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“⼈⽣のかけがえのない瞬間”を描いた切なく美しい映画『SUPER HAPPY FOREVER』佐野弘樹&宮田佳典インタビュー

ガジェット通信 / 2024年10月8日 15時0分

五⼗嵐耕平監督による最新作『SUPER HAPPY FOREVER』が新宿武蔵野館ほか全国上映中です。本作は、あるリゾート地を5年ぶりに訪れた幼馴染の佐野と宮⽥が、佐野の亡き妻・凪(なぎ)と出会った思い出の場所を巡りながら、かつて失くした⾚い帽⼦を探すことから始まるひと夏の物語。第81回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部⾨では⽇本映画初となるオープニング上映作品として選出されたことでも話題を呼び、そのほかサン・セバスチャン、釜山、シカゴ、ロサンゼルスなど世界中の映画祭への正式出品が決定するなど、各国から注目を浴びています。

思いがけない出会いがもたらす幸せも、別離がもたらす悲しみも、⽉⽇とともに過ぎていく。しかし、“⼈⽣のかけがえのない瞬間”は、そんな時の流れにこそ隠れている。本作では5年前と現在という2つの時間の中で、「⻘春期の終わり」を迎えた⼈々の奇跡のようなひとときを、さりげなくも鮮やかに記録しています。本作に出演する佐野弘樹さん、宮田佳典さんに作品の魅力や撮影の思い出を伺いました。

――本作大変楽しく拝見させていただきました。観た瞬間に「これ好き」ってなる作品ってあると思うのですが、私にとってまさにそれでした。まず、恋愛の描き方も本当に素敵で胸キュンでした。本作に相応しい表現か分かりませんが…。

佐野:いえ!嬉しいです。僕らもこの映画での恋愛のシーンすごく好きなので。

宮田:僕も胸キュンしました。ホテルのドア前でのやりとりとかいいですよねえ。

――佐野と凪の「まだ一緒にいたいけど、言ったら迷惑かな?」という思いやりがすごく可愛らしいですよね…!本作は佐野さんと宮田さんが五十嵐監督にご連絡したことから企画がスタートしたそうですね。

佐野:6年前ほど前に連絡をさせていただきました。その時全然仕事がなくて、時間がめちゃくちゃあって、待っているだけじゃもったいない!と思い行動しはじめました。「良い映画を作ろう」みたいな考えのもと、宮田くんにその話をして。

宮田:僕もそう思っていたので一緒にやろうって。

佐野:2人だけで映画を作るということはあまり現実的では無かったので、自分が好きな作品の監督に自分たちを撮ってもらうのが1番早いんじゃないかと話がまとまってきて、五十嵐監督に連絡させていただきました。

――お2人の出会いはどんなことだったのですか?

宮田:『The 48 Hour Film Project』という映画祭で初めて佐野くんと出会って。年齢は7歳ぐらい違うんですが、役者としての考え方とか作品作りへの想いがピッタリ合ったんですよね。それがきっかけで色々話すようになりました。

佐野:色々な感覚が合うので、2人で話し合った景色は今でも結構覚えていますね。五十嵐監督を交えて3人で会った時に、宮田くんはパッションの人なので、もう「映画を撮ってください」とお願いする気満々だったんですが、俺的には「ちょっと待って、逆の立場でいきなり依頼されたらどうする?」と思ったので、まずはお互いを知っていこうと対話を重ねていきました。

――そこからどの様に映画作りに入っていきましたか?

宮田:最初は監督におまかせしようと思っていたんです。監督に撮りたいテーマやモチーフなどがあるだろうと勝手に思っていたので、そこに僕らが出させてもらったら幸せだなと。そうしたら、考えているものは無いということで。

佐野:そのとき、五十嵐監督には準備中の脚本や企画が特になかったんです。僕らが頼んだ手前、全部お願いしますというのは難しいと思うので、我々が脚本を書くからアイデアを一緒に出してくださいという形でスタートしました。

――脚本を執筆するなんて相当大変だったかと思います。

宮田:2人でたくさん話し合って、長編2本を書きました。2年かかりましたけど。

佐野:その時期に俳優の仲間を集めてワークショップみたいな、お芝居の練習をしていて、紙1枚に簡単な設定やシナリオを書くことがあったので、書くこと自体に抵抗は無かったです。見よう見まねでなんとか完成して。この映画にその脚本の原型は無いんですけどね。

――いつかお2人が書かれた脚本も拝見したいです。

佐野:いえ、もう読めないですよ!ひどくて(笑)。

宮田:その時は必死でしたけれど、改めて読むとあまり良くなくて(笑)。監督と久保寺(晃一)さんが脚本を書いてくださって本当に良かったです。3人で色々な話をして。プライベートなこととかも色々。五十嵐さんも日常に感じていることとかを話してくれて、そこからだんだん書きたいものが見つかってきて、「僕が書くよ」って言ってくれて。そんな流れだったと思います。

佐野:最初にお会いしてから2年ちょい経った時にそういうことを言ってくれたので、僕らが書いたものの形が無くても、2年間の中で色々な蓄積があるから、感覚が一緒になってきたというか。そこからまた会話して、ちょっとずつ人が増えて、この『SUPER HAPPY FOREVER』の土台が出来上がっていきました。

――セリフの生っぽさが本当に素敵でした。

佐野:演出も特に無くて、本当に自然にやらせてもらいました。本作に入る前に短編映画を同じチームで作らせてもらっていたので、演技の部分や表現したいことを共有出来ていることが大きかったです。緊張せず、気負わず出来ました。

