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アニメ『ULTRAMAN FINALシーズン』神山健治×荒牧伸志 監督が語る“ウルトラマン”像

ガジェット通信 / 2023年5月15日 11時0分

2019年にスタートし2022年にはシーズン2が配信されたアニメーション版『ULTRAMAN』。2023年5月11日にはついにシリーズを締めくくる『ULTRAMAN FINALシーズン』が、Netflixにて全世界配信となりました。

ウルトラマンの存在が過去のものとなった世界をフル3DCGアニメーションを用いて表現したのが、神山健治、荒牧伸志のW監督。新たな時間軸と舞台で描かれたウルトラマンワールドについて、そして“シリーズ最後”となる本シーズンについて神山監督・荒牧監督にお話を伺いました。

初代ウルトラマンとの違い

──僕はアニメの方から全部、観させていただきました。いきなり根っこの話になっちゃうんですけど、古くから作られてきたウルトラマンシリーズや今回の『ULTRAMAN』原作とがある中で、「ウルトラマン」として絶対守ろうと思った部分について教えていただけますか?

神山健治:そうですね、オリジナルの「初代ウルトラマン」、これが自分の中のヒーローとしての原点なんだなと思ってます。作品を作っていく上で改めて感じたんですけれど「正義のヒーローとはかくあるべき」っていうイメージが初代で出来ていました。一方、おそらく『ULTRAMAN』の原作ではそこをひっくり返そうというアプローチでやっていたと思うんです。そこは面白いから当然活かしつつなんですが、その中で僕が思う「正義のヒーローとは」っていう部分はブレないように、“初代ウルトラマンを見て胸を熱くした部分”っていうのは変えないようにしたいなと思ってましたね。

──『ULTRAMAN』を観続けてきて「正義っていうのは何だろう?」、あるいは「正義って見方によって変わるよ」っていうテーマを感じました。正義のとらえ方次第で矛盾も生じると思うので、描くのは色々ご苦労だったのでは?

荒牧伸志:そうですね……。

神山:今、本当に正義って50年前と比べても僕は違ってきてる時代だなと思うんですよね。道徳ですら読み解き方が変わってきてますけど、僕がかつて感じたウルトラマンが体現してくれた「正義のヒーロー」という部分は、芯の部分で残したいという思いで、ずっと関わっていました。

荒牧:多分近い話だと思うんですけど、昔のウルトラマンって喋らないで誰に言い訳もしない、でっかくて崇高な存在みたいな感じじゃないですか。それに僕らは心を打たれて毎週一生懸命見てた。

昭和のウルトラマンの何かが僕らに植え込まれてるんですけど、この令和から始まったアニメ『ULTRAMAN』ていうのが、もっと普通の今時の少年である(主人公)進次郎が、お父さんを意識しだして、どう行動しようか? 正義感とは何だろう?とかって考え出す。

昭和のウルトラマンと新しい『ULTRAMAN』のヒーロー像が、うまくつながるといいなあと思ってました。

ウルトラマンとは何だ

──本作って「ウルトラマンとは何だ」っていうテーマもあると思うんですね。時代によって、あるいは人によって、「ウルトラマンって何だ」って全然違うと思うんですが、監督たちにとってウルトラマンってどんな存在ですか?

神山:これは僕は一貫して言っていることなのですが、「正義のヒーローって何か」っていうのをテーマとして作品を作ってる部分があるんです。ウルトラマンはそれの原点でしょうね。

初代ウルトラマンでは特に最終回がそれを象徴してるのかな。自分は死んでしまうけど地球人のために戦って、それがハヤタでもあるんだけど。自分の魂をあげてでもね、ハヤタを生き返らせてくれ、っていう。今までこう一言も語らなかったウルトラマンの思いがそこで語られるじゃないですか。

荒牧:そうだね。

神山:僕、生まれた年(1966年)にウルトラマンの放映が始まってますから、記憶に残ったのは3歳か4歳かわからないけどそのころの再放送だと思うんです。それがずっと残ってるんです。なので、僕にとってウルトラマンは正義のヒーローの原点なのかなと思います。最も古典的な普遍的なヒーロー。ただ神様でもないんだけどね。

荒牧:うん確かに

神山:神様って、ヒーローじゃないから

──そうですね。不完全であるからこそ死んじゃう、ってとんでもないことですからね

神山:でもあれがかっこよさの美学にもなってる気がしますね。

荒牧:なるほどね。僕もあれで心が奪われてしまった感じがしますね。

神山:偶然なんだろうけど、喋らないじゃないですか、ウルトラマンて。

荒牧:そうそうそうそう。

神山:喋らないからこそ、あの戦ってるところでね。何考えてるか分かんない。でも勝手に僕ん中では「頑張れ」って応援しちゃうっていうね。変身して向かってくんだけど、結構ひどい目にも遭うじゃないですか。

