日本のインディ映画を直接海外で配給! 二ノ宮隆太郎監督作品『若武者』ロンドンプレミアウィークを振り返る
ガジェット通信 / 2024年7月19日 18時0分
映画制作プロダクション・株式会社コギトワークスによって「誰もが観たい映画ではなく、誰かが観たい映画をつくる」をミッションに設立された新邦画レーベルNew Counter Filmsによる製作第一弾作品である、二ノ宮隆太郎監督の映画『若武者』が、6月下旬にイギリス・ロンドンでのプレミアウィークを迎えた。Genesis CinemaやPhenix Cinemaなどといった、ロンドンの著名なアートハウス5館にて上映された。
映画『若武者』は、前作『逃げきれた夢』が第76回カンヌ国際映画祭に正式出品されるなど、国内外の映画ファンより高く評価されている二ノ宮隆太郎監督の最新作。これまで、様々な立場に置かれた人々の“生き様”に焦点を当て、ありのままの姿を映し出してきた二ノ宮監督が、本作では、人生に疑問を持ち、日常に行き場のない怒りを抱えながら生きる若者たちの姿を描きあげた。
『若武者』レビュー
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二ノ宮監督本人いわく「自分の腹の中の悪い感情を三つに分けて出し切った」とのことで、主人公である3人の若者はまさに尖りに尖っており、現代の若者が抱えうる鬱憤を惜しみなく他人にぶつけようとする。口も悪く暴力的で、他人への迷惑など顧みない彼らは、お互いを制御する術もなく、やがて自分たちの関係すらも変化してしまうほど暴走していく。
絵画的なカットで一場面一場面が美しく切り出されているが、その美しさとは対象的に、長回しで映される独白のようなセリフには、他者と自分自身すらも蔑み、社会を憎む若者の心の声がためらうこともなく吐き出されている。こういった邪悪さを隠そうともしない態度や言葉たちは、劇中であれば周りの人々の怒りを買い、危険なものとして扱われてはいるものの、現実では匿名でインターネット上にありふれているのではないかとも感じた。
SNSにおける心無い言葉や他人への挑発などは、人と人が対面する状況になれば、身を滅ぼすものに違いないということが映像化されたのではないかとも読み取れる。現代社会において、取り残されているように感じる人々からの、避けては通れない「反発」を3人の若者を鏡のようにして見事に映し出している。
日本から直接海外へ。コギトワークスの試み。
本作『若武者』は、コギトワークスによる新レーベルNew Counter Filmsによる第一弾映画。新進気鋭のクリエイター陣を起用し、エンターテイメント性を追及しながらも作品性・作家性を重視した映画を製作することで、今までにない日本映画のあり方を模索するという。
そして興味深いのは、配給を担うコギトワークスによる海外展開。独自の配給網で、海外のマーケットや配給会社を通さず、直接海外のアートハウスや劇場に売り込んだ。それによって、日本国内だけでなく、イギリス・ロンドンやアメリカ・ニューヨークなど、世界の劇場へほぼ同時期に届けることを可能にした。
ロンドンの上映では、各館の上映後には監督やプロデューサーとのQ&Aの時間も設けられ、現地の人からの多数の質問や賞賛の声が直接監督らに届けられた。海外で公開される邦画が、是枝監督や濱口監督作品など、国際的に著名な監督の作品ばかりになってしまいがちな現状の中、新しい枠組みで良質な邦画が海外の観客に届けられる画期的な配給方法だ。
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映画『箱男』8月23日(金)全国公開予定
また、コギトワークスの試みは『若武者』だけに留まらない。石井岳龍監督による阿部公房の代表作である同名小説を原作とした映画『箱男』も、コギトワークスによる制作。第74回ベルリン国際映画祭に「ベルリナーレ・スペシャル」部門にて正式出品され、日本での公開に先駆けて国際的に高い評価を受けている。『箱男』は8月23日(金)全国公開予定。
●『箱男』公式サイト:https://happinet-phantom.com/hakootoko/
映画『若武者』
公式サイト:https://www.wakamusha.com
監督・脚本:二ノ宮隆太郎
製作:コギトワークス U-NEXT
制作プロダクション・配給:コギトワークス
Presented by New Counter Films
出演:坂東龍汰/髙橋里恩/清水尚弥 他
Copyright 2023 “ 若武者” New Counter Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED
(執筆者: waiwai)
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