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映画『スミコ22』福岡佐和子監督&主演・堀春菜インタビュー「誰かが本当に思っていることかもしれないと感じられるような映画」

ガジェット通信 / 2024年6月29日 17時0分

福井映画祭15THにて観客賞&おおぶ映画祭2023入選、その後劇場公開に至り話題を呼んだ映画『まだ君を知らない』を手掛けた福岡佐和子とはまださつきによる映像制作ユニット「しどろもどリ」による新作劇映画『スミコ22』が6月29日より公開となります。福岡佐和子監督自身の体験に基づくオリジナル企画で、5年ぶりの映画主演となる堀春菜を迎え、等身大の葛藤をユーモラスに描いていた本作。

【あらすじ】友人とエビフライパーティーをしている静岡スミコはふと思う。自分の感覚がいつの間にかひどく曖昧なものになっている。何が猛烈に好きで何が耐え難く嫌いか、何を面白く思っていて何を喋りたいのか、そのどれをもちっとも感じられないまま人生を過ごしてしまっていると。 それからのスミコは自分と会話しながら日々を過ごす。

福岡佐和子監督と、堀春菜さんにお話を伺いました!

――本作とても楽しく拝見させていただきました。とてもチャーミングでありながらも、自分はどうだろう?と考えてしまう様な作品で。どの様なところから着想を得たのでしょうか。

福岡監督:私は大学を卒業して一度就職したのですが、スミコと同じように4か月で辞めてしまって。辞めた時に、自分が何を考えているのかちゃんと“分かれてないな”という感覚になったんです。大学時代から映画を作っていて、その後も作り続けたいと思っていたので、とても個人的な、誰かが本当に思っていることかもしれないと感じられるような映画を作りたいなという気持ちになっていて。じゃあ1回自分の考えていることをいっぱい書き出してみようと思ってから、毎日日記をつけて。そこから膨らんでいった感じです。

――ご自身の経験が活きているのですね。

福岡:はい。でもスミコを自分とは全く思わず。誰かの思っていることを作るためには、誰かの本当に思っていることである必要があるなと思っていたので、自分が思っていることがベースになっています。その中でスミコ=自分とならない様に作りたいなと思いました。

――スミコがとても愛らしかったのですが、堀さんにお願いしたきっかけはどんなことですか?

福岡監督:出会いは、プロデューサーの髭野さんがひらいてくださったワークショップなのですが、スミコを堀さんにお願いしたことについて、つい最近やっと言語化出来たんです。ワークショップで時間をかけて自己紹介しているところや、話をしているところを見させていただいた時に、堀さんの一見柔らかくて、何かを確信している様には見えないのだけれどすごく芯がある感じがスミコと重なるなと。ワークショップ後、オファーをするまでにちょっと時間が空いたんですけど、ずっと堀さんのことは心に残り続けていました。

堀:何回かあるワークショップの初回に私は参加していて、福岡監督が『スミコ22』という映画を撮るということは知っていましたが、その為のオーディションとかではなかったので、お話をいただいた時にはビックリしました。

――台本を読んだ時の感想と、どの様にスミコを演じようと思いましたか?

堀:スミコが楽しそうな時は楽しく過ごして。歩くシーンが多かったのですが、スミコと同じ気持ちで歩くことを心がけていました。台本を読んだ時には気付けなかったのですが、最近気付いたことがあって。監督は福岡佐和子さんというお名前ですが、スミコって静岡スミコが本名なんですね。あ、福岡と静岡だ!って。

福岡監督:ちょっとそこまで考えていたか忘れちゃいました。私、役柄の名前はピロンってつけちゃうから(笑)。

堀:そうなんですね(笑)。

――福岡と静岡、確かにつながりを感じますし、他の登場人物のお名前も面白いのでぜひチェックですよね! 会話が本当に自然体でリアルだったのですが、言葉たちは監督の日頃のメモから書かれているのですか?

福岡監督:実際にした会話も多いし、自販機のシーン結構昔のメモなんですよね。大学3年生の時に書いたメモがあって、それをもとにしています。サンドウィッチのシーンも、実際にほぼ同じ話をしてくれた人がいて。映画と違ってサンドウィッチを潰しながらではなかったのですが。

堀:素敵なセリフが多いですよね。ハナと洗濯物を干しているベランダのシーンで、「ゆで卵は割り続けられるからいいよね」みたいなセリフがあるんですけど、すごく好きです。

福岡:あれは完全に演じている(はまだ)さつきちゃんご本人が言っていた言葉で。自分の身の回りの人が本当に思っていることを入れたいなと思っていて、脚本を書いている時から、さつきちゃんに「今思っていることを教えて」と動画をまわしたりしていました。その時は、ゆで卵を食べさせたいっていうのを先に決めて。

――私、「目玉焼きは調味料ありきの食べ物か、そうではないか」という会話すごく好きです。

福岡:あれも本当に、さつきちゃんが「卵には何も調味料をつけない派」と言っていて、それが可笑しいなって私はずっと思っていたんです。卵は絶妙なんですけど、私は豆腐は調味料のためにあるのかなって思っています。

