実際の音声で事件を再現する異色シリーズ「エンフィールドのポルターガイスト」 視聴者を怖がらせる“サウンド”の秘訣[ホラー通信]
ガジェット通信 / 2023年11月8日 23時0分
世界でもっとも有名なポルターガイスト事件を、当時の音声記録とともに再現するApple TV+オリジナルシリーズ「エンフィールドのポルターガイスト」が現在配信中。重要なポイントである“サウンド”について、本作のサウンドデザイナーが語ったインタビューをご紹介する。
映画『死霊館 エンフィールド事件』のモデルになり、その他多数の映画やドラマにも影響を与えた、イギリス・エンフィールドで起きたポルターガイスト事件。母と子4人が暮らす家に長期に渡って奇妙な現象が起き続け、当事者以外にも多数の目撃者がいる。当時、英国心霊調査協会がこの事件について詳しく調査をしており、インタビューを含めると250時間以上の音声記録が残されている。本作では、実際の音声に俳優の演技(唇の動きも含め)を合わせる形で当時の様子の再現を試みている。ドキュメンタリー作品を多数手掛けてきたジェリー・ロースウェルが監督を務めた。
本作にサウンドデザイナーとして参加したベン・ベアード氏は、「事件についてはもちろん前から知っていましたし、今さらこの物語について何か新しく語ることができるだろうかと思いました」と、オファーを受けたときの印象を振り返る。「ジェリー・ロースウェルが監督、ニック・ライアンがサウンドデザインを担当すると聞いて、自分もそこに参加できることを非常に嬉しく思いました。ジェリーは新しいアプローチを見つけ出そうとしていましたし、間違いなくそれを見つけ出したと思います」
本作を作り上げる上で、250時間を超える音声記録をすべて確認する必要があった。その作業はロースウェル監督とライアン氏とベアード氏で手分けして行われたが、記録された音声の大部分は“テープの音”という結果に。しかしそこには、事件を調査した英国心霊調査協会のモリス・グロスの音声も含まれていた。ベアード氏は「何度か聞きましたが、モリスが強い確信を持っているので、非常に説得力があると思います。説得力がありすぎて疑わしくなってくるほどです。私自身、これは全部真実なのだろうかと何度も疑いを抱きました」と、音声記録に対峙した印象を語る。
本作のサウンドデザインは、実際の音声記録に加え、本作のためにベアード氏らが録音した足音、移動や動作の音、背景音といった効果音など、多数の層からなっているという。ベアード氏はその中でも興味深いものとして“ナレーション”を挙げている。「ナレーションは私たちの作り出す層(効果音)とテープの層(音声記録)の中間に位置づけ、60年代のテープの音声に近づけるため昔ながらのリボンマイクで録音しました」。そして当時を知る人々のインタビューのシーンについては「関係者がそれぞれの想いを述べたもので、外側の層の私たちに近い位置づけです。最新の高音質なサウンドで、彼らと同じ部屋にいるかのように感じることができます」と、当時をよりリアルに表現するために繊細な“音の層”を作り出したことを明かした。
ホラー作品ではサウンドが重要な要素となるが、ベアード氏はその効果についてこう語っている。
「サウンドによって、その場に存在しないものを作り出したり、見ているものとは真逆の雰囲気を醸し出したりすることができます。ドキッとする瞬間は、流血しているなどの視覚的表現でも作り出せますが、サウンドによるところも非常に大きいのは間違いありません。ただし、音がしないのもサウンドの重要な部分であり、ホラーでは、サウンドを一切使わずに緊張感を出すという手法がときどき用いられます。視聴者は無防備な感覚を味わい、突然どこにも逃げ隠れできなくなります。視聴者がそのように無防備な状態になってしまえばこっちのもので、好きなように怖がらせることができます」
また、実際の音声記録を使用している点について、「人は多くの場合、見たり聞いたりしたものによって考え方を操られ、それを真実だと思い込むようになります。オリジナルの録音を提示したり使用したりすれば、その効果はさらに強まります」と、その効果を語る。
そして最後に、日本のホラーファンに向けて、「ホラー映画というのは、まったくの架空の状況を作り出しつつ、ある程度真実だと視聴者に思わせるような形で表現されます。つまり、悪いことが起きると、視聴者はそれを真実だと感じます。このシリーズにはその手の仕掛けが随所にちりばめられています」と、本作の見どころを伝えた。
Apple TV+「エンフィールドのポルターガイスト」配信中
画像提供:Apple TV+
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