ルームシェア生活を送る2人を通して描く女性の葛藤 映画『Daughters』津田監督に聞く
ガジェット通信 / 2020年9月25日 12時0分
東京・中目黒を舞台に、ルームシェア生活を送る2人の女性を主人公に、妊娠、そしてシングルマザーとして出産するという人生の決断を通して、友情、仕事、家族、過去への固執と現実など、現代の女性の揺れ動く心情にフォーカスしたヒューマンドラマ、映画『Daughters』(ドーターズ)が公開中です。
妊娠した友人をそばで見守る主人公「小春」を、女優やファッションモデルとして活躍する三吉彩花さん、小春のルームメイトであり、悩みながらもひとりの女性から“母親”になる決断をする「彩乃」を阿部純子さんが演じます。
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脚本・監督を務めるのは、本作が初の長編作品となるファッションイベント演出家・映像作家の津田 肇(つだ はじめ)さん。同じ速度で歩んでいくと思っていた友人同士の、苦しくも美しい約10ヶ月の物語を繊細に、スタイリッシュに描きます。津田監督に作品へのこだわりについてお話を伺いました。
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――本作、大変楽しく拝見させていただきました。四季折々の情景が変化していく部分で、撮影にたっぷり時間をかけたとても贅沢な映画だと、まず驚かされました。
津田:2019年の3月にスタートして、6月、10月と3回に分けて撮影したのですが、贅沢ですよね。今回が長編作品初めてだったので、最初は何も考えずに脚本を書いていて、ラインプロデューサーとかは本当に大変だったと思います(笑)。
――苦労もあったということで、でも本当に中目黒の四季が美しくて、その景色も映画の登場人物の一つだなと思いました。このお話には津田監督ご自身の経験が活かされているとのことですが。
津田:そうなんです。学生時代から男2人のルームシェアというライフスタイルにこだわっていた経験があり、そういう生き方を作品の中に活かしてみたいと思いました。なのでこのルームシェアをしている同士の空気感とか、自分の体験ゆえの部分もあります。そして、妊娠と出産にむけての心情を描いたのも、自分自身が20代を仕事中心に過ごしてきて、その時に奥さんが妊娠して、女性の仕事と子育ての難しさを考えるきっかけになりましたし、ルームシェアと同じく妊娠による変化についても作品にしたいと思いました。
――監督ご自身の経験が活かされているからこそのリアルで自然な空気感なのでしょうね。監督は大規模なファッションイベントの演出家・映像制作をされてきたわけですが、今回長編映画に挑戦しようとした理由は何でしょうか?
津田:シンプルに、「映画が好き」というのがあります。昔から物を作る事が好きなので、今もやっているイベント制作も好きで楽しく仕事させていただいています。でもやっぱり死ぬまでには一度映画を作ってみたいと思い、まず脚本を書き始めたんです。書き始めて4年くらいでやっとまとまってきて。書き始めるのは誰でも出来るのですが、ちゃんと物語にするのは大変でした。この映画はその脚本の初稿から5年ほど経っているので、世の中の流れや雰囲気に合わせて脚本を変えたり削ったり付け足したりはしています。
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――やりたいと願って行動して、この様な素敵な映画を作れるというのがすごいです。
津田:ありがとうございます。でも、自分の中で何が正解か分からなくなっているのが正直な所で、撮影中は自分の好き嫌いだけでジャッジ出来たけど、「これでお客さんに伝わるのか?」「ここに音楽つけたほうがいいかな?」と結構悶々としながら編集していました。撮影中はずっと楽しくて、イベント制作と空間の創作の仕方、照明の考え方は似ている部分があったので。
2人のキャラクター、全体的なストーリーなど僕が込めたテーマは大小4つくらいあって。例えば、2人とは全く違っても背景に共感出来る、とか、アパレルブランドブランド「tiit tokyo」のデザイナー・岩田翔さんがファッションディレクターとして入ってくださっているので、「ファッションは好き」とか。「chelmicoの主題歌いいよね」とか、ひっかかりは作れたと思うので、色々な部分に注目していただけたら嬉しいです。
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――この映画の独特な映像美にも惹かれるのですが、使った機材やガジェットについて教えていただけますか?
津田:真上から俯瞰で撮るシーンでは「Blackmagic」を使い、水中は手のひらサイズの小型のカメラ、魚眼レンズも使いました、GoProを阿部さんの体につけてiPadで遠隔操作したりと、色々なガジェットを取り入れています。この作品を将来見返した時に「2020年ってこういうカメラあったよね」という話になるのも、また一つの映画の楽しみ方かなとも思いました。
――柔らかかったり主張していたり、色彩の感じもとても綺麗で。
津田:カラコレ作業(カラー・コレクション=色補正)は個人的にも楽しい作業でした。好みを結構出していて。
――監督は子供時代を香港、シンガポールで過ごしていますが、色彩や映像にそういった影響もありますか?
津田:あると思います。中国系の映画や映像の色使いが結構好きなんですよね。ウォン・カーウァイ作品とか好きですし、この作品がダイレクトに影響を受けているわけでは無いですが、自分の中の好きなものとして活きている部分はあるかもしれません。
――私もウォン・カーウァイ作品大好きなので分かります。最後に素朴な疑問になってしまい恐縮なのですが……、監督、ラインプロデューサー、スチール、照明、美術、ファッションディレクター(前述の岩田さん)、が全員1985年生まれで、私も1985年生まれなのでびっくりしました! 他の方も1986年とか1987年とか同世代ですよね。
津田:同い年だったのですね。そうなんですよ、これは偶然で。もちろん同い年で知っていたスタッフもいたのですが、ほとんどは偶然で僕も驚きました。意識したわけでは無いのですが、同い年、同世代がかたまっていた事で作品について話しやすかったのはあるかもしれません。今もLINEグループで話したり、当時は飲みに行ったり、そういう環境も楽しかったですね。
――とても素敵な関係ですね。私も勝手に1985年生まれとして嬉しいです(笑)。今日は楽しいお話をありがとうございました!
【動画】映画『Daughters ドーターズ』予告
https://www.youtube.com/watch?v=5JB798F7jmQ
全国順次公開中
脚本・監督:津田肇
出演:三吉彩花、阿部純子、黒谷友香、大方斐紗子、鶴見辰吾、大塚寧々
(C) 「Daughters」製作委員会
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