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「Pixel Watch」レビュー Wear OS上にFitbitの遺伝子を感じさせるスマートウォッチ

ガジェット通信 / 2022年10月26日 21時30分

Googleが10月13日に発売したスマートウォッチ「Pixel Watch」のレビューをお届けします。筆者はふだんFitbitのリストバンド型活動量計「Charge 5」を使っているので、Fitbitとの親和性に注目してPixel Watchの特徴を見ていきます。

丸い本体にリュウズとサイドボタンを搭載

直径41mmで丸みを帯びたドーム形状のガラスが、ステンレス製の本体へシームレスにつながるデザイン。側面のリュウズは画面のスクロールやアプリ一覧の起動に使用でき、リュウズの上にあるサイドボタンは直近に使ったアプリを起動可能。バンドを除く本体重量は36gですが、手で持つと見た目のコンパクトさ以上にズシっと重みを感じます。その一方で、裏面の方に低く重心を持たせているためか、腕に装着しているとそれほど重さを感じさせません。1日中、さらに睡眠中にも装着するスマートウォッチとしては快適に使えるのではないでしょうか。

本体裏面には光学式心拍センサーを搭載。「ステンレス製ケース」「Gorilla Glass」といった使用素材、「GPS」「心拍センサー」「50メートル防水」といった機能説明がプリントされています。ドーム形状のガラスはカスタム3D Corning Gorilla Glass 5を使用し、5ATMの防水に対応。GPSはGPS/GLONASS/BeiDou/Galileoに対応します。

リュウズを1回押すと、本体にインストールされたアプリがリスト表示されます。スワイプするかリュウズを回すことでリストのスクロールが可能。リュウズはアプリ上でも、上下のスワイプ操作の代用として利用できます。リュウズの操作にはハプティクス(触感)フィードバックを実装。画面のスクロール中には、カリカリとアナログ時計のリュウズを回すような触感が得られます。アプリやタイルを表示している場合にリュウズを押すとウォッチフェイスに戻れる他、2回連続で押すとGoogle Payの起動、5回連続で押すと緊急通報の発信という機能も。

サイドボタンは1回押すと直近に使ったアプリのリストを表示。2回連続で押すと、最後に使ったアプリをすぐに起動します。長押しすると、Googleアシスタントの起動に対応。

専用アプリでセットアップ

Wear OS 3.5を搭載。Android 8.0以上のAndroidスマートフォンとペアリングして使用し、iPhoneと組み合わせることはできません。リュウズを長押しして電源をONにすると、スマートフォンがPixel Watchを認識し、専用アプリ「Google Pixel Watch」のインストールを促されます。

PINの入力、Googleアカウントの選択をしてペアリングが完了。

装着する腕の左右など一連の設定作業の中で、スマートフォンのFitbitアプリを起動してFitbitアカウントに接続を求められます。初めてFitbitを利用するユーザーは、ここでFitbitアプリをインストール。Fitbitアカウントを作成してサービスの利用を開始します。

筆者のFitbitアプリにはCharge 5がペアリングされていたので、ペアリング先をPixel Watchにすることで設定が完了しました。つまり、Fitbitの活動量計やスマートウォッチのユーザーは併用できないので、Pixel Watchに乗り換える必要があることに注意。

ウォッチフェイスはディスプレイを長押しして選択できる他、Pixel Watchアプリから選択が可能。色やレイアウト、ウォッチフェイス内に情報を表示する「スロット」をカスタマイズすることもできます。

Fitbitユーザーに嬉しいスムーズな連携を実現

最初に設定されているウォッチフェイスには、その日の活動量や睡眠を一覧で確認できるFitbitのダッシュボードアプリ「Fitbit Today」を起動するスロットが用意されていて、Fitbitとの連携が重視されていることが分かります。

ウォッチフェイスを水平方向にスワイプすると、インストールされたアプリから情報を表示する「タイル」を切り替えられます。デフォルトのタイルは「歩数」「心拍数」「睡眠」が設定されており、Fitbitで管理する主要な健康管理の指標が押さえられています。

時間帯別の歩数を確認したり、睡眠ステージと睡眠スコアを表示するなど、それぞれのタイルをタップするとFitbit Todayの該当項目の詳細を表示可能。スマートフォンのFitbitアプリを起動しなくてもかなり詳細な情報まで確認できる点は、Fitbitのスマートウォッチ「Sense」「Versa」と同等、もしくはそれ以上の使い勝手を実現していると感じます。ウォッチフェイスやタイルからすぐにFitbitで管理する情報にアクセスできることから、Wear OSとFitbitの連携は良好にチューニングされていると言ってよいのではないでしょうか。

