レンタルおやじインタビュー:「ほとんどが人の愚痴を聞くことです」
ガジェット通信 / 2020年2月14日 14時30分
最近テレビ東京などでもドラマ化されている数年前から話題の“レンタルおやじ”。
僕も一度体験取材をしてみようかなと思い、登録だけはしてみたが、一体どんな仕事内容なのか気になって仕方がない。
そこで、現役のレンタルおやじとして時給1,000円の副業で稼ぐ藤田康夫さん(仮名/48歳)を紹介していただき、実際にその内容を聞いてみたのですが、これまた実際は大変なお仕事のようで……。
実際のレンタルおやじの業務というのは一体どのようなものなのでしょうか……。
本当に“ストレス社会”を実感
丸野(以下、丸)「実際に働いてみてどんな感じだったんですか?」
藤田さん「僕は、関西のレンタルおやじに登録料を支払い、登録をして、仕事が休日の土日祝のみ活動をはじめたんですが、家具の位置を変えたりするちょっとした力仕事とほとんどが愚痴を聞くことになりますね。本当に、人は学校や職場で毎日ストレスと戦っているというのを実感しますよ。自分の伴侶のことや子供のこと、恋人への不満、学業や就職の不平不満、みんないろんな問題を抱えて生きているな、と」
丸「どのようにこの仕事を知ったんですか?」
藤田さん「雑誌で特集されていて、興味を持ちました。で、登録を……。カラオケに同行したり、ショッピングに同行したり、犬のお散歩を手伝ったり、家具の組み立てをしたり、一緒に飲んだり、お墓の掃除に行ったり、一緒にディナーやランチをしたり、お葬式に参列したり……。ああ、犬探しの依頼というのもあったかな。まぁ言ってしまえば、便利屋ですね。変わったのでは、有名タレントが逮捕されたときの傍聴席の列に並んだりもしましたね。ああ、それとドラマのエキストラがどうしても足りないからという理由で呼ばれたこともありました。でも、基本的には愚痴をよく聞きます。この仕事は、口答えしてもダメ、説教なんてなおダメ、じっと相手の話に耳を傾けているだけなんです。以前は、関西の方のレンタルおやじに登録していたんですが、関西人はまだサッパリとした愚痴ばっかりだったのが、仕事の都合で関東へ行くと、悩みが重苦しくなっていきますね。聞いているこっちが参るものもあります……」
丸「コツとかあるんですか?」
藤田さん「“頑張っている”と主張する人は認めてあげて、沈んでいる人には一緒に同調してあげる感じでしょうか……。リピーターも多いですよ。初めは“それ、違うんじゃないですか”なんて言いかけることもあったけど、今は違います。近しい人間には話せなくても、赤の他人にならなんとでも素直に話せる。逆に他人だから……ね。元々僕は、証券マンだったので、投資家の話をよく聞いていたんです。本来聞き上手と言いますか……。年間3万人もの自殺者を出す国ですからね、誰かの心の支えになることが大事なんじゃないかなと」
困ったこともある
丸「なにか困ったことやトラブルに巻き込まれたことはありますか?」
藤田さん「ありますよ。女性がやっぱり多いですよね。女の人は拠り所を求めていますから、自分の心の隙間に都合よくどんな男でも当てはめようとするんです。自殺を考えている女性からの連日かかってくる電話や一緒に死んでほしいという女性、財産をやるから一緒に住もうというお年寄りとかトラブルは常にありますね」
丸「大変ですね、やっぱり」
藤田さん「キツかったのは、ゲイの人にストーキングされたことですかね。電話がしょっちゅう鳴って、弁当の差し入れだとかいつも入って、その程度ですけど……。もうなくなりましたけど、一時期は悩みました。でも、ずっと話を聞き続けて、最後は丁重にお断りしました」
丸「まさに“話を聞くこと”で、すべてを解決するというわけですね」
さらに続く相談の数々
藤田さん「でも、自分の手には負えないような愚痴もありますよ。母ロスというのでしょうか、死んだ母親に会いたいという50がらみの男性客や生活苦の母親が家族を道連れに心中したいという愚痴とか……。止めるのが大変です。やっぱり自殺したいという愚痴が多いということですかね。暗い仕事ですよ、そんなに派手な仕事が舞い込むことはたまにしかありません」
丸「それは、ちょっと精神的に病んでしまうかもしれないですね」
藤田さん「他の人とは違い、僕だけなのかもしれませんが、メンタルが弱い人はやめておいた方がいいかもしれませんね」
■
“レンタルおやじ”は、知らず知らず人の心の澱みをすべて背負い、生きていっているのかもしれない。
藤田さん「丸野さん、何でも話してくださいよ。1時間1,000円でどんな愚痴でもお聞きしますから……。よかったら、話してみてください」
僕は、彼の言葉で日頃抱えている鬱憤を語ってしまいました。
え? ライターの僕がどんなことを話したかって? そんなこと絶対に言えませんよ。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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