「いい喜劇、コメディーの条件」とは? 一発逆転エンターテイメント映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』監督に聞く
ガジェット通信 / 2020年11月15日 13時0分
「シラノ・ド・ベルジュラック」は世界中で最も愛されている舞台劇のひとつですが、その大傑作の初演までの舞台裏は、驚愕のトラブル続出だった!?その愉快で痛快、ラストは最高に爽快な誕生秘話を大胆に映画化した映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』が現在公開中です。
監督・原案・脚本は、2016年に上演した本作の舞台版でモリエール賞5部門を受賞して大喝采を浴び、自ら映画化に乗り出したアレクシス・ミシャリクさん。人生崖っぷちの人々があきらめずに一歩前へ進み、奇跡を起こそうとする姿に打ち震える一発逆転エンターテイメントについて、オンラインで話をうかがいました。
公式サイト:https://cyranoniaitai.com/
STORY
1987年、パリ。詩人で劇作家のエドモン・ロスタンはまだ30歳手前の青年であったが、すでに子供2人を抱え、生活に不安を感じていた。もう2年もスランプに陥っていた。万策尽きた彼は、名優コンスタン・コクランに、年末の上演のために英雄喜劇を提供しようと持ちかける。しかし心配なことが1つ。まだこの新作は1ページも書かれていなかった……。女優たちの気まぐれ、プロデューサーたちの非常識な要求、妻の嫉妬、親友との熱い友情物語、周囲の皆のやる気のなさにも負けず、エドモンは誰も成功すると思っていないこの新作に取りかかる。唯一決まっているのはタイトルだけ。それが『シラノ・ド・ベルジュラック』だった……。
●自ら映画化に乗り出したということですが、どのようないきさつを経て映画化を?
一番のきっかけは15年ほど前に『恋におちたシェイクスピア』という映画を観た時に、あれは英語の映画でしたが、同じことをフランスの有名作家で出て来ないだろうかと思ったことです。
その数年後に「シラノ・ド・ベルジュラック」をたまたま読み、作者のエドモン・ロスタンがシラノを書いた時は弱冠29歳だったことと、それまでは成功とは無縁の失敗作ばかりの作家だったということ、シラノそのものには彼は自信があったけれど、ほかの人は絶対成功しないと思っていたなど、発見が多かったです。
●映画は最高のドタバタ喜劇でしたが、どの程度真実なのですか?
リアルとフィクションのパーセンテージは、正確には難しいけれど、だいたい同じくらいと考えてよいです。シラノは歴史上いた人物ですが、元の戯曲のシラノは、シラノの実人生が半分くらい、エドモン・ロスタンが考えたフィクションが半分くらいの割合で混ざっています。僕の映画もそう。多くの登場人物、実在の俳優がたくさん出てくるけれど、それと同じように僕が考えたフィクションもたくさん入っています。
結局、エドモン・ロスタンという人物はシラノに対して、戯曲を書くことによってオマージュを捧げていると思うのですが、僕がエドモンという実在の作家に対してフィクションを混ぜた物語を語ることで、同じように彼へのオマージュを捧げたかったんです。
●いい喜劇、コメディーの条件とは何だと思いますか?
劇作家であるエドモン・ロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」は、笑えて面白い箇所がたくさんある戯曲です。エドモン・ロスタンが生きた時代はボードヴィルという喜劇芝居が盛んで、劇中にもジョルジュ・フェイドーという実在の喜劇作家が出てきて、彼は僕が演じているけれども、映画の中では悪役ですよね。ちょっとした成功を収め、鼻もちならない嫌味な男として描いているけれど、僕は彼の作品の大ファン!当時の典型的な喜劇芝居なんです。
そういう秀作喜劇に共通するものは、リズムやテンポです。テンポのない笑いってないんです。演劇を観ない人に限って演劇のことを退屈と言うけれども(笑)、僕は今回そう思われないように、テンポとリズムを大切にしました。
●それは編集の技術というイメージがありますが、撮影中にできることもあるのですか?
その要素は否めないと思うけれど、今回の映画の場合、かなり演劇的な稽古をしていて撮影前にお芝居のようにたくさんリハーサルをしました。なので実際に撮影に移った時には稽古を重ねていたおかげで、ワンシーンワンショットのような、長回しのような撮り方が可能でした。特にたくさんの俳優が出ているシーンでは後で編集でリズムを付けることは難しかったので、今回の映画は前段階の稽古によって、そういうリズムを足しました。
●日本の観客に対しては、どこを観てほしいですか?
実はフランスでも演劇に行かない人はけっこういるので、演劇って芸術の中では僕はマイナーなジャンルだと思うんです。なので日本人が言葉の壁を感じると同様かそれ以上に、フランス人であっても演劇の壁が考えてみればあるんですよね。つまり、僕は今回、そういった人たちでも楽しめるような映画を作ったつもりです。演劇を一度も観たことがない、フランス文化を知らないという人でも楽しめる作品になっています。
というのも、これは一般的なクリエーションの場を描いた作品であり、演劇人たちがひとつの舞台作品を作り上げる際に舞台まわりにいかにトラブルが起こるかとか、観客との関係はどういうものなのかとか、僕が演劇への愛を込めた作品なので、誰でも楽しめる作品になっていますよ!
●そうですよね!内幕もののドタバタ劇は日本でも人気あります!
こういったコロナ禍という状況の中で、演劇も映画も大変な状況のなか、映画館へ行っていただけることに感謝したいと思います。でも、こういう重苦しい時期なので、ちょっと時事問題を忘れて、夢見るためにこういう映画を観ていただくといいと思います。ほかの国の文化や時代を知ることができるので、そういう意味ではいい気晴らしになると思います。
監督・原案・脚本 アレクシス・ミシャリク
1982年、フランス・パリ出身。19歳の時にイリーナ・ブルック演出の『ロミオとジュリエット』でロミオ役を演じ、俳優デビュー。演劇界で着実にキャリアを積み、2012年の『Le Porteur d’histoire』と翌年の『Le Cercle des illusionnistes』でモリエール賞のほか、いくつもの賞を受賞する。2016年に初演した舞台版『エドモン』は大成功を収め、5部門でモリエール賞を受賞し、フランスを代表する若手劇作家・演出家として認められる一方、俳優としてもTVドラマから映画まで多くの作品に出演している。映画監督としては、2013年に制作した初の短編映画『エアポート』がオンライン映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」にて世界中で配信され、短編部門の観客賞を受賞。その後2本の短編作品を経て、『Edmond』 (原題)で初めて長編作品のメガホンを取る。(公式サイトより引用)
■タイトル:シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!
■公開表記:11月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
監督・原案・脚本:アレクシス・ミシャリク
出演:トマ・ソリヴェレス、オリヴィエ・グルメ、マティルド・セニエ、トム・レーブ、リュシー・ブジュナー
2018年/フランス/112min/カラー/スコープ/5.1ch/原題:Edmond/日本語字幕:室井麻里
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ/東京テアトル
(C) LEGENDE FILMS – EZRA – GAUMONT – FRANCE 2 CINEMA – EZRA – NEXUS FACTORY – UMEDIA, ROSEMONDE FILMS – C2M PRODUCTIONS
(執筆者: ときたたかし)
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