家政婦が美しいドレスに魅入られ冒険へ!『ミセス・ハリス、パリへ行く』レビュー「今年最も幸せな気分にしてくれる映画」
ガジェット通信 / 2022年11月21日 17時0分
『ポセイドン・アドベンチャー』他数々の名作を生みだした小説家ポール・ギャリコの原作「ハリスおばさんパリへ行く」を、アカデミー賞ノミネート女優レスリー・マンヴィル主演に迎えた映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』が公開中です。
舞台は 1950 年代、ロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦がある日働き先で 1 枚の美しいドレスに出会います。
それは、これまで聞いたこともなかった、クリスチャン ディオールのドレス。500 ポンドもするというそのドレスに心を奪われた彼女はパリへディオールのドレスを買いに行くことを決意。新しい街、新しい出会い、そして新しい恋・・・?夢をあきらめなかった彼女に起きる、素敵な奇跡。いくつになっても夢を忘れない―見た人誰もがミセス・ハリスから勇気をもらえる、この冬一番のハッピーストーリー!
本作の映画レビューをお届けします!
今年最も幸せな気分にしてくれる映画をご紹介します。現在公開中の『ミセス・ハリス、パリへ行く』です。
舞台は第二次世界大戦後、1950年代後半のロンドン。ミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)は愛する夫を戦争で亡くし、通いの家政婦としてつましい生活を送っていました。唯一の贅沢といえば、仕事仲間で親友のヴァイ(エレン・トーマス)とたまにパブで一杯やったり、サッカーくじに毎週一度だけ挑戦すること。そんなミセス・ハリスにある日運命を変えるような出会いがやってきます。仕事先のレディ・ダントの屋敷のクローゼットに、世にも美しいドレスを見つけたのです。クリスチャン・ディオールのオートクチュールだというそのドレスはミセス・ハリスの心を奪い、なんとしてでも自分もドレスを手に入れたい!と決心させたのです。その一生で一度の超最大プロジェクトは、周囲の人々を驚かせたり呆れさせたり。ですが彼女はあきらめません。努力と強運でなんとかお金を貯めて、いざパリのメゾンを訪れるのですが……。
ポール・ギャリコが1958年に発表した原作『ハリスおばさん、パリへ行く』は日本でも大人気を呼び、その後ミセス・ハリスはニューヨークへ行ったり国会へ行ったりしました。家政婦のおばさんが夢をあきらめず、勇気を出してめくるめく冒険に読者を連れて行ってくれるこの本は、かくいう筆者も子供のころの一番お気に入りで、何度読み直したか思い出せません。日本版は長い間絶版となっていたのですが、この映画化のおかげで『ミセス・ハリス、パリへ行く』(亀山龍樹訳/角川文庫)として復活したのです。
映画はオリジナルの物語にいくつかのエピソードを加え、キャラクターも少々変えてありますが、原作が放つ輝きや受け取る高揚感は、原作を読んだことがある人は絶対に気にいるはず! 読んだことがない人も、ミセス・ハリスと一緒に、驚きと嬉しさと幸せを感じること間違いなしです。ネタをばらしたくないので詳しくは書けませんが、筆者自身はこの映画の結末のおかげで、小さいころ読んだ時の悲しさがふっとびました。
主演は『ファントム・スレッド』でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたレスリー・マンヴィル。最近ではドラマ『カササギ殺人事件』の主人公も演じています。美しいものを見た時、周囲の人たちの優しさに触れた時の彼女のチャーミングな表情は、見ている私たちも楽しい気分にしてくれます。映画では特に重要な役割を果たすメゾンのベテランマネージャーを演じるイザベル・ユペールをはじめ、ランベール・ウィルソン、ジェイソン・アイザックス他、見終わった後でも当分忘れられないキャラクターがたくさん登場します。今年一番幸せになる映画『ミセス・ハリス、パリへ行く』、ぜひ原作と一緒にお楽しみください。
【書いた人】♪akira
翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP、「本の雑誌」等で執筆しています。
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