃金だけ下がり続けてるの?と思ったときに読む話(Joe’s Labo)
ガジェット通信 / 2020年2月12日 13時0分
今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
どうして日本人の賃金だけ下がり続けてるの?と思ったときに読む話(Joe’s Labo)
先日、「実はここ30年間で日本人の賃金だけが下がり続けている」という衝撃の事実が複数のメディアで報じられ大きな波紋を呼んでいます。ワイドショーでも取り上げられたので驚いた人は多いんではないでしょうか。
【参考リンク】日経新聞「米国では年収1400万円は低所得」が大炎上
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/12/19375555.html
【参考リンク】OECD加盟国で日の実質賃金が「一人負け」状態に…玉川徹氏「先進国じゃない」
https://snjpn.net/archives/171762
筆者自身は知ってはいましたけどこうやってあらためて諸外国とグラフで比較されると「あれ内戦でもやってたっけ?」と思うくらい見事な下がりっぷりですね(汗)
これをうけてネットでは早速「全部デフレが悪い」だの「安倍政権と財界の陰謀だ」だのといったトンチンカンな議論がわいているようです。
なぜ日本人の賃金だけが一人負け状態なのか。そして、その中で生き残るにはどうすべきなのか。キャリアデザインする上でも非常に重要なテーマなのでまとめておきましょう。
下がるべくして下がった日本人の賃金
日本人の賃金が下がり続けている理由はいろいろありますが大きく分けて以下の3点です。
1.バブル崩壊後に未来をリストラしたから
日本では解雇はもちろん、一度上げてしまった賃金の引き下げにも高いハードルが科されます。最近でこそ力業でやっちゃう企業も出てきていますが、90年代はタブーでしたね。そこで不況時にはとりあえず20~30代の昇給を抑制したわけです。
すると10年くらいたって高給取りの50代が定年退職するとあら不思議、全体の賃金カーブが下がって労働分配率も低下することになります。筆者自身、90年代にこの「未来をリストラする作業」に携わっていたのでよく覚えていますね。
「こりゃあ21世紀は質素倹約が流行って高額なものが売れない時代になるだろう」ということはなんとなく予想していました。
2.定年が伸びたから
80年代までは55歳だった定年が、90年代には60歳に、そして21世紀になってからは実質的に65歳に延ばされています。すべて「あのさあ、年金財政が厳しいから企業で面倒みといてよ」という政府の強い意向で一方的に押し付けられた格好です。
で、当たり前の話ですが長く雇わせるほどに賃金は下がります。その間のリスクを織り込まないといけないからですね。意外と知らない人が多いんですが解雇しやすいほど賃金は上がるんです。
たとえば、あなたが経営者だとして、まったく同じ能力、スキルのA氏とB氏を採用するとします。A氏は毎年年俸交渉して場合によっては解雇も可、でもB氏は原則20年間雇い続けるとすると、それぞれにいくら払うでしょうか。
筆者の感覚だとA氏に1千万円だとするとB氏はせいぜい600万円くらいでしょうね。こんな感じで、定年が伸びていくたびに見えないけれども強烈な賃金抑制圧力が日本人全体の賃金にかかってきたわけです。
あ、そういえば安倍ちゃんがつい先日「70歳(古希!)まで会社に雇わせます」宣言してたので、もう一段の引き下げはあるでしょうね。
【参考リンク】70歳までの就業確保、企業の努力義務に 厚労省決定
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54171280Y0A100C2EE8000/
3.社会保険料が上がり続けたから
平成元年は17%ほどだった社会保険料ですが、現在は30%近くにまで達しています。この流れに変化は見られず、もはや30%突破は時間の問題とされていますね。
【参考リンク】迫る会社員保険料30% 健保連「22年危機」と改革訴え
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49560930Z00C19A9EE8000/
と書くと「でも実際は労使折半なんだから半分は会社が負担してくれてるんでしょ?」と思う人もいるでしょう。実際には会社から見れば社会保険料もすべて含めて“人件費”なので、社会保険料の高騰は賃金を圧迫するわけです。
【参考リンク】サラリーマンが目先のベアより社会保障の抜本改革を要求すべき理由
http://jyoshige.com/archives/7212932.html
それにしても、サラリーマンってホントに心の広い人たちだなっていつも感心してますね。消費税はなかなか上げさせない一方で社会保険料のハイペースの引き上げはスルーしてるわけで。
まるで「お年寄りや自営業者、ニートに負担させるわけにはいかない。俺たちのランチなんてワンコインで十分、日本の社会保障は俺たちが支えるぜ」って言っているように筆者には見えますね。実際に言ってる人に会ったことはないですが。
あと消費税の話をすると高確率でわいてくる「消費税は逆進性があるし景気に悪影響だからダメだ」みたいなことをいう人も不思議ですね。それって「サラリーマンは人間以外の何か」って言ってるようなもんなんですが、そういう人たちの頭の中はどうなってるんでしょうかね。
というわけで、まとめると終身雇用縛りというルールの中で一方的に定年伸ばしたり社会保障給付のツケを保険料という形で押し付けてきた結果、日本人の賃金は一人負け状態になったわけです。
なので処方箋としては解雇規制緩和して定年制度そのものを廃止、消費税は思い切って20%くらいに引き上げたうえで社会保険料を2000年くらいの水準に戻すということになります。増税幅を抑えたいなら高齢者の窓口負担引き上げなんかもアリでしょう。
今回の一件に関してはとくにリベラルから「安倍政権の失政が原因だ」みたいな批判が上がってますが、完全にアホですね。じゃああんたら上記の処方箋やる気あんのかと。全然無いでしょ(笑)
むしろ共産党とか立憲民主党とか、上記の処方箋の逆方向にアクセル吹かすだろうから政権交代しちゃったらもっと賃金下がるでしょうね。
期末試験で30点だった安倍ちゃんを、赤点とって留年確定した人たちが批判しているようなものなんでスルーしといてOKです。
以降、
今後想定される2つのシナリオ
発想の転換でバラ色のデフレ社会を生きる
※詳細はメルマガにて(夜間飛行)
「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」『夜間飛行』
http://yakan-hiko.com/joe.html?PHPSESSID=2lh2i8id4bkas4012essktesm7
執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2020年2月11日時点のものです。
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