──そうですね。だいぶひどい目にも遭います

神山:だけど戦ってくれているっていう。

荒牧:ね。

──作中の進次郎も、割とそういう「言えない葛藤」があったように思いました

荒牧:そうですね。そこになんかうまく、自分が持っているウルトラマン像を、少し進次郎に託すという感覚は、特に後半に向かって存在したと思いますね

神山:「共感してくれる人がいなくなる 」っていう。一番苦しいところに追い込まれますからね。

ウルトラマンから感じた“怖さ”を読み解く

──昔のウルトラマンを知っている人たちからすると、本作には新旧共通する部分も、違う部分もあるのが面白さのひとつです

神山:若い人がこの作品を観た時に、進次郎がどういう風になろうとしているのかっていうのが、もしかしたら新鮮に見えるかもしれないっていうところなんですよ。

──昔と今のウルトラマンの共通部分として僕が観ていて感じたのが、当時観ていたウルトラマンレオの記憶なんです。レオって油断できない、やや残虐な怖さがあったように思うんですね

神山:レオは隊員とかが惨殺されますからね。

──僕は本作のエドの目線に、「怖いウルトラマン」というかかつての円谷作品のおどろおどろしさみたいなのを感じたんです

荒牧:はいはい。

神山:最初のウルトラマンも基本的にはでっかい怪獣と戦うじゃないですか。でも今見ると2話からバルタン星人が出てきてるんですよね。家ん中に人間サイズのやつが入ってくるのは怪獣より怖いよね。

──怖いですよね(笑)

神山:レオはそれの極みだったですけど、家ん中入ってきて殺されんのかよ、たまったもんじゃねえよっていうね。

荒牧:(笑)

神山:どこまで意識されてたのかわかんないけど、等身大の宇宙人が基地の中に入ってくるとかね。それの極みが多分、四畳半でウルトラセブンが(メトロン星人と)喋るやつなんでしょうけど。

荒牧:あれね。シュールだよねえ。

神山:今回の『ULTAMAN』は最初から小さいじゃないですか。人間サイズ同士で最初から戦うっていうのが、原作のコンセプトであり最初の部分です。でっかいモノって畏怖の念もあるけど、単純にそれに対して恐怖心がある、というのとはちょっと違うじゃないですか。

荒牧:まあ、距離感があったりするからね。

神山:だけどちっちゃいやつがそばにやってくるっていうのは生理的に怖いんだと思いますよね。だからエドがシーズン1の1話で座ってるっていうのはその部分を表現してるっていうか、同じだなと思ったんで。ウルトラマンの「怖い部分」はそこなんじゃないかなと思いますね。

荒牧:まあ、科特隊の指令室であの姿でじっと座ってるっていうのは、かなりシュールな絵ではあるよね。

神山:それがこの基地の一番偉い人として座ってるわけですから。

荒牧:ヤバい感じですよね。

見どころ

──『ULTRAMAN』をこれから見る人たちに「是非ここ見て欲しいな」という部分を教えてください

神山:原作のコンセプトを知らないで『ULTRAMAN』を観始めた人は「なんで小さいんだ」「ウルトラマンとはでかいものなんだ!」って人もいると思います。

先の質問の「ウルトラマンとはなんぞや」の中に、かなりの部分「巨大なヒーロー」っていうのは含まれてるとも思うんですね。でも、ウルトラマンをこういう風に解釈したのか? っていうところが、原作の『ULTRAMAN』の新しいところだったんですね。

巨大なヒーローっていうのが、ウルトラマンの常識だったわけですけど、そうではない。人間サイズのウルトラマンが、人間の心のまま戦う。同時に同じ大きさの怖い宇宙人が出てきて、それと戦うんだって。

そこがこの『ULTRAMAN』のオリジナリティでもあるんですよね。逆に等身大のヒーローって世界中いっぱいあるんで。そのウルトラマンが持ってたオンリーワンなヒーロー性とは違うんだけれど、それを知ってる上で、そのウルトラマンをこう解釈したんだっていうルール。

荒牧:面白さですよね。今回の特にFINALがそこを象徴してると思うんですけど、昔のウルトラマンと今の新しいスーツの少年、スーツを着てヒーローになる少年が、クロスオーバーしていくところが面白いんだよという。

──最後に、本当に終わっちゃうんですか?これで

荒牧:うーん、……いやー! そうらしいですよね(笑)

神山:閉店セール的な? 次もあるか、と思うかもしれないんですけど、一応、終わりです。

──ありがとうございました!

『ULTRAMAN』

原作:清水栄一×下口智裕

アニメ『ULTRAMAN』公式サイト:http://anime.heros-ultraman.com/

公式Twitterアカウント:@heros_ultraman

『ULTRAMAN』ストーリー

かつて、この世界には「光の巨人」と呼ばれる存在がいた。光の巨人は1人の地球人と同化し、異星人の侵略や「怪獣」と呼ばれる巨大生物による幾多の破壊と混沌から世界を守っていた。やがて光の巨人はその役目を終え、遠い宇宙にある自らの故郷へと帰還し、同化していた地球人はそれまでの記憶を失った。

それから時が経ち、ウルトラマンの存在が過去のものとなった世界でウルトラマンと同化した過去を持つ早田進(ハヤタ・シン)の息子・早田進次郎(ハヤタ シンジロウ)は、生まれながらに特殊な力を持っていた。ある日突然、謎の敵に襲われた進次郎を助けに現れた父・早田は「自分こそがウルトラマンだった」と告白。父の危機を前に、元科特隊の井手からウルトラマンスーツを与えられた進次郎は敵との戦いに挑む。

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