「エクササイズ」のタイルから、記事執筆時点では「ランニング」「サイクリング」「ヨガ」「ワークアウト」など41種類のエクササイズを選択して記録が可能。ウォーキングに関しては、タイルから指定しなくても自動で記録ができることを確認しています。

Fitbitのサブスクリプションサービス「Fitbit Premium」に加入していると、詳細な分析やガイダンス、運動に向けた身体の状態を測定する「今日のエナジースコア」、ワークアウトやマインドフルネスセッションといった機能が利用可能。Pixel Watchの購入者には、Fitbit Premiumを6か月無料で利用できる特典が付属します。

ただし、Charge 5で利用できていた機能で、Pixel Watchで利用できない機能もあります。Fitbit Premiumで管理する「健康指標」のうち、「呼吸数」「心拍変動」「安静時の心拍数」には対応しますが、「皮膚温」「血中酸素ウェルネス」の2項目が測定できていません。Pixel Watchは温度センサーを搭載しないため、皮膚温の測定は今後も対応しないものとみられます。Pixel WatchにもSpO2センサーは搭載しているのですが、今のところ機能は停止しています。多目的電気センサーを利用した心電図(ECG)アプリは、Fitbitのスマートウォッチでも国内ではまだ利用できない機能。Pixel Watchも多目的電気センサーを搭載しているので、今後医療機器としての承認を得られれば、Fitbit製品と同時に利用可能になると考えられます。

Googleサービスとの連携が魅力

Wear OS搭載スマートウォッチの最大の魅力は、Googleのサービスとの強力な連携です。いくつかピックアップしてPixel WatchのGoogleサービス連携を見ていきましょう。

Pixel Watchで外出先からGoogleマップアプリを使ってみました。アプリを起動して目的地を音声やキーボードで入力すると、目的地のルート案内が利用できます。地図からルートを確認できる他、道順をステップを追って確認しながらナビゲーションしてくれるので重宝しそう。アプリ起動中にリュウズを回すと、道順をスクロール表示して確認することができます。Fitbitの最新スマートウォッチ「Sense 2」「Versa 4」では、今後アップデートでGoogleマップの機能が追加される予定。FitbitとGoogleサービスの連携をいち早く体験できるのは、Fitbitユーザーにとっても大きな魅力と言えそうです。

Wi-FiモデルではGoogleマップアプリを使用する場合、Pixel Watch単体でなくペアリングしたスマートフォンも手元に必要。ルート案内中にはスマホ上でGoogleマップのアプリが起動していて、スマホ上で表示した結果をウォッチと同期する仕組みのようです。

Googleアシスタントは、「OK Google」と話しかけるかサイドボタンの長押しで起動できます。音声でアラームやタイマーをセットしたり、天気を聞いたり、Googleカレンダーの予定を確認したりと、“持ち歩けるスマートスピーカー”として活躍します。

4G LTE対応モデルでは、Pixel Watch本体から直接、モバイルネットワークによる通信が可能。国内ではauとソフトバンクが、スマートフォン回線のオプションとして通信サービスを提供します。この場合、Pixel Watch単体でもアプリや通話、テキストメッセージの受信、Googleアシスタントなどが利用可能。

通話には本体のマイクとスピーカーが利用できる他、Pixel Watch本体の設定メニューからペアリングしたBluetoothイヤホンから通話が可能。本体の設定メニューは、ウォッチフェイスから下にスワイプして表示されるメニュー一覧からアクセスできます。

Bluetoothイヤホンでは、YouTube Musicアプリから音楽を聴くことができ、32GBの内蔵ストレージにプレイリストを一時保存してオフラインで再生することも可能。Pixel Watch購入者には、YouTube Music Premiumを3か月無料で利用できる特典が付属します。

Googleフォトとも連携し、これまで撮った写真から好きなもの選んで「写真」のウォッチフェイスに表示することができます。

Googleアプリに限らず、Google Play ストアからさまざまなアプリやウォッチフェイスをインストールして使える拡張性も魅力。Fitbitのスマートウォッチでもアプリや文字盤のインストールは可能ですが、ラインアップの豊富さが格段に違います。

