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映画『大名倒産』松山ケンイチインタビュー「“節約”の工夫、人と人との繋がり方が理想的」

ガジェット通信 / 2023年6月23日 12時0分

この度、数々のヒット作を生み出しているベストセラー作家・浅田次郎のノンストップ時代小説「大名倒産」(文春文庫刊)が、ついに実写映画化!いよいよ6月23日(金)より全国公開となります。

ある日突然、徳川家康の子孫だと言われ、越後丹生山藩の若殿となる⻘年・松平小四郎(神木隆之介)。庶⺠から一国の殿様へと、まさにシンデレラストーリー!かと思ったのもつかの間、実は25万両、現在の価値で借金100億を抱えるワケありビンボー藩だった!しかも、返済できなければ藩は倒産、小四郎は切腹!?いきなり絶体絶命の大ピンチ!!どうする、小四郎――!?

本作で、神木隆之介さん演じる松平小四郎の兄、松平新次郎を演じた松山ケンイチさんに映画の魅力についてお話を伺いました。

――本作とても楽しく拝見させていただきました。「節約をみんなで頑張る」時代劇というユニークな設定ですが、松山さんはこのテーマをどの様に感じましたか?

節約って1人でも取り組むことは出来ると思うんですけど、ここまで大きなコミュニティで行おうとするとすごく難しいなと思いました。そういう意味で節約を“戦”と表現しているんだなと。大きなコミュニティの中で節約するというのは、自分を守るための手段でもあると思うんですよ。色々な人との繋がりを持たなければいけないし、繋がりを作る努力をしなきゃいけない。それは自分が幸せになるための節約ではあるんですけど、最終的には自分と繋がった人も幸せにならなければ、自分が幸せになれないじゃないですか。小四郎がやろうとしているビジネスは、いろんな人と関係を持ちながら救済もしているというのが、ものすごく理想的だなと思います。

――現在で言うSDGsやリサイクルといったテーマも描いていますが、お金や物がないからこそみんなで知恵を出して工夫するという先人たちの考え方が素晴らしいですよね。

本来は製品の“寿命”みたいなものってほとんどないんですよね。普通は服が破けたら買い替えたりとか、匂いが取れないから捨てたりしますよね。生地としてはまだまだ使えるのにも関わらず。当時って今とは違って何十年も使い続けるというのが当たり前な感覚で、使えなくなっても直して使い続けることも多いんです。僕もこの作品を見ていて、昔には存在していたものが新しい価値観のせいで忘れ去られてしまうことへの危機感を感じましたし、そこは自分の中で取り戻したいなと感じました。そういう意味でも色々と思い出させてくれたり、ハッと気づかせてくれたりした作品になりました。

――本作の中でも「小四郎が廃れていた丹生山藩の名産・塩引き鮭を復活させようとする」というシーンがありますが、先人の知恵から学ぶということは大切ですよね。

塩引き鮭を復活させるシーン良いですよね。映画の中の小四郎は色々な付加価値をつけたり、色々な仕組みを作って、みんながきちんと働ける場所を作りつつ復活させていく。さらにブランディングも出来ているわけですからね。今の日本ではそうした技術が海外からの輸入で賄われてたりとかもするじゃないですか。そうやってどんどん日本の伝統が失われてく部分もあるので、日本で元々職人をやっていた人たちをどういう風に復活させるのか、また伝統文化をどうやって成立させていくのかということはこれから考えたいなと思うし、個人的に日本の課題なんじゃないかなと思っています。

――時代劇エンターテインメントとして楽しみつつ、物に対する大切な考え方を学べる作品だなと私も感じました。新次郎という役柄については、どの様に演じようと工夫しましたか?

新次郎は今で言うと何かしらの特性を持った人です。でも、この当時は普通の環境の中で普通の人として暮らしていて、それが特別なものではないという認識があると思うんです。そんな新次郎の無垢さをどうにか表現したいなと思って、近くにいた前田監督を真っ先に参考にさせていただきました。監督はすごく純粋無垢な方なので、新次郎のピュアでまっすぐな部分を表現するためにはお手本にすべき人物だと感じたんです。監督とは僕が20代前半からのお付き合いなんですけど、その年月の中で感じてきたことをそのまま監督の前でやって出来上がったのが新次郎です。

あとは、無垢で居続けることって、子供のときは可愛いとかってなりますけど、大人になるとそれが通用しなくなるというか、受け入れられなくなってしまうようなところがあるじゃないですか。その無垢さをどうしたら上手く表現できるかというところを意識しました。

――長いお付き合いの中で、変わらない無垢さを感じるというのは素敵ですよね。

監督の作品を見ていると、音楽の使い方が少し変わっていて、そこに監督の無垢な部分が現れていると思っています。他にも、「どんな映画が好きですか?」という質問をされた時に、他の監督さんはマニアックな作品を上げていく中で、前田監督は『ジョーズ』って答えたらしいんですよ。『ジョーズ』って昔からみんなが恐怖の対象とする存在じゃないですか。観客の目線も持ち合わせているという意味で無垢だなと感じます。

――普段から他人を参考に役を作り上げていくことが多いのでしょうか?

それがほとんどですね。だからこそ、色々な人と出会っていろんな発見をすることが大事だなと。自分の中だけで理論を組み立てて作り上げるというのはあまりにも思考が狭いと思うんです。なので、色々な人と出会って自分の世界を広げていくことで知見を広げていくことは意識しています。

――主演を務めた神木さんとは何度か共演経験があると思いますが、今回はどの様なコミュニケーションをとりましたか?

主演としての気遣いや緊張、気負いみたいなものは絶対に感じていたと思うのですが、彼はあんまりそういうものも表に出さないですし、本当にリラックスしている感じがあったので、すごく安心しました。

神木くんは誰とでも会話が出来る人です。コミュニケーション能力が高いし、何よりも一緒にいると安心しますね。神木くんと話していると、年上だとか、年下だとか、女性だとか、男性だとか、そういうことは関係なく、人を真っ直ぐに見てくれているなと感じます。僕は神木くんとはよくアニメの話をするんですよ。「なんか面白いアニメあった?」って神木くんに聞くと必ず教えてくれます(笑)。

――素敵ですね!神木さんにオススメされてご覧になった作品を教えていただけますか?

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、アニメシリーズを一気に観て、その後に劇場版も観ました。劇場版は単体でも素晴らしかったですが、アニメシリーズをちゃんと全部観てからこその感動がありましたね。

――私も『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が大好きなので、嬉しいです!ちなみに今日着ていらっしゃるTシャツは松山さんが手掛けられているブランドのものということですが、イラストが素敵ですね。

ありがとうございます。これは、久遠チョコレートというチョコレートブランドとの繋がりで出来上がったTシャツになります。このチョコレート屋さんは、シングルマザーや障がい者の方がたくさん働いている会社で、すごく美味しいのでぜひ食べていただきたいです。

――松山さんのされている活動自体が、本作のテーマでもある「みんなで良い物を生み出す仕組み作り」ということにも通じていますね。今日は素敵なお話をありがとうございました!

撮影:宮本美和

スタイリング:五十嵐 堂寿

ヘアメイク:勇見勝彦(THYMON Inc.)

衣装:パンツ¥49,500(イーストハーバーサープラス/エスディーアイ)、モミジ アーティストTシャツwith片岡泉(toridesign)\22,000(momiji/オーロラ)価格:税込み22,000円、他私物

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