上岡龍太郎とは何者だったのか? 横山やすしの失速〜屈折した不遇時代〜変わり身の東京進出
ガジェット通信 / 2023年6月4日 20時0分
上岡龍太郎さんが、5月19日に肺がんと間質性肺炎のため81歳で亡くなった。彼はそもそもどんな人間だったのか?
1960年代、漫才トリオ「漫画トリオ」の1人として人気を博した上岡(当時の芸名は横山パンチ)。「パンパカパーン、今週のハイライト!」の始まる時事ネタは、原子力潜水艦や新幹線など社会風刺に富んだものも多かった。
だが1968年、相方の1人・横山ノック(2007年没)が参院選に出馬し当選したことで、漫画トリオは解散。漫才を廃業する形となった上岡は、80年から始まった漫才ブームにももちろん乗れず、基本的には大阪ローカルの番組MCとして、お笑い界を屈折した目で見ていた。それがのちの“辛口芸人”として生まれ変わる素養を養っていく。
80年代、毒舌で売っていたのが横山やすしだった。『スター爆笑Q&A』『久米宏のTVスクランブル』(日本テレビ系)などで人気だったが、80年代後半から相次ぐ不祥事で失速。表舞台から遠ざかっていく。
それと入れ替わるようにしてテレビ界に再び招かれ始めたのが上岡だった。87年から『鶴瓶・上岡パペポTV』が読売テレビでスタート。番組内容は、笑福亭鶴瓶と上岡の2人が、60分のフリートークを行うというもの。
これが爆発的な人気を呼び、関西ローカルから全国でもネットされるようになる。もともと大阪の番組しか出ないと言っていた上岡だったが、これを機に東京進出。その変わり身の早さもまた彼らしい。さらにメガネにオシャレなスーツと、スマートさを称えながらの毒舌が東京に受け入れられた。
島田紳助との『EXテレビ』(日本テレビ系)では、「家宝鑑定ショー」という実験的な番組企画を放送し、オークション形式で他局に売り出された。これをテレビ東京が落札して『開運!なんでも鑑定団』が生まれた。
フジテレビ・有賀さつきアナ(2018年没)が「旧中山道」を「いちにちじゅう・やまみち」と誤読した(ただしこれを最初に読み間違えたのは有賀本人ではない。彼女は他局アナによるこの誤読例を紹介しただけだったが、彼女もその際、同様に間違えた)『上岡龍太郎にはダマされないぞ!』(フジテレビ系)も印象に残っている。
「AV女優」「整形女性」「教師VS体罰に怒っている人たち」「男性高校教師と元教え子である女性の夫婦50組」「不倫中の夫を持つ妻」などなど、様々な人々を50人呼んでトータライザーをもとにトークしていく『上岡龍太郎がズバリ!』(TBS系)もきわめて挑戦的だ。
絶頂期の1996年12月、「2001年には(タレントから)転身してまったく別の人生を送ろうと思っている」と引退宣言を予告し話題騒然。2000年の58歳のとき、かねてからの公約通り、芸能界を引退している。
常に冷静沈着だった上岡さんだが、1988年から引退まで局長を務めた『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)の収録中、ロケ内容に怒って途中退場したことが94年にあった。降板も危ぶまれたが2週間後、無事復帰。当時「なんで帰ったのか自分でも分からん」と言っていたが、ロケでのオカルトの扱いに対して、疑問を持ったらしい。ごくまれにではあるが、感情をむき出しにすることも、また魅力だった。
「そろそろ引退する」と言いながら、なおキャリアを重ねる芸人は多いが、有言実行しているのは上岡ぐらいなものであろう。ご冥福をお祈り致します。
(執筆者: genkanaketara)
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