橋本淳＆稲葉友＆猪股和磨監督インタビュー　青春ロードムービー『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』を観て「誰かに会ってみようかなと思ってもらえたら」

ガジェット通信 / 2023年6月16日 11時0分

橋本淳さん、稲葉友さんがダブル主演を務める映画、『よっす、おまたせ、じゃあまたね。』が全国劇場公開となります。本作は、映画×音楽の祭典“MOOSIC LAB 2023”でお披露目となった、“なかないで、毒きのこちゃん”主宰・鳥皮ささみこと猪股和磨さんが、自身の舞台を映画化した監督最新作でもあります。

引き籠りの男・ちばしん（橋本）の元に、かつての親友・ながちん（稲葉）が「俺死んでるから死体を見つけにいってほしい」という突拍子もない相談をしてきたことから始まる、少し不思議で寄り道多めな青春ロードムービー。猪股監督はどういう想いで物語を作り、橋本さん、稲葉友さんはそれぞれの役柄を演じたのか。3人にお話をうかがいました。

■公式サイト：https://yosuoma-movie.com/ [リンク]

●出演が決まり、最初に脚本を読まれた時の感想はいかがでしたか？

稲葉：本当に優しい、温かい、人の温もりを感じる作品だなと、最初に思いました。特異な設定などにも戸惑わず、すんなり脚本を読めたので、漂う人間味みたいなところが自分の中に深く残ったイメージです。

橋本：まず監督の制作意図が書かれた文章を読み、心動かされました。引きこもりの友人がいて、なかなか会えなかったことがずっと心に残っていると。だからこの人の映画だったらぜひ出たい、その想いが最初で、それから台本を読みましたが、僕が感じたことは正しかったなと思いました。

監督：僕自身が昔の友だちに会いに行けなかった現実を、映画というフィクションで動かせたらいいなと思ったんです。そのままの想いを企画書に書いた、ということなんです。僕自身もこの映画を作ることで、自分自身の背中を押してもらいたいと思っているところもあったかも知れません。

●彼らの寄り道多めな道中を観ていると本当に優しい気持ちになります。

橋本：映画を観た時、僕自身も人に対して優しくありたいなと思いました。自分の感情や感覚、記憶が豊かになると思うので、現実に疲れた、接することに嫌気がさしている人に観てほしいです。一見すると不条理なことが出て来ますが、誰かしらの感情に寄りそうような映画だと思います。

稲葉：観る層を選ばない作品ですよね。人生のどの段階、あらゆる体調で観てもいい。僕の場合、韓国映画を観る時にけっこう覚悟がいるものなのですが（笑）、早朝でも深夜でも、どのタイミングでも大丈夫。それぞれのノスタルジーを呼び起こしてくれるような作品だと思いました。

●演じた役柄については、どう作り上げていきましたか？

監督：全シーンのリハーサルをしました。ほぼ全キャスト集まって、合わせていただいた上で、方向性を調整して作りましたね。もともとおふたりには演技に対してのしっかりした信頼があったので心配はなかったのですが、濃いキャラクターが多いのでそちらが心配ではありました（笑）。

橋本：ちばしんは両親の期待を背負っていたが、大学受験に失敗して挫折してしまってからというもの、人との距離を置いてしまい、そこがスタートだと理解しました。30歳になるまでの人生の経歴を僕なりにちゃんと考えたので、それさえあれば、後はちばちんとして（お芝居として）受け答えていけると思ったので、そこを考えた記憶はあります。

●ながちんは最初、突拍子もない相談を持ちかけてくるキャラクターですが、どのように演じようと思いましたか？

稲葉：まずながちんって、いい奴だなって思ったんです。いい奴って理屈じゃなくて、接した時にその感触ってあるものなんですよね。ながちんには「あいつ、いい奴だな」と、みんなに思わせるパワーがあるイメージだったので、小細工しないようにしようと思いました。反対に狙ってしまうと、あんまりいい奴っぽくならないような気がしていました。

監督：僕はウソがなるべく少ないほうが演技としては面白いと思っていて、ヘンなおじさんや車を盗む女たちにしても、その人たちの理由付けを、それぞれの役者さんがしてくれていると安心して観られると思うんです。演出する時も気をつけていて「普通はこうだよね」とか「絶対こう」ということはしないんです。世の中には時々信じられないような状況がありますから、おふたりはそれをちゃんと理解してくれていたと思います。

●最後になりますが、今回の映画を楽しみに待っている方たちへメッセージをお願いします。

橋本：人と人の距離が少し空いてしまった昨今ですが、過ぎた時間は取り戻すことは出来ないからこそ、会いたいと思った気持ちが立ち上った瞬間に、僕は人に会いに行こうと思います。猪股監督の切なる想いが、多くの人の繋がりを経て、公開というところまで来ることができました。純粋な思いが結実した、ちょっぴり不思議で、なんだか泥臭い本作が、どうか多くの方に届きますように。

稲葉：この度たくさんの方々からご支援をいただいて本公開が決定しました。本当にありがとうございます。初めて脚本を読んだ時も撮影中もそれを経て完成した映画を観た時も、作品に詰まった優しさを感じて心が温かくなりました。なんだか愛おしくなる、ちばしんとながちんの無鉄砲な旅路を映画館で見届けていただけたら幸いです。

監督：本作は自分自身のあの頃の親友に向けて作った作品です。コロナ禍で人と人との距離が遠くなり、出会い辛くなった時期だかたこその作品だと思っています。この作品を観ていただいた時にあの頃の親友ではなくても誰かに会ってみようかな、なんてことを思ってもらえるきっかけになれたらとってもうれしいです。