大ヒット中の映画『ふれる。』前田拳太郎インタビュー「人間の心の機微がとても丁寧に描かれている」
ガジェット通信 / 2024年10月19日 8時0分
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2013)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015)、『空の青さを知る人よ』(2019)―“心揺さぶる”青春三部作を手がけた、監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀の3人が贈る、オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』が絶賛上映中です。
同じ島で育った幼馴染、秋と諒と優太。20歳になった三人は東京・高田馬場で共同生活を始める。BARでのアルバイト、不動産会社の営業、服飾デザイナーの専門学校生と生活はバラバラだが、いつも心は繋がっていた。それは島から連れてきた不思議な生き物「ふれる」がテレパシーにも似た謎の力で趣味も性格も違う彼らを結び付けていたからだ。お互いに触れ合えば口にしなくてもそれぞれの言葉が流れ込んでくる、そんな「ふれる」で結びついた3人の友情は、このままいつまでも続くはずだったー。「ふれる」の隠されたもう一つの力を知るまでは。
本作で、優太を演じた俳優の前田拳太郎さんにアフレコ収録での印象や、作品の魅力について伺いました。
――本作大変素晴らしかったです、素敵なキャラクターをありがとうございました。優太役へはどの様な経緯で参加が決まったのでしょうか?
今回はみんなオーディションだったと伺っています。長井監督、岡田さん(脚本)、田中さん(キャラクターデザイン・総作画監督)の3人による作品が元々好きだったので、この作品のオーディションの話をいただいた時、そんな大好きな皆さんの新作に絶対に出たい、絶対に頑張りたいと思いました。
――声のオーディションの経験はあったのでしょうか?
初めてでした。僕はアニメが大好きなので声優業にチャレンジしたいなと思っていて、ずっとチャンスを探している状況にこのお話をいただけたので。台本を持ってマイクの前に立ってお芝居をするということ自体にもすごく憧れがあったので、楽しくオーディションを受けさせていただきました。ブースに入る前は緊張していたのですが、入ったら緊張も無くなって。ブースに立てたことで一つ夢が叶った感覚だったんです。合格のお知らせをいただいた時は、もう飛び跳ねて喜びました(笑)。僕がアニメ好きだと知っている友達もニュースを見て喜んでくれましたし、家族ももちろん応援してくれて、先日「タクシーの中で予告編が流れていたよ!」と連絡してくれました。
――前田さんの素の声も素敵ですが、優太とはまた印象が全然違いますよね。
僕も最初優太役でオーディションを受けるとは思わなくて。企画書を読ませてもらった時、一番意外なキャラクターで。優太というキャラクターをつかむために、自宅で秋・諒・優太の3役とも練習して、自分の中で3人の中でのバランスを考えていきました。2人はこのくらいの声のトーンだから、優太はこのくらいかな?とか、2人より小柄だから、ちょっとキーを上げないとな、とか。自分とは見た目などが全く似ていないキャラクターですが、その練習のおかげでポジションをつかめたと思います。
――素晴らしいとらえかたですね。アフレコは皆さんご一緒にされたのですか?
3人一緒にやる日が多かったです。3人の空気感がすごく大事な作品になってくると思うので、その他の仕事のスケジュールを合わせるのも大変な中、長井監督やスタッフさんが出来るだけ3人で出来る様に考慮してくださいました。2人(永瀬さん、坂東さん)の方がお芝居の経験も長いですし、永瀬さんは声優の経験もあるので、すごく引っ張ってくれたなと感じています。
――優太というキャラクターの好きな所はどんなところですか?