Google PayでSuicaを登録

Pixel Watchでは、Google Payを使った非接触型決済が利用できることも注目されています。

リュウズを2回押すとGoogle Payが起動可能。ここで「+」ボタンをタップすると、決済手段の登録を開始できます。

決済手段の登録はスマートフォンのPixel Watchアプリから進めていきます。VisaやMastercardのタッチ決済に対応するクレジットカードやデビットカードも一部対応していますが、今回はSuicaを登録してみました。スマートフォンで使っているモバイルSuicaをサーバーに戻して、Pixel Watchに移動させる方法もあるようですが、今回はPixel Watch用に別のSuicaを発行して使っています。Fitbit PayやGarmin Payといったスマートウォッチ用にSuicaを使ってきた経験からすると、スマートフォンとは別に発行して管理する方が運用しやすいのでは、と思います。

複数の決済手段が登録してある場合はGoogle Payを起動して使うカードを選択する必要がありますが、Suicaのみの場合はそのままかざして決済できます。残高はPixel Watch本体でも確認できますが、チャージはスマートフォンのPixel Watchアプリから実行。スマートフォン本体のモバイルSuicaとは別のSuicaとして管理されます。

Pixel Watchから外部デバイスを操作

使ってみて楽しいのが、Pixel Watchから外部デバイスを操作する機能。「カメラ」のアプリを使うとスマートフォンのカメラアプリを起動して、Pixel Watchのディスプレイからプレビューを見ながらシャッターボタンを押すことができます。メインカメラとインカメラを切り替えたり、シャッタータイマーを設定することもできるので、スマートフォンを置いて離れた場所で撮影したり、三脚を使った自撮りに活躍します。リュウズを回すとズームを調節できるのも、使っていて楽しい機能です。

「メディアコントロール」アプリを使うと、Pixel Watchがスマートフォンで再生中のメディアを操作するリモコンの代わりに。YouTubeの動画やYouTube Musicの音楽を再生中に、一時停止やスキップ、音量の調節がPixel Watch上から可能になります。リュウズを回すと、ボリュームつまみのように音量を調節できます。

Google Homeアプリを使うと、自宅のWi-Fiに接続したネットワークカメラなどスマートホーム機器の操作も可能になります。筆者の自宅ではChromecastやNest Wi-Fiルーターといったデバイスが稼働しているのですが、これらデバイスの操作はスマートフォン上で実行する仕様になっていました。Pixel WatchのGoogle Homeアプリはプレビュー段階のようなので、今後機能が拡張されていくものとみられます。

専用のワイヤレス充電器で1日分を充電

バッテリー持続時間は最大24時間。Charge 5が最長7日間持続するように、睡眠中も装着する活動量計としては短い印象です。日中どこかの時間で充電して、睡眠中も含めその後1日分の充電をする、というサイクルで使うことになるでしょう。

充電には付属のマグネットチャージャーを使用し、一般のワイヤレス充電器は使用できません。チャージャーのケーブルを18W出力のUSB Type-C充電器に接続すると、約30分で50%、約80分で100%の速度で急速充電できます。

Fitbitユーザーは迷いどころ? ワクワクするなら“買い”

Fitbitの機能が統合されることが予告されていたPixel Watchですが、想像していた以上にFitbitとの連携ができているという印象を持ちました。Wear OSスマートウォッチにFitbitアプリを付け足す程度ではなく、色数を少なく抑えたウォッチフェイスやユーザーインタフェースのデザイン、見慣れた心拍計、エラストマー製の付属のリストバンドなど、随所にFitbitの遺伝子を感じることができました。

問題は、FitbitユーザーがPixel Watchに乗り換えるべきかどうか。Pixel WatchはFitbitユーザーにはなじみやすく、継続してサービスが利用できるだけでなく、Googleのサービスや製品と組み合わせて使えるワクワク感があるという印象を持ちました。筆者はFitbitスマートウォッチの「Versa 2」を使っていたのですが、スマートウォッチとしての機能が十分でないと感じて、画面や機能がシンプルなCharge 5に乗り換えて使っていたということもあり、個人的にはPixel Watchのワクワク感が勝っています。Pixel Watchでは計測できない指標や健康管理の機能が重要、というユーザーはそのままFitbit製品を使えばよいと思いますが、ワクワクを感じるならPixel Watchが“買い”。活動量計もスマートウォッチも初めて、というAndroidユーザーにも、積極的におススメできる製品なのではないでしょうか。

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