伝統的な日本の姿を海外スタッフが壮大に映し出す 映画『山女』が国際的な制作チームを編成した背景に迫る！

山田杏奈主演、福永壮志監督の映画『山女』が、6月30日（金）より全国順次公開を迎えます。この度、日本人監督が国際的なチームを編成した本作の制作秘話が到着しました。

大飢饉に襲われた18世紀末の東北の寒村。先代の罪を負った家の娘・凛は、人々から蔑まされながらも逞しく生きている。ある日、飢えに耐えかねた父の伊兵衛が盗みを働いてしまう。父の罪を被り、自ら村を去り、禁じられた山へと足を踏み入れる凛。そこで伝説の存在として恐れられる“山男”と出会い、凛の運命は大きく動き出す――。

柳田國男の名著「遠野物語」から着想を得た本作は、自然を前にしてあまりに無力な人間の脆さ、村社会の持つ閉鎖性と同調圧力、身分や性別における差別、信仰の敬虔さと危うさを浮き彫りにしながら、一人の女性が自らの意思で人生を選び取るまでを描いたオリジナルストーリー。自分らしく生きること、人間らしさとは、何なのか。凛の物語と彼女の下した決断が、時代を超え、いまを生きる私たちへ問いかけます。

主人公の凛を演じるのは、『樹海村』『ひらいて』など主演作が相次ぎ、今最もスクリーンに愛される女優・山田杏奈。さらに驚くべき変貌で“山男”になりきった森山未來、生活に苦悩する凛の父・伊兵衛を永瀬正敏が演じ、村人たちには、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでんら日本の映画界に欠かせない実力派俳優が集結しています。

プロデューサー、撮影監督、劇伴などにおいて様々なルーツを持つスタッフが集う本作。18世紀後半の東北を描く上で敢えて国際的な制作チームを編成する背景に迫る！　本作の監督を務めるのは、ニューヨークで映画を学び、グローバルな制作体制で独自の作品世界を追求してきた福永壮志。初の長編劇映画の『リベリアの白い血』はベルリン国際映画祭に出品、2作目の『アイヌモシㇼ』もトライベッカ映画祭で審査員特別賞を受賞し、本作でも東京国際映画祭を皮切りに、香港国際映画祭やカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭へ出品され、国際舞台でその存在感を強めている。

長い海外生活を経て、日本や日本人のルーツへの回帰に目を向けた福永監督が心惹かれたのは、過去の風習や精神性が凝縮された⺠話。中でも柳田國男の「遠野物語」に収められた、岩手県遠野地方に伝わる⺠話に着想を得て、劇作家で放映中の NHK 連続テレビ小説「らんまん」(23)の脚本を手がける⻑田育恵を共同脚本にむかえ、現代につながる社会の歪みとそこに生きる人々の物語を作り上げた。

200年以上前の日本を舞台にした映画『山女』は、昔から続く日本の自然風景を壮大かつ神秘的に映し出しているが、その制作チームは実に国際色豊か。「いかに多様な視点とアプローチを持って制作できるかをプロデューサーと何度も話し合いました」と語る福永監督が編成した制作チームには、プロデューサーに『アイヌモシㇼ』からの連投となる米出身のエリック・ニアリと日本出身の三宅はるえ、そしてNHK大河ドラマなど数多くのドラマを携わってきた家富未央、撮影監督にドラマ「TOKYO VICE」 (22/HBO)のダニエル・サティノフ、照明に『ヘルドックス』(22)など原田眞人監督作ほか多数手がける宮西孝明、編集にハワイ州ホノルル出身のクリストファー・マコト・ヨギ、音楽に台北出身でカナダやアメリカを転々としながら育ったアレックス・チャン・ハンタイ、整音にロサンゼルスを拠点とするチェ・ソンロクといった多様な視点とルーツ、経験を持つスタッフが起用されています。

特に撮影現場を共にする撮影監督について福永監督は、「海外の撮影監督と撮ることには、日本の撮影現場にある独特の流れや雰囲気、一定のルールとは違う形で進めたいというねらいもあります」と語っており、本作で初タッグとなったダニエル・サティノフを「この作品について話し合い、彼とならいいものが作れると思いました。彼が持つ独特の視点で、求めていたものを想像以上に表現してくれました」と絶賛。国籍も性別も混合のボーダーレスなチームは、現場における雰囲気作りや撮影の進行においても効果的に作用していたよう。

近年では少子高齢化が進んだ日本の近未来を描き、第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」にてカメラ・ドール特別表彰を受けた早川千絵監督の『PLAN75』や、日本の入管問題を描き、第72回ベルリン国際映画祭アムネスティ国際映画賞特別表彰を受けた川和田恵真監督の『マイスモールランド』など日本独自の社会問題が描かれている作品でも、海外スタッフを含めた制作チームが編成されており、国際的にも高い評価を受けている。変革期にある日本の映画制作の現場にとって多様な視点は不可欠であり、海外のスタッフを含めて制作チームを編成することは今後の映画制作のスタンダードとなるかもしれません。

さまざまなルーツを持つスタッフを集め、極めて日本的な世界を表現している本作。18世紀後半の東北の村を描いているものの、時代を超えて現代に繋がる物語に、ぜひご注目を。『山女』は、6月30日（金）ユーロスペース、シネスイッチ銀座、7月1日（土）新宿K’s cinemaほか全国順次公開。

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