堀:私は卵には塩をかけて食べています。でも調味料ありきとは思っていないです。

――映画が公開されたら観客の方にもアンケートしていただきたいくらいです(笑)。あと、居酒屋でバイト中のスミコの「いらっしゃいませー」を「嵐山動物園」に変えてばれないか?というシーンも最高でした。

福岡:私も会社を辞めた後に居酒屋で働き始めて、周りにどうチューニングを合わせ ていこうかって結構悩んでいたんですけど、最初に「この場所最高だ」って思ったタイミングが、まさにあのシーンみたいな感じだったんですよね。「いらっしゃいませー」って全然言えないんですよね、と相談したら「エアロスミス〜」って言ったら大丈夫だよって言ってくれて。なんか嬉しかったんですよね、そのアイデアをもらったことが。

堀:スミコが、あのシーンをきっかけに「ここのバイト先で呼吸がしやすくなった」というのが、良い映画だなあと思います。

福岡:良いと思った瞬間、良いと思えた瞬間、みんな良い人だから、そんなシーンになっていたら嬉しいですね。

堀:好きなシーンであり、あのシーンが1番難しかったかもしれないです。「嵐山動物園〜」って最初に言った時はすごく面白かったのに、練習していくうちに慣れてきちゃって面白くなくなってきて焦りました(笑)。

福岡:難しいですよね、俳優さんだから「嵐山動物園〜」をいうのがどんどん上手になっていく(笑)。一番最初のカットを使わせてもらいました。

――監督と堀さんはスミコみたいに「自分の感覚がいつの間にかひどく曖昧なものになっている」と感じることはありますか?

堀:あるかもしれないんですけど、あんまり覚えてないっていうか、私あまりメモとかはしないかわりに、instagramに思ったことを書いたりしていて。“堀ポエム”って言われることも多いのですが、自分の感情と向き合うのってそのくらいで、あとはただ寝たら忘れちゃいますね。

――俳優さんということもあるかもしれないですよね。色々な役を演じるので。

堀:そうかもしれないです。役柄を通して感情を発散しているから、そこでうまく調和されて、自分の悩みはスポーンって、どっかに行っちゃう。

福岡:私は、スミコと同じ様な感覚になることがめちゃめちゃあります。それは解決されないまま続いていっているのですが、でも忙しくなると「あれ、何考えてたっけな」って。

堀:リハーサル中に、監督に「今どんな気持ちですか?」と聞いたら、「今『スミコ22』で言うと何ページのあのシーンくらいの気持ちです」って返事が来てすごいなと思いました。

――感情の辞書の様に台本が頭に入っていらっしゃったんですね!音楽もすごく素敵で、スミコの感情を表現していましたよね。

福岡:「ゴリラ祭―ズ」さんは、このお話のベースとなった日記を書いている時によく聴いていたアーティストで。音楽を誰にしようかなと思った時に、面識は無かったのですが思い切って連絡してみました。スミコの内側を描いている映画なので、BGMとしての映画音楽というよりも、感情の一つになる様な音楽を使いたい気持ちが最初からあったので、そういった考えをお話して作っていただきました。

堀:スミコの心拍数みたいに感じる時もありますよね。感情を代弁してくれるような音楽だなって。

――本当に素敵な音楽や美術、衣装で、それがストーリーにもさらに魅力を加えているなと感じました。最後に、劇中でのスミコの様にお2人が最近「思ったこと」を教えてください。

福岡:最近、蚊に刺され出したのですが、結構好きなんですよ。蚊に刺されて赤くなったところ。でも、腕の内側を刺された時は可愛いのに、日焼けしている外側にある蚊に刺されは可愛くないなって。白い腕の蚊に刺されは写真に撮っちゃうくらい可愛いんですけど。

堀:私は、最近猿にハマりました。先日高尾山に行ったのですが、途中に猿山があって、ついでのつもりで行ったら楽しすぎて、もうこれからは猿山のついでに高尾山に行こうと思うほどで。小猿もたくさんいて可愛かったですし、園長さんから説明を聞いたら、社会の縮図みたいな感じなんですよね。

福岡:猿山ってマジで“社会”って感じですよね。

堀:おやつを投げると、最初はボス猿が食べなくちゃいけなくて。でも10個くらい一気に投げると、自分にもまわってくるチャンスがあるからたくさんの猿が集まってくる。でもボス猿より先に手を出さない様にちゃんと周りを観察していて…。すごいです。

――今堀さんにお話いただいている瞬間が、『スミコ22』のワンシーンみたいでした。堀さんだったら「ハルナ27」みたいな感じで、色々な方の“スミコ22”的なことを聞いてみたいですね。

福岡:「ハルナ27」観たいですよね。そしていろんな人の本当に考えていることって気になるし、面白いので、この映画を観てくださった方が考えていることを教えてくれたら嬉しいです。

――今日は本当に楽しいお話をありがとうございました!

撮影:たむらとも

『スミコ22』

◆2024年6月29日(土)~

新宿K’s cinemaにてレイトショー!

(C)スミコ22

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