あの恐るべき“色”は消えない ラヴクラフトのコズミックホラーを映画化した『宇宙の彼方より』世界初の劇場公開[ホラー通信]
ガジェット通信 / 2023年4月26日 23時0分
H・P・ラヴクラフトのコズミック・ホラー小説「宇宙の彼方の色(原題:The Color Out of Space)」を野心的に映画化した『宇宙の彼方より』が、世界初の劇場公開決定。6月3日より下北沢トリウッドほかにて全国順次公開される。
「映画史上、最もラヴクラフト=“原典”の魅力を忠実に描いた作品」とも言われる本作を手掛けたのは、ラヴクラフトのクトゥルー神話を愛するベトナム系ドイツ人のフアン・ヴ監督。ラヴクラフトが唱えた“宇宙的恐怖”をより拡大すべく、作品の舞台をフアン監督の両親が移民を決意したベトナム戦争下の1975年のアメリカと第二次世界大戦下のドイツにするなど、独自の解釈を盛り込んでいる。本作は2010年に完成させたもので、現在はクトゥルー神話を原作とした新作『The Dreamlands(原題)』を制作中だという。
![](https://horror2.jp/files/2023/04/uchu-no-kanata_1-1024x426.jpg)
「クトゥルー神話解体新書」などラヴクラフト関連書籍を多数執筆し、本作で字幕監修を手掛けた森瀬繚氏は、本作について「原作小説の再現性という点においては、今のところこの『宇宙の彼方より』が一番」とコメントしており、原作小説を読み込むことでこの映画を隅々まで楽しめるとしている。フアン・ヴ監督と森瀬氏からのメッセージ、そして推薦コメント全文を記事末に掲載している。
『宇宙の彼方より』
2023年6月3日(土)より下北沢トリウッドほか全国順次公開
<ストーリー>
その色はどこへ去ったのか……。
1975年、アーカム。ジョナサン・デイビスは父親の失踪を知る。父親の足取りは第二次世界大戦中に駐屯していたドイツ、シュヴァーベン=フランケン地方の森へと再び赴いていた。かつて、この田舎村で父親が目撃した不可思議な現象とは一体なにか。全ては宇宙の彼方より飛来した隕石から始まった……。
メッセージ、推薦コメント
<脚本/監督:フアン・ヴからのメッセージ>
私は『宇宙の彼方より』という映画を誇りにしている。この映画が、2023年現在まで世界で評価し続けてもらえたことは、私に“クトゥルー神話の父”が創始した無限の物語世界の偉大さを実感させてくれた。
<日本語字幕監修:森瀬繚からのメッセージ>
モノクロームの色調で描かれた、“色”の物語。自他共に認めるラヴクラフトの“最高傑作”は、これまでにも幾度か映像化されてきましたが、原作小説の再現性という点においては、今のところこの『宇宙の彼方より』が一番でしょう(むろんそれは、作品としての優劣を決めるものではありません)。だけど、違うところもあります。この映画を隅々まで楽しみたいのであれば、自分としてはむしろ、原作小説を読み込んだ上で鑑賞することをお勧めします。
<推薦コメント:河合のび(詩人/文筆家)>
『宇宙の彼方より』の原作小説は、“放射線被曝”の恐怖にいち早く注目した作品とも言われている。この映画が、“第2次世界大戦”という原作小説には登場しない時代を、“邪悪なる光”に世界が戦慄した時代をあえて描いた理由とは。そして、かつて起こった“2011年”を記憶の水底に沈めようとしている日本で、“2010年”に完成されたこの映画がいま公開される意味とは。その答えはぜひ、自身の眼で確かめてほしい。
<推薦コメント:尾子洋一郎(ロシア語ロシア文学研究者)>
人間は自身の理解できないものに対して恐怖感を抱く。白黒で綴られた本作品はロシア語でいう、ツヴェート(色)とスヴェート(光)という韻を踏む単語を想起させる。スグに胸に刺さる安直な作品ではないが、一生を通して、あたかも完治したやけどの痕のように、ボディーブローのように刺さる作品である。
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