スター・ウォーズ:ビジョンズ『のらうさロップと緋桜お蝶』五十嵐祐貴監督に聞く 『ズートピア』のジュディを参考、『マンダロリアン 』からの影響も
ガジェット通信 / 2021年10月8日 17時30分
現在ディズニープラス にて配信中の『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。「スター・ウォーズ」と日本を代表する7つのアニメスタジオのプロジェクトとして、1話あたり20分ほどのアニメーションが9話登場しています。
本作で、『のらうさロップと緋桜お蝶』を手掛けているのがジェノスタジオの五十嵐祐貴監督。五十嵐監督は、大人気作『呪術廻戦』で話題のエンディングの作画をお一人で担当。本プロジェクトに企画コンペで選ばれて参加した、今後のアニメーション業界を担う注目のクリエイターです。
筆者も大好きな『のらうさロップと緋桜お蝶』がどの様に作られたのか、五十嵐監督にお話を伺いました!
ーー血ではなく絆が家族を守るというストーリーがとても感動的でした。それをこの短い時間の作品で見せるのは大変だったかと思うのですが、何を入れてどの部分を削るなど工夫した部分を教えてください。
短編なのでやれることがすごく限られた中でストーリーを考えました。時間の関係で、めちゃくちゃ削っています(笑)。「血縁じゃない家族」という話を描く時に、本当でしたら、ロップと弥三郎とお蝶の出会いの馴れ初めをしっかり描きたくはありました。
でも、もともと『「スター・ウォーズ」』には展開をテンポよくグイグイ引っ張っていくエンタメ性があるので、それぞれの家族のエピソードは「スター・ウォーズ」的な省略をして。『「スター・ウォーズ」』のライトセーバーと家族の絆が結びつくというところを中心に、話を組み立てていきました。
ーー手塚治虫さんの『地底国の怪人』の耳男がきっかけで、ロップというキャラクターが生まれたそうですね。
「『地底国の怪人』の耳男が、日本の漫画・アニメコンテンツの原点になっている」という話を、批評家の伊藤剛さんの『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』という本で読んで、なるほどなと。耳男はうさぎと人間が組み合わさったキャラクターなのですが、柔らかくデフォルメされたデザインで、実際のうさぎとも人間とも違うんですよね。それが日本の漫画独特の表現なんだなと。そういったキャラクターに感情移入出来て、泣いたり笑ったり出来るというのが独自の文化であり、それの元祖が『地底国の怪人』なのだと紹介されていたんです。
子供の時から楽しんできた作品って、何十年も前から受け継がれているのだなと思った時に、『「スター・ウォーズ」』も自分が生まれる前から存在していて、一つのカルチャーを作っているので似ている部分もあるなと感じました。『地底国の怪人』だったら、『「スター・ウォーズ」』という大きな作品に応えられるだけの力を持っているのではないかなと思いました。
ーーすごく興味深いお話をありがとうございます。ロップがとにかく可愛らしいのですが、この可愛らしさを出すためにこだわったことがあれば教えてください。
最初は手塚治虫の『W3』のボッコ隊長や、『ズートピア』のジュディはかなり参考にさせていただきました。ジュディは以前から好きなキャラクターで、描き方の表現を日本のアニメで出来ないかなとずっと思っていて、ロップの耳の感情表現はジュディに影響を受けています。
ーー一方でお蝶は、カッコ良くて強くて美しいキャラクターとなっていますね。
『「スター・ウォーズ」』はタイトルのとおり、戦争という大きな背景があるわけですが、お蝶は自分の中では、今時の女子高生くらいの、軽い感じというか。普通の若い女の子が、たまたま戦争とか危機がある社会に入ってきちゃって、周りに影響されてこうなってしまうというイメージで描きました。お蝶が暮らしている星は田舎の星なので、愛着はあるけど古臭く感じていて、帝国に憧れがあるというか。「田舎って何もないよね」みたいな感覚から、いつの間にか家族同士がすれ違ってしまって…という。
ーー髪を切るシーンがすごく印象的でした。
あのシーンは家族との決別というか、分岐点ですね。とはいえ、お蝶自身はあそこまでの展開になってしまうとは思っていなかったというか。色々な心情が絡み合っているシーンになっています。
ーー五十嵐監督がお好きな『「スター・ウォーズ」』のキャラクターであったり、エピソードはありますか?
めちゃめちゃ、いっぱいあるんですけど…(笑)。最近の中でいうと、ドラマ『マンダロリアン』のマンダロリアンとグローグー(ザ・チャイルド)が大好きです。この『スター・ウォーズ:ビジョンズ』のお話をいただいた時に、ちょうど『マンダロリアン』のシーズン1を観ていた時で、僕はプリクエル世代なので(新三世代)、エピソード1、2、3の方が影響が強くて、ファーストインプレッションなんですよね。それに匹敵するか、それ以上に『マンダロリアン 』には影響を受けています。『子連れ狼』とか西部劇を下地にひきながら、『「スター・ウォーズ」』が持っている精神性をそのまま活かしてスピンオフにしているのが素晴らしいなと。大きな宇宙での戦いではない、辺境でのお話を描きながら、ちゃんと『「スター・ウォーズ」』になっていて。そこに喋らないマンドーと愛らしいグローグーという組合わせのキャラクターがいて、やっていることはマニアックなのだけどキャラの強烈なパワーがあって。家にも等身大のグローグーがいて、小さいのも含めると何体もいます(笑)。
ーー改めて本プロジェクトに参加されて、どんなお気持ちですか?
神山監督とか今石監督とか、僕のキャリアで同じ作品に肩を並べさせているというだけで、非常に光栄です。僕は僕なりに『「スター・ウォーズ」』の解釈を作品にしたのですが、自分よりキャリアがあって、バリバリ活躍されている方がそれぞれに解釈した作品を観るのがすごく楽しみです。僕はキャラクター推しのお話にしているので、このキャラクターがどの様に皆さんに楽しんでもらえるのがすごく楽しみですし、今まで『「スター・ウォーズ」』を観ていなかった層からの反響もいただいているので嬉しいです。
ーー今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!
『スター・ウォーズ:ビジョンズ』
ディズニープラスにて9月22日(水)16時より独占配信開始
(C)2021 TM & (C) Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
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