宮田:五十嵐さんも久々の撮影だったと思うので、短編の撮影一日目だけは少し手探りな感じがありましたけれど、そのワクワク感も楽しかったです。

佐野:本作で描かれている空気感って、撮影当日とか数日前に初めて会って、なかなか醸し出せるものじゃないじゃないですか。そこに6年間かけた強みがあるなと思いますし、それが本当に嬉しかったです。

宮田:みんなで、特に3人で長く過ごしていた時間が映画に出ていると思います。

佐野:凪役に(山本)奈衣瑠さんが決まって、映画に加わった時に少し心配な部分もあったんです。この映画にノれていない人がいたら怖いし、でもノれてくれていたらもう何も不安は無く頑張ろう!と思えるから。奈衣瑠さんは一瞬にして仲間になれたし、この6年という時を一瞬にして超えてきてくれたので最高でした。

――とても素敵です。完成した作品をご覧になって、思いもひとしおだったのではないでしょうか。

宮田:脚本の段階から良い作品になると感じていたのですが、作品に関わりすぎていたので、最初は客観的に見るのが難しかったんです。それよりも、やっと完成したことへの想いがあふれてきました。そして改めて「五十嵐さんの映画っていいなあ」って思えて。

佐野:試写が始まる前に五十嵐さんの挨拶があって、「佐野くん、宮田くんがメールを送ってきてくれて、この映画に協力してくださる皆さんがいて、ようやく完成しました。ありがとうございました」と言われて、その言葉で泣きそうになりました。

宮田:すごく、感動しました。

佐野:試写で観終わったあとは、何にも考えられなくなって、席を立てませんでした。感動、安堵、喜びなど、色々な感情に包まれていましたね。

――たくさんあると思うのですが、特に好きなシーンをお聞きして良いですか?

宮田:佐野が凪を回想するところから映画がはじまって、後半で初めて動く凪が映るシーンがとても印象的でした。奈衣瑠ちゃんの身体を通して凪が歩いた瞬間が感動的で、「凪だ」って思ったんです。

佐野:俺もその瞬間大好き。あと、ハワイアンレストランでご飯を食べた後にタバコを吸いに行く流れが大好きで。あのシーンすごく楽しそうじゃないですか。元々のセリフもありますが、どんどんアドリブが加わっていって、超楽しかったし、完成した映画を観ても、自分がこんなにイキイキとした顔をしていたんだって印象的でした。

――私もどちらのシーンも大好きです!そしてカップラーメンを食べるシーンも大好きで、観終わったあとすぐに食べました。

佐野:それは嬉しい。狙い通りです。

宮田:食べたくなったら勝ちですよね。

――今日は本当に素敵なお話をありがとうございました!

撮影:オサダコウジ

【STORY】2023年8⽉19⽇、伊⾖にある海辺のリゾートホテルを訪れた幼馴染の佐野と宮⽥。まもなく閉館を迎えるこのホテルでは、アンをはじめとしたベトナム⼈の従業員たちが、ひと⾜早く退職⽇を迎えようとしている。佐野は、5年前にここで出会い恋に落ちた妻・凪を最近亡くしたばかりだった。妻との思い出に固執し⾃暴⾃棄になる姿を⾒かねて、宮⽥は友⼈として助⾔をするものの、あるセミナーに傾倒している宮⽥の⾔葉は佐野には届かない。2⼈は少ない⾔葉を交わしながら、閉店した思い出のレストランや遊覧船を巡り、かつて失くした⾚い帽⼦を探し始める。

佐野弘樹 宮⽥佳典 ⼭本奈⾐瑠 ホアン・ヌ・クイン

笠島智 海沼未⽻ ⾜⽴智充 影⼭祐⼦ ⽮嶋俊作

監督:五⼗嵐耕平

脚本:五⼗嵐耕平 久保寺晃⼀ ⾳楽︓櫻⽊⼤悟 (D.A.N.) 企画協⼒︓宮⽥佳典 佐野弘樹

プロデューサー:⼤⽊真琴 江本優作 共同プロデューサー︓マルタン・ベルティエ ダミアン・マニヴェル ラインプロデューサー︓上⽥真之

撮影:髙橋航 照明︓蟻正恭⼦ 美術︓布部雅⼈ 録⾳︓⾼橋⽞ ⾐裳︓淺井健登 ヘアメイク︓光岡真理奈 助監督︓太⽥達成 制作担当︓村上知穂

編集:⼤川景⼦ 五⼗嵐耕平 ダミアン・マニヴェル カラリスト︓ヨヴ・ムール リレコーディングミキサー︓シモン・アポストルー

サウンドエディター︓アガット・ポッシュ ルノー・バジュー スチール︓上妻森⼟

製作:NOBO MLD Films Incline LLP High Endz 制作プロダクション︓NOBO MLD FIlms 配給︓コピアポア・フィルム

助成:⽂化庁⽂化芸術振興費補助⾦(映画創造活動⽀援事業)|独⽴⾏政法⼈⽇本芸術⽂化振興会

lʼAide aux cinémas du monde Centre national du cinéma et de lʼimage animée Institut Français

(C)2024 NOBO/MLD Films/Incline/High Endz 2024年/⽇本=フランス/94分/DCP/カラー/1.85:1/5.1ch

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