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映画『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』石川俊介監督インタビュー「“原作が持つ魅力の伝え方”ということをたくさん考えました」

ガジェット通信 / 2024年5月14日 10時0分

原作コミックス累計発行部数は 3000 万部を突破、2022 年に TV アニメが放送され大人気を博した『ブルーロック』(講談社「週刊少年マガジン」連載)。

“ブルーロック(青い監獄)”に集められた 300 人の高校生 FW (フォワード)たちが、世界一のエゴイストストライカーを目指して己のサッカー生命とゴールをかけて挑むデ スゲームのような作風は、“史上最もアツく、最もイカれたサッカーアニメ”として幅広い年代から注目を集め、 アプリゲーム、舞台化など多方面での展開も話題を呼んでいる。そんな『ブルーロック』シリーズ初の映画化となる、『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』が 大ヒット公開中。

今回はTVシリーズの副監督を担当し、劇場版の監督を務めた石川俊介さんにお話を伺いました!

――本作は大人気シリーズ初の映画化となりますが、監督に抜擢された時のお気持ちはいかがでしたか?

TVアニメ『ブルーロック』がメインスタッフとして初めて関わる作品で、自分の転機になった作品でもあります。なので、改めて劇場版の監督というお話をいただけたことはかなりアツく、滾るストライカーの様な気持ちになりました。周囲のメインスタッフにはTVからの続投でご参加頂けたので、脚本家の岸本さんとお会いして、息つく間もなく劇場版の準備に入っていきました。TVシリーズで監督を務めていた渡邉(徹明)さんにもあたたかく応援いただきました。

――TVシリーズ、劇場版と携わってきて『ブルーロック』がこれだけ盛り上がる魅力というのはどの様なところだと感じていますか?

たくさんあると思いますが、僕が感じる魅力の一つは、サッカー漫画の枠にとらわれないデスゲーム的な展開です。様々な設定や仕掛けが面白くて、常にインパクトを絶やさない構成に目が離せなくなります。それでいて幅広い世代に伝わる王道展開もしっかりと抑えている。

そしてやっぱり絵心の言葉は印象的ですよね。真っ向から日本サッカー界に立ち向かっていくようなセリフまわし。「既存の概念に対してぶち当たっていけ」という強いメッセージ感。キャラクターそれぞれの個性に合わせた壁の超え方を描いているところもドラマ性が多彩で面白いと思います。金城宗幸先生の素晴らしいストーリーに、ノ村優介先生の力強い絵が合わさって、いちファンとしてページをめくる手が止まらなくなります。

――おっしゃるとおり、かなり強いパワーを感じるコミックとアニメーションですよね。劇場版になるとさらにパワーアップしそうです。

劇場版ではかなりドラマ部分にクローズアップしています。凪と玲王の関係性をしっかりと描くことで、2人の心情や成長を表現したいと思いました。原作漫画も「ブルーロック -EPISODE 凪-」として、描き方の違いや三宮宏太先生の絵も入っていて、「ブルーロック」でありながら少し雰囲気が違うところもありますよね。そういったところも加味して、本編とはちょっと違うテイストの『ブルーロック』を楽しんでいただきたいなと思います。

凪は感情があまり表情に出ないですし、成長していく過程に強い変化があるキャラクターではないので、凪が変わっていくポイントをどう描こうか考えました。凪の存在感が出る一瞬のシュートやエゴが芽生えていくには過程こだわっています玲王の視点や気持ちにもご注目ください。“ブルーロック”で出会った選りすぐりの選手からの影響、そこから変わっていく凪の心境、そして二人の関係値の移ろいと成長を丁寧に描いています。

あとは音楽です。劇場版ということで、「フィルムスコアリング」というシーンに合わせて楽曲を作っていただく手法を使わせていただき、より細かいやり取りをさせてもらいました。物語を効果的に演出できる音楽の位置を考え、よりそのシーンに沿うような音楽設計にしています。

――素晴らしいですね。私も完成版を拝見して、音楽がさらにシーンの迫力を表現していたと感じました。凪というキャラクターにはどの様な魅力を感じますか?