人間らしいところが良いなと思います。可愛い部分がありつつも、男子的なノリをちょっと引いたところから見ていたり、明るく見えて悩みを抱えながら生活している姿とか、綺麗な部分だけでは無い岡田さんらしい描写が好きです。学校にいる時の優太と家にいるときの優太もだいぶ印象が違いますよね。そういうところが、やっぱり人間だなっていう。アニメって完璧なキャラクターもいると思いますけど、優太のように実際の人間はみんなダメな部分があったり、悩みを持っていますよね。
――綺麗な部分だけでは無いところが魅力的というのは本当にそうですよね。優太と、一緒に共同生活を始める奈南のやりとりでは心がぎゅっと苦しくなりました…。
僕も最初に台本を読んだ時に、そのあたりのシーンが辛かったです。優太が3人がバラバラになるきっかけを作ってしまったというか、誰も悪くないのだけれど、しんどいですよね…。映画の中であそこから空気がガラッと変わるので、お芝居でもすごく大事に演じたいなと思っていました。
ほのぼのとした日常パートではじまって、綺麗な絵と綺麗な音で癒されていたら、後半になってガッとドラマパートが動き出します。そこからどんどん感情を動かされていくから、素晴らしい作品だな、面白いなと思います。油断して観ていると、ヤバいぞという(笑)。
――前半のパートがあるからこそ後半に効いてきますし、私も随分驚かされました。たくさんあると思いますが、好きなシーンはどこですか?
最後のシーンは大好きですし、優太が出ている場所だったら「ふれる」の秘密について話し合うところも好きです。優太が「『ふれる』がいなかったら、親友にも友達にもなれていなかったかもね」と吐き捨てて家を出ていってしまうシーンがありますが、なんだろう、僕も演じていてすごく悔しくて。この3人の関係ってそんなに弱いものだったの?って。本心では無いと思うけれど、ぐちゃぐちゃした感情が思わずこぼれ出て2人に当たってしまったというか。辛いですけれど大事なシーンだなと思っています。
――この映画を観て「(面と向かって)伝えることは大切だな」と心から思いますし、ハッとさせられる方が多いと思います。前田さんが普段コミュニケーションで大切にしていることはありますか?
僕はあまり人に思ったことを言わなく、自分の中で溜め込んじゃうタイプで、それが原因の失敗も過去にありました。映画で描かれていることと同じで、ちゃんと言わないと相手も分からないのに、なんで分かってくれないんだろうと自分がちょっと苦しくなってきちゃったりとかして。言葉にして伝えることって大事だなと強く思います。言わない方が楽だしな、自分が我慢した方が楽だなと、ついサボっちゃうんです。でもそれっていつか限界が来るから、この映画は大人に刺さるんだなあと思います。そういう人間の心の機微が本当に丁寧なんですよね。
――ぜひ今後も前田さんの声のお芝居を拝見したいのですが、どんなアニメのキャラクター演じてみたいですか?
僕がアニメ作品をやりたいと願っている理由の1つとして、自分の外見に制限されずにお芝居を出来ることなんです。自分の見た目って演じるというところに対して絶対に外せない要素になってきちゃって、僕のこの見た目で出来る役しかできないから、それが悔しいんですよね。もっとお芝居の幅を広げたいと思った時に、それこそ優太って実写だったら僕は選ばれなかったかもしれないと思います。でも声優だったら挑戦させてもらえるから、それがすごく素敵だなと思いますし、これからも努力して色々な役に挑戦出来る様に頑張ります。
――今日は素敵なお話をありがとうございました!
撮影:たむらとも
オリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』
永瀬 廉 坂東龍汰 前田拳太郎
白石晴香 石見舞菜香
皆川猿時 津田健次郎
監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
音楽:横山 克 TeddyLoid
監督助手:森山博幸
プロップデザイン:髙田 晃
美術設定:塩澤良憲 榊枝利行(アートチーム・コンボイ)
美術監督:小柏弥生
色彩設計:中島和子
撮影監督:佐久間悠也
CGディレクター:渡邉啓太(サブリメイション)
編集:西山 茂
音響監督:明田川仁
制作:CloverWorks
YOASOBI「モノトーン」
(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
配給:東宝 アニプレックス
製作幹事:アニプレックス STORY inc.
製作:「ふれる。」製作委員会
©2024 FURERU PROJECT
絶賛公開中
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