加藤雅也インタビュー:主演映画『愚か者のブルース』は、「人生、無駄にしている。そういう男の話です」
ガジェット通信 / 2022年12月7日 23時15分
加藤雅也さんと横山雄二さんの共同企画によるストリップ劇場3部作の第二弾、映画『愚か者のブルース』が現在、全国順次公開中(シネマスコーレ(愛知)・第七芸術劇場(大阪)・京都みなみ会館・宮崎キネマ館など)です。30年前、伝説の映画を監督したが、今や過去の人となっている男・大根を演じた加藤さんに、本作や映画製作への想いをうかがいました。
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●本作は加藤さんの一言で企画がスタートしたそうですが、横山監督とはどのように進められたのでしょうか?
最初はざっくりと映画監督の話で、<夢で生きている男>の物語が撮れないかと、そういう話をしました。その後ある程度の台本が出来て、いろいろと変えながら、お互いに話し合いをしながら進めました。
●横山さんは監督だけでなく、俳優としても出演されています。
自分で脚本を書いているので、自分の言いたいこと、やりたいことをやっているんですよね。セリフも覚えさせられている感覚ではないというか、だからこそ脚本・監督・主演はやりやすいのではないかなと思うんです。それに長年関係のある、僕自身も楽でした。『トップガン』のトム・クルーズとヴァル・キルマーのように、語らずとも人間関係が出来ている。それが、こういう映画の良さだと思うんです。
●本作はメッセージ性が強いと思いましたが、加藤さんご自身はみなさんに一番何が伝わるとよいとお考えですか?
それは<夢に生きてもいいけれど、夢で生きちゃダメよ>ということですね。主人公はそういう男で、ヘンに頑固なんですよ。映画撮りたきゃ撮ればいいのに、10年も撮らないでいる。撮ってこそ映画監督で、撮らなきゃタダの人。俳優もカメラの前に立っていなければ、タダの人です。人は虚栄心、コンプレックスが最大の敵でもあるんですよね。不平・不満を言うのはいいけれど、それを10年言ってちゃダメということ。人生、無駄にしている。そういう男の話です。
●これは普遍的なものがありますね。
人生80年だとして、体が満足に動いての80年間ではないわけです。やりたいことができての人生じゃないとしたら、何年も文句言ってたらもったいない。すべて自分次第。これは観ている人にも刺さると思いますよ。
●個人的な想いも強いと思いますが、映画が完成して思うことは?
みんなが協力して頑張ればちゃんといい作品は作れるんだ、ということは完成して率直に思いました。
この映画は広島の人による、広島の人のための広島の映画なんです。
三部作までは我々がやるけれど、次の4・5・6は、あなたたち自身の力で作っていかなければいけない映画だよと。そういう目的があるということは伝えておきたいですね。
●今後、映画製作に積極的に関わりたいですか?
大規模作品の演出が自分に出来るとは思わないけれど、低予算で作ることを実戦で教えて、その人の演技がいいほうに変わるとか、ちゃんと俳優さんたちと向き合えるようなものであれば関わりたいと思います。
ただ、年齢的なものもあります。誰かに伝えて行くためには、本を書くこと、講演会をすること、監督業をやること、などになってくると思うんです。ワークショップは大切ですが、机上の空論でもある。そういう意味では、実際に作品を作ったほうが断然いい。その意味では、いろいろ前向きに考えたいとは思っているところです。
■ストーリー
30年前、伝説の映画を監督したが、今や過去の人となっている男・大根(加藤雅也)。大根は、ピンサロ嬢として働くタマコ(熊切あさ美)のヒモとなり空虚な生活を送っている。
そんなある日、タマコの昔の男が「俺から離れられると思うなよ」と現れる。大根とタマコは大学時代の後輩が館長を務める広島のストリップ劇場に逃げ込む。そんな二人を温かく迎え入れる館長(横山雄二)。大根とタマコはストリップ劇場の楽屋に住み込むことになる。二人の人柄に惹かれ、歓楽街に住まう仲間たちも歓迎ムード。温かく満ち足りた時間が続く。
しかし、大根がストリッパー(小原春香)に手を出したことから保たれていたそれぞれのバランスが崩れて行く。
「あんた、格好悪すぎるよ。いつまでも、俺たちの憧れでいてくれよ。なんで、そんな下らない男に成り下がったんだよ」大根を叱責する館長。
映画を撮ることが出来ない大根の思い。
ヒモを養うタマコにも
人には言えない凄惨な過去があった。
そして、それぞれの未来は…。
(C) 2022 by Yokonandes Film
(執筆者: ときたたかし)
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