常に“素”の姿を見せてくれて、飾らない部分にすごく親近感が湧くというか。特別な存在で、ヒーローだけど遠い存在に感じないというか、見ていて気持ち良く応援出来るキャラクターだと思います。

――声を担当する島﨑信長さんには何かお願いなどはしましたか?

TVシリーズの時にキャラクターはある程度出来上がっていたので、物語の序盤、覚醒前のストライカーであり何にも目覚めていない段階の凪に対しては少し話をしました。本作は「凪の成長物語」ということを第一テーマとして掲げていたので、一本のストーリーの中で凪の変化を感じられる様にアフレコ作業を進めました。

――玲王の魅力はいかがですか?

玲王自身すごく能力の高いキャラクターですが、凪と比べるとちょっと足りない天才なんですよね。「99%の天才」だと僕は思っていて、残り1%の欠けた部分をどう補うのか、周りとのやり取りを含めて、そこに玲王らしさが詰まっていると思います。特に劇場版のエピソードだと、本当はこんなことを思っていたんだという弱い部分が見えたり、本当に認めた仲間に対してすごく心を寄せるキャラクターであったり。 これまでの潔目線の本編だと玲王は完璧主義に見えると思うのですが、劇場版では違う玲王の魅力を出したいなと考えていました。

――玲王の声を担当した内田雄馬さんとは何かお話をされましたか?

内田さんは本作での玲王をしっかりとらえられていましたので、ほぼおまかせしていました。凪と玲王2人の心情にフォーカスしていく構成になっているので、そこに合わせて「今回はここの部分は抑えてほしい」といった全体の流れとしてのお話をさせていただくことはありました。

――凪と玲王の友情やすれ違い、そこからの成長というのは本当に泣かされますね。

今回はとにかく凪を主役にしたかったので、「凪の成長物語をどう描くか」ということをしっかりと決めた上で進めないと、歯切れの悪い形になってしまうと思っていて。なので、冒頭とラストに原作には無い劇場版オリジナルのストーリーを入れさせてもらいました。ラストに関しては僕が提案したものが物語として完結しすぎていた部分があったのですが、金城先生と相談したところ、新たに書き下ろしてくださって。それをそのまま活かした上で、さらにコンテでやり取りをしながらまとめていきました。

――スタッフの皆さん一丸となっての作品作り、貴重なお話をありがとうございます。石川監督が劇場版の制作を経て学びを得たのはどんなことですか?

「原作が持つ魅力の伝え方」ということをたくさん考えました。原作の魅力を引き立てるための追求の仕方というか。これはTVシリーズからのお話でもあるのですが、『ブルーロック』は“覚醒”した時の眼の変化など、眼の表現が何パターンもあって。キャラクターや展開に合わせて、オーラ、背景も変えています。例えば展開によって動きのあるモーショングラフィックスを使った背景を使っていたりとかですね。ノ村先生が描くインパクトのある表現は作品の大きな魅力であって、そこに関してはTVシリーズの時から時間をかけて作らせてもらっています。劇場版でもその成果がしっかり出せたと思っています。『ブルーロック』に出会っていなければ、細かな表現へのこだわりがストーリーやキャラクターの魅力にここまで繋がっていくものだと気付けなかったかもしれないので、本当にありがたい経験をさせてもらいました。

――サッカーをテーマにしていますけれど、夢中になっているものがある人、逆にそれを見つけたい人、様々な方がアツくなれる作品ですね。

僕は高校時代に夢中になっていたことが無かったので、凪や玲王の姿を見ているといいなと思いますし、憧れがありますね。壁に立ち向かう力強さ、ぶち壊していく姿が爽快に描かれています。観てくださる方の心にある何かしらの“エゴ”を揺さぶってくれる作品になっていると思いますので、ぜひ劇場の大きなスクリーンと大音響で楽しんでいただきたいです。

――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

(C)金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会

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